昔からごくたまに遭遇するケースですが…

あちこちのクリニックを回って抗不安薬や眠剤をもらい歩く人たちです。

本人は「ちょっと足りないから」「眠れないから仕方ない」と思っているのかもしれません。

しかしそれは、立派な医療制度の悪用行為であり、場合によっては犯罪です。






■ 抗不安薬や眠剤は「一時的」「単剤」が原則



抗不安薬や睡眠薬は、ガイドラインや厚生労働省の指針に基づいて、

なるべく短期間・なるべく少ない種類で使うことが原則です。

当院ではこれを厳格に守っています。

したがって、多剤併用を希望されたり、他院でもらっていた薬では物足りないからと増薬を求められたりしても、

そのような処方は原則お断りしています。





■ 「一つの病院で出してくれないから他でもらう」は通用しません



中には、薬に依存してしまい「今の処方では足りない」と感じ、

主治医に増量をお願いして断られた後、別の病院を受診して薬を集める方もいます。


さらに悪質な場合、転売目的で眠剤や抗不安薬を収集してまわる人も存在します。


しかし、保険証を使っている限り、すべて記録されています。(加入している保険組合から「医療費のお知らせ」と言って受診した病院や薬局で掛かった医療費の明細書が届く事がありますが、保険者は把握しています。)

しかも、今はマイナンバー保険証で薬局でも病院でもいつどこでどのような薬を何日分もらっていたか照会が可能となっています。

「バレない」と思っても、実際にはすぐにわかります。





■ 「依存」「不正」「転売」はすべてアウト



・医師に嘘をついて複数の病院(同じ診療科)を回る行為

・他人の薬を譲り受けたり、譲ったりする行為

・薬を転売する行為


これらはすべて**医師法・医薬品医療機器等法(薬機法)**などに抵触します。

特に転売目的の場合、刑事罰の対象となります。

いずれにせよ、医療機関の信頼を損ない、

真面目に治療を受けている患者さんに迷惑をかけるだけです。





■ 最後に



当院は、薬を「必要な方に、適切な量で、安全に」使っていただくことを大切にしています。

薬を“集める”ためではなく、“治す”ために来てください。

もしも今の薬で不安や不眠が続く場合は、薬を増やすのではなく、

原因を一緒に考えることが治療です。


「薬がほしい」ではなく、「治したい」と言える方を、当院は支えます。


今回は「精神科の転院」について、注意すべき点をお話しします。


引っ越しや転勤など、地理的な事情でやむを得ず転院する場合は別として、「今の病院に不満がある」「納得がいかない」といった理由で、自分に合うところを探すのは悪いことではありません。私自身、これまでの投稿でもその考えをお伝えしてきました。


ただし、転院の際にはいくつか注意が必要です。

先生との相性が合わない、カウンセリング・デイケア・r-TMS(反復経頭蓋磁気刺激療法)など薬以外の治療を受けられる医療機関に移りたい、あるいは予約方法や通院システムが合わないといったようにその理由が病院ごとに差別化できるものによる場合は、転院することで不満が解消されることがあります。


一方で、「今の薬ではなかなか良くならないから病院を変えたい」という場合、注意が必要です。


実際にそのような方の処方内容を見ても、特に問題があるケースはほとんどありません。なかには症状が長引いているために薬の種類が増えていたり、薬物に依存ぎみとなり治療に苦労しているケースが多い印象です。


また、「不安が強くて薬をもっと増やしてほしいのに先生が出してくれないから転院した」という方も時々おられますが、これも難しいケースです。

というのも、きちんとガイドラインに沿って治療を行っている医師ほど、薬の種類や組み合わせの上限を守り、必要以上に増やさないようにしているからです。


つまり、「断られた」こと自体が、むしろ適切な医療判断である場合も多いのです。


十分な説明がなければ患者側からしたら何もしてくれてないと不信感を持たれることは理解はできます。


ですからそのような理由で当院に転院されてこられた方に対して必ずしも希望された通り薬を増やすことはできないときちんと説明はさせて頂きます。



精神科の専門医として研修を受けた医師であれば、基本的にはガイドラインに沿った標準的な薬物治療を行っています。その病院にだけある「秘伝の薬」はないのです。


したがって、診断や処方内容に大きな差があることはそこまではないかと思われます、転院によって必ずしも治療が劇的に変わるわけでもないことに気がつくこともありがちなことです。



こんにちは精神科専門医Dr. ヤンです。

今回はめまいに関するお話です。

皆さんはめまいを頻繁に感じるようになればまずはどこの科に受診されますか?恐らく耳鼻科もしくは内科だと思いますし、今流行りのチャットGPTで調べてもそのように提案されます。


しかし、内科や耳鼻科を受診しても、検査では異常が見つからず、めまいに効果があると言われる薬を処方されたけれどなかなか良くならない……


そんな方が「心因性かもしれないから精神科へ行ってみては」と言われて受診されることがあります。


ただ実際には、前医から検査結果やこれまでの処方内容を丁寧にまとめた紹介状を持って来られるケースは少なく、

「うちでは分からないから、他に行ってみて」という“受診勧奨”の延長線上で来られる印象を受けることもあります。(担当医にサジを投げられた気持ちになられるかも知れません)


昔なら「精神科でみてもらえだと? ということは自分の症状は気のせいだと言いたいのか!」と憤慨して受診しなかった方も少なくなかったでしょう。


しかし最近は、紹介状がなくても「言われたから来ました」と気軽に精神科を訪れる方も一定数いらっしゃいます。





心因性めまいとは?



心因性めまいは決して珍しい病気ではなく、施設によってはめまい患者さんの20〜80%に認められるといわれています 。


「心因性」といっても大きく二つに分けられます。


  • 精神疾患そのものが原因となる「狭義の心因性めまい」
  • メニエール病などの前庭疾患があり、それが不安や抑うつなどの精神的要因で悪化しているケース(広義の心因性めまい)



つまり、単に「気のせい」と片づけられるものではなく、身体と心の両面から診ていく必要があります。





精神科での印象と対応



私の臨床経験では、精神科に来られためまいの方に抗不安薬などを試すと「少し楽になった」とおっしゃるケースはあります。

ただ、めまいそのものがすっきり消えるというよりは、「めまいが残っていても気分的に和らいで生活しやすくなる」という程度です。


そのため、初診の段階から「精神科でめまいが完全に治る」という期待を持たれるよりは、「めまいを抱えながらも気持ちが軽くなること」を目標にしましょうと、事前にお伝えすることが多いです。





治療の基本姿勢



心因性めまいに対する治療は、まず生活指導(規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動)から始まります 。


薬物治療では、一般的な抗めまい薬が効きにくいことも多いため、抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、場合によっては漢方薬などを使います。


ただし、薬は長期投与を避け、副作用や依存性に注意することが大切です。


精神科での役割は、「症状をなくす」よりも「症状と付き合いやすくする」サポートと考えていただくのが現実的だと思います。