今回は表題とは一切関係ない、完全な雑談となります。最近、ユニクロについての本を読みました。
本自体はとっても面白いので是非お読み頂きたいと思いますが、その中でユニクロが米国で苦戦していることが書いてあり、(報道はこちら)、それについて少し思いついたことがあったので記事にしてみました。
(アメリカのユニクロ店舗)
苦戦の要因にはいろいろあると思いますが(例えばニューヨークで欧州系ファストファッションのショップと並んでいるところを見ると、やはり華やかさでは負けます)、私が個人的に気になっていたのは店舗展開です。そもそもまだ50店舗ほどしか展開していないようなのですが、その限られた店舗もボストン、ニューヨーク、カリフォルニア等、何やら日本人が観光や留学で行きたがる地域にばかりに出店しているように思えたのです。
一見、常識的な展開に見えますが、実はアメリカ経済の重心は必ずしもそこにはありません。これはアメリカに詳しい人に限って誤解しがちなところです。
1位、2位の次が10位、11位?
気になったので、Wikipediaから都市圏人口のデータを拾ってきてユニクロの出店状況と突き合わせてみました。
人口:US Census Bureauによる推計(https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Metropolitan_Statistical_Areasより転載)ユニクロ出店状況:◎は多店舗展開(4店以上)、○は少数出店(1~3店)を示す(https://www.uniqlo.com/us/en/find-stores/を参照)
ちなみに今回は郊外への出店も考慮し都市圏で数字を見ましたが、都市単体で見るとボストンやDCのランキングはさらに下がります(いずれも人口60万人台)。サンフランシスコも人口100万人いません。逆に、アリゾナ州フェニックスが全体の5位まで順位を上げ(162万人)、さらに上の表では圏外のテキサス州サン・アントニオ(149万人)等が上位に入ってきます。それらの都市にもユニクロの出店はありません。
冒頭で紹介した本によれば、柳井社長は「アメリカはユニクロの生命線」「1兆円ぐらいは売上がなければいけない」など大変な力の入れようなのですが、ならばなおのこと、大規模な都市圏から攻略しなければいけないはずなのに、なぜ?
アメリカの本体はそこじゃない!
なぜ、と書いておいて早速前言を翻してしまいますが、正直のところ、こうした形になってしまうのも分かります。ボストン、ニューヨーク、カリフォルニア等は日本人が多く住んでいて、知日家も多く(知り合いのボストン在住アメリカ人は流暢な日本語を話します)、日系企業がビジネスを行うインフラも整っています。これらの地域が本当にいいところなのも間違いないです。
でも、私は言いたい。
ぶゎっかも~ん、アメリカの本体はそっちじゃないぞ!!!
上の表を見ても分かる通り、アメリカ人の大多数はそこには住んでいません。単純な人口だけでなく、豊かで、優秀で、洗練されたアメリカ人の多くが、実は「ボストン、ニューヨーク、カリフォルニア」以外に住んでいる、というのが実態なんです。ファッションも普通にちゃんとしてますよ。都市部なら(上の表には入らないようなもっと小さな都市でも)ちゃんと営業すれば十分ユニクロの顧客たりえると思います(都市部から離れると風当りもあるかもしれせんが)。
H&MもZaraも、もちろんそういう地域に本腰を入れて進出しています。
ユニクロの出店戦略の象徴、ボストン・クインシーマーケット
今、ボストンに行くと、ユニクロの店舗が同市の伝統ある観光名所クインシーマーケットの2階を丸ごと占領しています。当然、莫大なコストがかかっていることと思います。まるでバブルの頃を思わせるような光景なわけですが、正直のところ、都市圏人口10位の都市にそんな莫大な投資してもそれに見合うリターンが得られるとは思えません。
ユニクロの展開状況を見れば、日本人でも知っているような有名な観光地を大盤振る舞いで借り上げている場合ではなく、その投資を例えば「テキサス州ダラス」「同ヒューストン」「フロリダ州マイアミ」「ジョージア州アトランタ」等に振り向けるべきなのは明らかなんじゃないでしょうか。
ここで勘違いしがちなのは、例えば欧州系のファストファッション・ブランドが日本の表参道にショップを開く、といった際に発生するような波及効果は全然期待できないところです。ボストンは(いや、ニューヨークでも)、広いアメリカにおいて日本における東京ほどの流行発信機能は持っていません。
そんなわけでクインシーマーケットの店舗を見たとき、「ああ、これは苦戦するわなあ」と思わざるを得ませんでした。
日本人が少ない地域に進出するのは本当に大変。でも、トヨタは分かっている
日本人が少ない地域に進出するのは、多い地域に行くより何倍もしんどいことは事実です。駐在員が長く快適に生活できる環境は必ずしも整っていませんし、日系企業向けのビジネスサービスもあまり充実していないかもしれません。私自身も、選べるなら日本人が多い地域を選んでしまうと思います(笑)。
そんなわけで私自身も「ユニクロがある街」に住んでますので、自分のことを思いっきり棚に上げて言うわけですが、それでもそういう地域に出ていかない限り、本格的にアメリカ市場で勝負することはできません。
日本企業でも、アメリカで本当に勝負している企業は分かっています。象徴的な例として、トヨタUSAは今年、本社をテキサス州のPlanoという街(ダラスの近くだそうです)に移転してしまいました(報道はこちら)。流石、文字通りアメリカの道と言う道にトヨタ車を走らせてきた人達は違います。そんな田舎じゃ人材が集まらないんじゃないかって?心配御無用!!テキサスにはエクソン・モービル、AT&T、デルからピザハットに至るまでトップ級の多国籍企業が数多く本社を構えており、地元トップ校のテキサス大学オースチン校は、日本でも知られているような有名大学にも引けを取らない名門校なのです。ちなみにデル創業者のマイケル・デル氏も同校を中退して起業した地元の方だそうです。Ivy Leagueの大学やシリコンバレーに行かなくても優秀な人は沢山います。それがアメリカです。
まとめ
今やGAPを抜いてファストファッション世界第3位に躍り出たユニクロ。しかしアメリカでは苦戦が伝えられています。理由はいろいろあると思いますが、私が思いついたのは店舗展開の仕方でした。
少し調べてみると、ユニクロの店舗展開はボストン、ニューヨーク、カリフォルニアなど日本人が多く住んでいる地域が中心で、アメリカの大多数を占めるマス・マーケットにはまだリーチしていないようです。日本人があまり行かない地域に進出するのが本当に大変なのはとても良く分かるのですが、厳しい言い方をすれば、まだまだファイティングポーズが取れていない、というのが率直な印象です。
実は駐在、留学等で日本人が多い地域に行ってしまうと、これがアメリカの全てだと思い込んでしまう(下手をすると他地域を見下し始める)のはありがちなパターンなのですが、そのパターンにはまり込んでいる限り、アメリカ市場で本気で勝負することはできません。本ブログでもミネソタ大学だのウィスコンシン大学だの、日本ではあまり知られていなそうな大学のことを沢山書いていますが、言わば「日本人が知らないアメリカ」を少しでも紹介したいと思ったことも理由の一つです(こちらも参照)。実際それらの大学も、世界的に見てすごい大学なので。
トヨタのように真にアメリカで勝負している企業はこの壁を打ち破っています。もちろん、トヨタ並にアメリカに浸透することは一朝一夕にはできません。しかし、とかく衰退が言われる日本経済において、ユニクロは比較的新しい企業の中では数少ないグローバルで勝負しようという気概を持った企業なのですから、是非頑張って戦ってほしいものです。
