精神科では、初診の予約が取りにくいと感じられることが少なくありません。
その大きな理由の一つが、初診では十分な時間をかけて診察を行う必要があるからです。

初診では、現在の症状だけでなく、
家族構成や生い立ち、学歴・職歴、これまでの病気や通院歴、服用中のお薬などを詳しくお伺いします。
場合によっては、心理検査を行い、状態を多角的に評価することもあります。(当院では簡単な心理検査しかできませんが)

こうした診察を「じっくり話を聞いてもらえて安心した」と感じてくださる方がいる一方で、
「眠れないだけなのに、なぜ関係のないことまで聞かれるのか」と
疑問や戸惑いを感じられる方もおられます。
中には、予診の段階で多くの事を尋ねられ不安や不満が強くなり、診察前に帰られてしまうケースもありました。

しかし、一見関係なさそうな事まで伺う必要があります。
例えば「眠れない」という一つの症状の背景には、生活環境やストレス、心身の不調など、さまざまな要因が隠れていることがあります。
そのため、症状だけを切り取って薬を処方することは、必ずしも適切とは言えません。

精神科の診察では、患者さんご自身もまだ気づいていない背景や問題を、
一緒に丁寧に探っていくことを大切にしています。
その上で、必要な治療や支援を考えていく――
それが、精神科初診に時間をかける理由です。

障害年金(知的障害)に関する当院の対応について

当院のホームページには、知的障害に関する障害年金申請のご相談に関しても記載しておりますが、対象となる方には一定の条件があります。

誤解を避けるため、当院の考え方と対応範囲についてご説明いたします。

当院でご相談をお受けしているケース

当院が主に対象としているのは、
児童期から知的障害としての支援を受けてこられた方です。

具体的には、
 •児童期より療育手帳が交付されている
 •支援学級・支援学校などでの教育的支援を受けてきた
 •20歳前後を迎え、障害認定や年金申請に関する整理が必要となる

といった背景をお持ちの方を想定しています。
これらのケースでは、これまでの支援歴や客観的資料が比較的整っており、適切な評価を行うことが可能です。

当院でお引き受けできないケースについて

一方で、
 •成人後になって初めて知的障害の評価が必要となった場合
 •これまで十分な支援歴や資料がなく、新規に詳細な評価が必要な場合

については、当院の診療体制上、十分な情報収集や包括的な評価を行うことが難しいのが現状です。(発達障害に関しても同様です, また社労士事務所などで書類を揃えて頂いたとしても難しいです。)

そのため、こうしたケースにおける
障害年金用の診断書作成についてはお引き受けしておりません。
あらかじめご了承いただけますと幸いです。

最後に

障害年金の申請は、ご本人の将来の生活に大きく関わる重要な手続きです。
だからこそ、十分な情報と時間をかけた評価が不可欠であり、当院としても責任をもって対応できる範囲を明確にした上で診療を行っています。


診察室から見える、いまの働き方のしんどさ


時期にもよりますが、当院には働き始めて間もない方や、昇進・配置換えをきっかけに頑張っていた方が、電池切れを起こしたように疲弊して受診されるケースが増えています。

上司が変化に気づき受診を勧めてくれたという方もいますが、会社に出勤できなくなって初めて受診される方も少なくありません。


IT化で仕事は速くなり、密度は高くなった


ITの普及により、仕事のスピードは確実に上がりました。
メール、チャット、オンライン会議、各種システム入力。「すぐ返せる」「どこでも対応できる」ことが当たり前になっています。

しかし、その分、
同じ時間内に処理すべき仕事量と判断回数は明らかに増えています。

一つ一つの作業は短くなっても、休む間のない高密度な労働が続く。診察室で話を聞いていると、こうした疲れ方をしている方が非常に多いと感じます。



責任感の強い人ほど、休むことをためらう


疲弊して受診された方には、必要に応じて診断書を発行します。その際によく聞くのが、

「今、自分が休んだら会社に迷惑をかけてしまう」

という言葉です。

責任感の強い方ほど、この考えに縛られやすい。
結果として無理を重ね、回復までに時間がかかってしまいます。



休む前提で仕事を回すのは、会社の役割


社員が突然休むことは、事故による怪我、急病での入院など、いくらでも起こり得ます。

そうした事態でも業務が回るように体制を整えるのは、本来、会社が考えるべきことです。

個人がすべきなのは、「倒れるまで働くこと」ではなく、日頃から自分の体調を整え業務に臨み、不調に早く気づくことだと思います。


なぜメンタルの不調だけ、特別視されるのか


メンタルの不調で休むことに、
強い気兼ねを感じる方は少なくありません。

しかし、心の不調も体の病気と同じです。
突然、一定期間の休養が必要になることはあります。

それを「申し訳ないこと」と感じさせる空気こそが、
不調を長引かせているように、医師として感じます。


町医者として伝えたいこと


限界まで我慢してから受診する必要はありません。
「少しおかしい」と感じた時点でブレーキをかけることは、逃げではなく、適切な自己管理です。

診察室で起きていることは、社会の縮図です。
IT化で仕事が速くなった今こそ、
無理を前提にしない働き方が本当に求められているのではないでしょうか。