(2021/8/14)更新版の記事を書きましたので、こちらも合わせてご覧ください。

 

今回は小ネタを。以前のいくつかのエントリで、アメリカの企業の立地がいかに広範に渡っているか、と言う話に繰り返し言及していましたので(参照)、一回、纏めておこうと思います。

 

一番手っ取り早いのは、Fortune 500の企業立地を纏めた以下の地図です(2017年)。点の大きさは収益(売上高)の額を示します。オリジナルのサイトは、拡大・縮小したりどの点がどの企業か分かるようになっており、とても面白いので是非ご覧ください。

 

http://fortune.com/fortune500/visualizations/、本記事執筆時点

 

一目瞭然、地図の右半分を中心に、企業がバラバラに立地しています。ボストン~ニューヨーク~ワシントンDCに企業が密集しており、五大湖近辺(シカゴ、デトロイト等)にも点が多いですが、特定の都市というわけでなく、地域一帯に点が続いているという感じですね。一方、西海岸はシアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスに集中しています。中西部の辺境地帯(そもそもほとんど人が住んでいない)を除いて、南部にも点が多く見られます。ちなみに、アーカンソー州(AR)にある巨大な点はウォルマート、ネブラスカ州(NE)とアイオワ州(IA)の州境にある二番目に大きな点はバークシャー・ハサウェイ(ウォーレン・バフェットの投資会社)です。

 

収益のトップ20を抜き出して以下に並べてみました。

 

 

http://fortune.com/fortune500/より作成、本記事執筆時点

 

米国の収益トップ20企業は、14の州に分かれて立地しています。見事な分散ぶりですね。3つあるのはカリフォルニアだけ、2つあるのも4州(テキサス、ミシガン、オハイオ、ワシントン)だけ。ニューヨーク州は通信大手ベライゾン・コミュニケーションズのみでした。ちなみに、「ヘルス」がつく企業が多く見られますが、ユナイテッド・ヘルスは医療保険、CVSヘルスはドラッグストア・チェーン、カーディナル・ヘルスは医療機器、医薬品卸売と、業種はバラバラです。

 

日本との比較として、似たような地図は見つからなかったので、国内の売上高トップ20企業を同様に並べてみました。

 

 

https://www.nikkei.com/markets/ranking/page/?bd=uriageより作成、本記事執筆時点

 

トップ20のうち15社が東京。首都圏と複数本社制で東京にも本社がある企業を除くと、残るのはトヨタとパナソニックだけ。地方発の企業は多いのですが、やがて本社機能が東京に流出していってしまうのが、日本の闇ですね。

 

さて、収益・売上高は業種により大きく変わるので、企業の規模を測る指標としては絶対的なものではありません。そこで、S&P 100構成銘柄から、指標計算時のウェイト順に抜き出してみました(概ね時価総額に一致)。

 

  

Wikipediaより作成、https://ja.wikipedia.org/wiki/S%26P_100、本記事執筆時点

 

アルファベット(Google)の種類株式があるので、こちらはトップ20企業の21銘柄を抜き出しています。こちらはテック企業が軒並み好調なこと等もあり、カリフォルニア州が6つ(企業数で)、ニューヨーク州が3つと、収益順に比べれば両州への集中が見られます。トップ20企業が立地しているのは11州でした。

 

比較のため、日本の時価総額トップ20企業を抜き出してみました。

 

https://www.nikkei.com/markets/ranking/page/?bd=caphighより作成、本記事執筆時点

 

売上高順に比べれば、こちらは京都勢(任天堂、日本電産)、ファナック、ユニクロ等が気を吐いていますが、それでもトップ20社中14社が東京に立地と、やはりアメリカと比較すれば圧倒的な集中度です。

 
上の4つの表を横並びで見たい方は、以下を拡大してご覧ください。
 

 

今回はこれだけです。日本から見ると、例えばオハイオ州なんてラストベルトのど真ん中で、実際行ってみても日本の感覚で言えば大層な田舎なわけですが、Fortune 500の収益トップ202つ(医療機器、医薬品卸売のカーディナル・ヘルス、大手スーパーチェーンのクロ―ガー)、S&Pのトップ20にも1つ(P&G)の企業をランクインさせており、最初のFortune 500の地図を見ても沢山の企業立地があるのが分かります(地図中では「OH」)。そういう訳が分からない田舎(失礼)にびっくりするような大企業が本社を構えているのがアメリカ、ということです。そして、他の記事との関連でいえば、これだけの企業立地をサポートできる教育体制とはどのようなものか、ということです。実態として、そんな企業で働いている人なんて、地元の大学出た人ばっかりですから。