Pの食卓 -11ページ目

レックス・スタウト 『料理長が多すぎる』 平井イサク訳

  「生ごみを始末するついでに奴もいっしょに片付けちゃうなんてことは、誰だってやりかねないんです。

   たしかに、後ろから人を刺すっていうのはよくありませんが、

   急いでいる時には、そういうこまかいことは見逃してやらなきゃならないこともあるんですよ。」

                                      (料理長の一人ヘローメ・ベリンのセリフ)


憎まれて殺されるのが殺人事件によくあることですが、

ここまで周りの人に悪感情を持たれるような生き方はしたくないですね。

急いでいるから後ろから刺したって仕方ないんじゃないかって;


本日紹介しますは、レックス・スタウトの 『料理長が多すぎる』 Rex Stout Too Many Cooks


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レックス・スタウト, 平井 イサク
料理長が多すぎる

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世界各地から選出された15人の名誉あるシェフたちは、保養地カノーワ・スパーに次々と姿を見せ始めていた。そして晩餐会が催されるまさに前日、ソースの味ききに興じていたシェフの一人が刺殺された!この集いに主賓として招かれていた、欄と麦酒を愛し美食家探偵を自認するネロ・ウルフは誇り高き名料理長たちをまえにその重い腰をあげたが・・・・・・全編に贅を凝らした料理がちりばめられ美食家を自認する読者には垂涎の書。

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レックス・スタウトはクリスティやヴァン・ダインなど本格黄金時代に生きた作家さんです。

シリーズものの探偵は美食家探偵ネロ・ウルフ、そしてワトスン役のアーチー・グッドウィン。

二人とも個性が際立っており、小説を読んでいるにもかかわらず、声が聞こえてきそうなほど、

冗談や仲間内のやりとりなど色鮮やかに描かれておりました。


作者のスタウトも相当な美食家だったらしく、作中に出てくる料理は全て試食。

さらに、その膨大な量の皿の中から、気に入ったものだけを小説内に出したそうです。

選眼が優れているのでしょう、『料理長が多すぎる』 に出てくる料理には圧倒されます。

ソーシス・ミニュイ、どんなソーセージなんでしょう。50万ドル積んでも秘密なレシピだそうです。


探偵役のネロ・ウルフですが、ホームズとは正反対の様相があります。

外見はもとより、仕事に対する姿勢も異なり、とてもおもしろい。

ホームズが知的欲求を満たすために活動的に事件に関わるのに対し、

ウルフは全くもって趣味人、仕事なんぞしたくもないといった雰囲気をヒシヒシと感じさせます。

そこをなだめすかして仕事をさせるアーチーの助手っぷりの見事なこと!

思わず見習いたくなってしまいます。


ミステリとしての感想は、難易度は低いものの、ガチガチの本格ものではないため、

それを期待して購入することはおすすめいたしません。

直前になってわかる新事実や、推測でしかたどり着けないところもあり、

確かに真相に必要最低限のことは文中で語られているため、簡単に推理は運べますが、

フェアプレイにこだわってしまうと充分に楽しむことができないかもしれません。


残念なことに、英語読むのが億劫であったため、翻訳ものを買ったわけですが、

この文庫版・・・ レシピが付いていない |||||||||||||||||orz|||||||||||||||||

どうやら原書の方には出てきた料理十八種のレシピが巻末についていたようです。

そうならそうと先に言ってくれれば・・・と後悔先に立たずなのでした。


ネロ・ウルフもの、会話の妙、沼のような女性の描き方、何をおいても料理の見識の深さ、

とても優れているかと思います。『毒蛇』 や 『ファーザーハント』 も読んでみたいと思います。


食いしん坊万歳な方、買いの方向でよろしくお願いいたします。

モーリス・ルヴェル 『夜鳥』 田中早苗訳

    「どういたしまして。もっともっと不可思議(ミステリュー)な事件ですわ。」

    「お前の怪事件(ミステール)好きには降参だよ。」

                ("ベルゴレース街の殺人事件" ある夫婦の会話より)


フランスのポウと呼ばれる怪奇小説の名手、ルヴェルと読者の会話のようにも聞こえる。

ミステリ好きな僕たち推理小説愛読者たちに向けられた言葉なのかもしれない。

ミステールという言葉にちょっと愛着を感じてしまいました。


推理小説読み復帰第一弾は、モーリス・ルヴェルの 『夜鳥』 Maurice Level L'Oiseaux de Nuit

ロワゾードゥニュィ 夜の鳥です。


モーリス ルヴェル, Maurice Level, 田中 早苗
夜鳥


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仁術の士モーリス・ルヴェルは稀代の短篇作家である。面桶に慈悲を持つ輩、淪落の尤物や永劫の闇に沈みし者澆季に落涙するを、或いは苛烈な許りに容赦なく、時に一抹の温情を刷き、簡勁の筆で描破する。白日の魔を思わせる硬質の抒情は、鬼才の名にそぐわしい極上の飧饔である。加うるに田中早苗の訳筆頗る流綺。禍棗災梨を憂える君よ、此の一書を以て、萬斛の哀惋を掬したまえ。

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小説を開き、一話目を読み始めた瞬間、


「ポウだ!ポウが帰ってきた!」


と思わず立ち上がってしまいました。場所は小田急某駅停車中の電車の中、

同乗していらっしゃった方々の冷ややかな視線がくすぐったかったです。


しかしそれくらいこの短編集に愛を感じることができました!

なんと説明したら良いのかわかりませんが、

ポウの短篇を廃城の書庫で見つけた狂える城主の日記と例えると、

ルヴェルは街の酒場で知り合った零落した紳士から聞かされる過去の話、

哀しみ、傷心、虚しさそして残酷さの中にきらりと光る美しさを感じました。


気に入ってしまった作品は、まずは冒頭でも引用させていただいた、『ベルゴレースの殺人事件』

この短編集は、探偵ものというよりは怪奇小説なのですが、

『ベルゴレースの殺人事件』 は探偵味溢れる怪作になっているかと思います。


疾走する汽車の一室、閉ざされた空間が舞台、そして短い文章の中にちりばめられた真相の欠片。

事件の真相と思われるもの自体はさほど奇抜ではありませんが、

短篇の醍醐味であるキレ味の優れたものだと思います。


・ 出会い頭に鼻をガツンとやられたような衝撃の 『或る精神異常者』

・ 読んでいるうちに冷や汗のにじみ出てくる 『麻酔剤』 『暗中の接吻』

・ ピリリと辛い、辛すぎるアイロニー 『幻想』 『乞食』


そういった荒野を突き進むような暗い乾ききった話の中、

乾きを癒してくれるかのように置かれた温情溢れる物語も効果的に配置されている。


・ 人間的な温かみを思い出させてくれる 『情状酌量』 『父』 『二人の母親』

・ 鮮やかなまでの華麗なる男女のやり取り 『ふみたば』


これらはO・ヘンリを彷彿させる短篇の妙があります。

他にも乱歩さんが愛した 『青蝿』 などなど、人の影を鋭く描きだした名作集。

感傷や心などポウには必要の無いものがありますが、

それでもエドガー・アラン・ポウを感じることができました!


しかし、この小説の魅力は中身だけでは終らない。

解説を書いている人物の豪華な面々、甲賀三郎、江戸川乱歩、夢野久作!

思わず、ぐっときちゃいました。


おもしろいはずだよ、乱歩がほめる。



1/25 追記:

もう一度読み返してみましたが、やっぱり一番のお気に入りは 『見開いた眼』!!

もともと怪奇小説好きだった僕には一番合う話でした。

ぞくぞくさせられるような話、やっぱりいいですね。

ディケンズ 『オリバー・トゥイスト』

どうやら映画化に伴って、岩波文庫から復刊するらしいです。


そんなわけで、今日はディケンズの 『オリバートゥイスト』 を紹介。

チャールズ・ディケンズ, 北川 悌二
オリバー・ツイスト (上)
チャールズ・ディケンズ, 北川 悌二
オリバー・ツイスト (下)

『オリバー・トゥイスト』 の話をする前に少々作家ディケンズについて補足。

ディケンズは19世紀イギリスを代表する作家ですが、

それと同時にポウに次ぐ、探偵小説黎明期を支えた推理小説作家でもあるのです。


イギリス初の長編推理小説は、ウィルキー・コリンズ 『月長石』 と言われています。

実際そうで、ディケンズはコリンズと文通し、その推理小説という小説の構造に興味を持ちました。

そこで生まれた純粋な短編推理小説が、ディケンズのHaunted Down 『追いつめられて』 です。


最も注目すべき点は、ディケンズの 『バーナビー・ラッジ』 とミステリの父ポウとの関係でしょう。

『バーナビー・ラッジ』 は言わば歴史小説の形をとった推理小説なのですが、

その 『バーナビー・ラッジ』 の第一話が雑誌に掲載されたとき、

それを見たポウがトリックを見破り結末を言い当てたことはあまりにも有名。


ディケンズは他にも、史上初の人間性を持った探偵役バケット警部の出る 『荒涼館』 や、

未完の長編推理小説 『エドウィンドルードの謎』 などなど、多くの推理小説を世に出しています。


彼の最も初期の推理色の強い作品 『バーナビーラッジ』 の発表された年は 1841年。

世界初の推理小説と言われるポウの 『モルグ街の殺人』 の発表年も 1841年。

この符号をどう解釈するかは自由ですが、ディケンズが推理小説作家でもあったことは確かなのです。


そのディケンズの名作 『オリバー・トゥイスト』 が新しく映画化されたようです。

以前にも 『オリバー!』 という題名で映画化はされているのですが、

より原作に近い内容になっているのではないでしょうか。


そして、その映画化に伴い、岩波から文庫で再出版されるもよう・・・

訳は北川悌二さん。北川悌二さんの訳は味わいがあり、原文を想起させる興味深いものですが、

いかんせん今の人には受け入れられる訳では無いと思います。

むしろ中村能三訳の方が・・・なんて思いますが、欲張りは言っていられません。


映画を見る前に一読いかがでしょうか?

ゆきだるま

さて、一日明けて今日は晴れ。

論文がなければ雪だるまでも作ってみたいところ・・・

と思っていたら、母親に先を越されました。


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左のが母親が作った雪だるまで、右は僕がアレンジを加えたマイナーチェンジバージョン。

頭に飾った花がチャームポイントです。


先月買って以来ハマっている 『おいでよどうぶつの森』 でも毎日のように作ってますが、

雪だるまマエストロへの道は遠い・・・奥が深いですね。

ちなみに、僕の住む村の名前は 『やつはか村』 です・・・


あとミステリ関係では 北村薫さんがサイン会をひらく模様です。

そのことについてはBのブログ 『カラクリリリカル』 と、

情報元の 『パン屋のないベイカーストリートにて』 をじっくり読み込んでみてください。

スキップ、ターン、円紫さんと私シリーズ、どれも好きなため行きたいものです。

修士論文 再び・・・

校正中・・・ 推理小説の紹介というか感想はまだまだ先になりそうです;


 寒いはずだよ 雪が降る


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追記:

というわけで、散歩に行くことにしました。


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左: 玄関の植木にはまだまだ溶けそうにもない雪が積もってました。


中: 旅のお供は黒いアヒルのような傘


右: 雪はだんだんと雨のように・・・ せっかくの雪見散歩だというのに;


こんなに積もったのは久しぶりな気がしましたが、

それもそのはず、東京圏では五年振りの積雪量らしいです。

毎年だと厳しいですが、五年に一度くらいならば、とか思ってしまいます。


さて、論文直すかな;

修士論文 書き上げた

濃緑ビロウドのカーテンは、ゆるやかに波をうって、少しずつ左右へ開きはじめた。


なんて虚無への供物じみた始まりですが、やっと修士論文が完成しました。

もちろん不完全なものではありますが、今の僕に出来うる精一杯のものです。


このために、一週間の睡眠時間が片手で数えられるくらい追い詰められ、

涙の出るような脳髄地獄と、啓けた感による恍惚とで、精神的に疲れました。

久々に忘れていた感覚を取り戻した気がします。


応援してくださった方々、本当にありがとうございました。

がんばれの一言で本当にがんばれてしまうのですから、良い言葉ですね。

僕が単純なだけかもしれませんが、とても嬉しかったのであります。


近日ミートソースを作って気分転換しよう。

東野圭吾さん 『容疑者Xの献身』 直木賞受賞す!

直木賞は年2回。受賞大賞は新聞などメディアで紹介された作品。

そして大事なところは、応募形式ではなく推薦形式だそうです。

長編・短編の大衆文芸が対象で、無名中堅新進の作家さんが選ばれます。


古くは久生十蘭さん 『鈴木主水』、泡坂妻夫さん 『陰桔梗』など様々です。

そして今回、東野圭吾さんの 『容疑者Xの献身』 が受賞作に決定 しました。


東野 圭吾
容疑者Xの献身


久々に文学の香りを感じた作品であったため、この話を聞いたときは喜びました。

今後30年衰退の一路を行く文学作品の歴史に、光明が差したような気持ちすらします。


授賞式は2月17日だそうですので、この本を読み良かったと思った方は、

東野さんの受賞を祝福しましょうぞ。


ミステリの話で言えば、二階堂黎人さんの発言から波紋が広がった本格か否かの問題。

批評家の発言が掲示板に書き込まれ、再燃していた模様です。


フェアかアンフェアか、主観に頼るものであるため、決着の付きづらい話だと思います。

ミステリに限らず、実際の人生においても、フェアかアンフェアかという問題は多々あります。

何か行動を起こすときは一度考えてみるのも面白いかもしれません。


『容疑者Xの献身』 とにかく買いです!

エリス・ピーターズ 『修道士カドフェル ・ 死への婚礼』 ドラマ

四年間お世話になっている中世英文学の教授より、『ブラザーカドフェル』の名前は聞いていました。

また、その推理小説がおもしろく、舞台となっているイギリスのシュルーズベリでは、

本物の修道院にてミステリツアーを行っているそうです。


先ほどドラマを確認いたしましたが、ドラマとは思えないほどの完成度の高さ!

主演のサー・デレク・ジャコビの演技もが素晴らしいとしか言えない!

そして舞台の12世紀修道院ハーブ園、素敵過ぎます。


そして、満ち満ちている本格黄金時代の香り・・・


クリスティを彷彿とさせる人間の描写に加え、ホームズのごとき明確簡潔な推理。

これは初めてドラマにハマってしまう予感!

原作の方も見つけ次第集めてみたいと思います。


日曜日は 『トミータペンス』 月曜日は 『カドフェル』 楽しみが増えました!

エリス ピーターズ, 大出 健
聖女の遺骨求む ―修道士カドフェルシリーズ(1)

ミステリチャンネル ついに開通

いつの間にかCATVを導入することが決定されており、本日開通いたしました。

観たい番組はもちろん 『ミステリーチャンネル』 これにつきます。

夜、一人になり、早速チャンネルを回してみると・・・


いきなり 『トミータペンス』 でした!


アガサ・クリスティの作品はドラマにしても映えるなあ!

人間が描けているから、どの媒体を介しても、その魅力が衰えることが無いのか!

などと感心しながらどっぷり漬かること小一時間。


修士論文の締め切りが刻一刻と近づいてくるのでありました・・・


人が殺されないミステリフェアー

TRICK+TRAP が本日をもって新装開店に向け休業期間に入るわけですが、

二月の開店の際、『人が死なないミステリ』 に焦点を絞ったフェアーを開催する話があるようです。


北村薫さんなどの日常の謎作家さんによるミステリから、ホームズの赤毛連盟などなど、

とにかく人が殺されないミステリを集めてくださるそうです。

さらにTRICK+TRAPからの情報として、沢木司さんの新作の主人公は、


    人が殺されたりする話に拒否反応を起こす性格にもかかわらず
    大学のミス研に入ってしまったという設定にしている


「ミス研もの+人が殺されない」 とあっては買うしかないような気がします。

僕も 「簡単に人が死ぬ」 ということに少なからず抵抗を感じる人間なので、

その主人公に同調できそうな気がします。


論文の審査が終わり、気力体力共に回復してきたら、フェアに参加してこようかと思います。

現在書いている自作ミステリ連作もの 『ぼくらシェイ研!』 の活力剤になるような、

不謹慎ではなく、楽しさを追求していくミステリに出会えればと思います。