久し振りにオーストリア料理を頂いて参りました。
オーストリアを舞台にした映画と言えば「サウンド・オブ・ミュージック」
この映画の中で歌われている曲に「私のお気に入り」と言う曲があります。
「そうだ!京都へ行こう」のCMでおなじみのあのメロディーです。
図らずも今回は「私のお気に入り」が詰まったお料理ばかり。
と言うことで、「私のお気に入り」をテーマに、お気に入り視点をご紹介していきますね。
先ず、最初は何と言ってもデザート。
焼き菓子は一見地味ですが、焼き菓子程手が込んだ贅沢なお菓子はないと言っても過言ではないと思っています。
そしてケーキ等の生菓子が美味しいお店は沢山ありますが、名の通ったお店でも焼き菓子に力を入れているお店は殆ど無いように思います。
焼き菓子程採算が取れないものはありませんから…それだけ、本当は手間暇がかかるお菓子なんです。
さて、この日のデザートは赤肉メロンを使ったチーズムースとメロンのスープ仕立てにしたデザート。
気分じゃないなぁと思っていたところ、プラムを使ったケーキがあると言うじゃありませんか!!
「そう、そう!! 気分はそれなのよ~」と言うことでお願いしたのがプラムを使ったシュニッテン。
シナモンとリンゴのアイスクリームにプラムを煮詰めたソースが添えられています。
一口食べて…「そう、これこれ!! 私が求めているスイーツはコレなのよぉぉぉ」と心の中で絶叫。
アーモンドの粉にバター、卵、お砂糖を混ぜたクリームをクレームダマンドと言いますが、漬込んだプラムを下のタルト生地と言うかビスキュイに敷き詰め、そこにクレームダマンドを流し込んだシンプルな焼き菓子。
配合や果物等を煮込んだり漬込むなど、完成するまでの手間が細かいんです。
それだけに丁寧に作られた焼き菓子の美味しさには最高の喜びがあるんです。
このデザートはまさにソレ!
美味しいのですが素朴で飽きがこない、それでいてコクのある奥深いお菓子です。
プラムを煮詰めたソースも甘酸っぱく、クリームと一緒に絡めて頂くのはご想像通りgoodです。
リンゴとシナモンのアイスクリームはアップルパイのアイスクリーム版といったところ。
さて、次なるお気に入りはメインの真鯛のソテー。
でも、お気に入りポイントは黒オリーブとシャンピニオンのソースです。
これがメッチャ美味しかった!!
香草の香りとトマト甘味との甘味と酸味がなんとも食を進ませます。
パリパリの鱗とホワッとジューシーな真鯛の触感も美味しい。
そしてなにより、オリーブとシャンピニオンのソースの下にはパスタに見立てた素麺カボチャがたっぷりとあるんです。
↑素麺カボチャを写すのに周りを寄せました。余り綺麗じゃなくてゴメンなさい。左上の細いシラタキみたいなのがソレです。
この素麺カボチャのシャキシャキ感が堪りません!! そして何よりシャンピニオンのソースの旨味をしっかり絡めてくれて。
最近、フレンチやイタリアンに触手が向かなくなったので、オーストリア料理ももう卒業して良いかな?と思っていたのですが、これなら毎日食べられるかも。
離れかけていた心を鷲掴みにした一品でした。
ウェルシュリースリングのワインと一緒に。
ピーチの華やかな香りと樽の香りが非常に楽しいワイン。
酸味が穏やかなのが個人的には若干残念ですが、これは品種の特徴なので仕方がない。
でも、好感の持てるワインです。
さて、「やはり単なるガレットじゃなかったかぁ…」と唸ってしまったのが、アミューズに登場したジャガイモのガレットと大山鶏のノッケルン、鱒と玉葱のコンフィのサラダ仕立てです。
このジャガイモのガレットですが、ガーリックの香りを移したオイルで焼いている為、ほのかにガーリックの香りがします。
これがホント良いの!! 香か香らないか位の優しい風味で、でもこの香りがあるとないでは全然違ってしまう、と言う隠れ技。
ノッケルンはドイツ語で「山」と言う意味。裏ごしした鶏をムースにして山の形に盛り付けたお料理です。
低温で調理されたスモークサーモン状の鱒に写真では見えませんが下には飴色の玉葱が。
玉葱の甘味が印象に残るサラダでした。
夏野菜の冷製スープと浮身には夏野菜のゼリー寄せ。
こちらは夏のスープ「オーストリア版ガスパチョ」ですが、いつもは野菜ジュースの様に綺麗に丸っと纏まっているのですが、ビーツの土っぽい香りや野菜のえぐみもちゃんと感じられる元気いっぱいの夏らしいスープでした。
凝縮した野菜の甘味や旨味が詰まった、健康になれそうなスープです。
さて、最後になりましたがこちらは前菜の鮎のお料理。
最後の紹介と言っても順位別ではありませんので、誤解の無い様に…。
こちら鮎の身をほぐしてフワフワの…すり身まではいきませんが、すり身に近い状態にしたモノを鮎で挟んでソテーした、贅沢に鮎を使った前菜。
手前にあるのが肝に見立てた肝とアンチョビを使ったムースです。
毎年頂いている前菜と言え、今年はちょっと表情が違います。
今年はいつもよりもハーブの香りも感じられて、より爽やかな印象です。
いつもはソースにタデ(タデ喰う虫も好き好きのタデです)の葉を使うのですが、今回はタデの葉をオイルに香りを移して、バジルやディルなどの香草も使っているとの事。
そうそう、ここのお店、毎月訪れても同じお料理は出さないんです。
お料理も前の年とは変化させていると言いますか…基本は崩さず、でも臨機応変にアレンジは加えて決して飽きさせない、スタッフの皆さんの引き出しの多さが感じられるお料理でした。
他にも敢えて写真は撮りませんでしたが、夏すみれのシャーベットなど夏のお楽しみが沢山盛り込まれた「私のお気に入り」で夜は更けていきました。
確かに日本人に合う様に現地のお料理よりマイルドに工夫されているとは言え、オーストリア料理は和食に通じるものがあります。
余りバターなどを使わず、ハーブや野菜などで軽く仕上げてあるからなのかも知れません。
私の予定がまだ入っていないうちに!と既に来月の予約をしてお店を後にしました。
追記
デザートの間にユルチッチさんのツヴァイゲルトを。
2013年のヴィンテージとの事でしたが、凝縮感がありこなれて来てはいますが、香りを開かせるには少し時間を要するタイプ。
カシスのコンフィ等の香り中に、まだまだ若さが感じられるインクや生肉の様な香りが残ります。
タンニンもなめらかながら酸もしっかりしているので、酸に乗っかってまだ噛むことが出来る様なタニックさが残っています。
一口、口に入れた瞬間「好き!好き!好き!」と言いたくなる、流石プロフェッサー、ユルチッチさんのワイン。
ポテンシャルの高さは群を抜いています。