フランツ・ヨーゼフ逝く⑤ | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」

フランツ・ヨーゼフ逝く⑤

 

 

フェルディナントの死によって、急遽、皇位継承順位が繰り上がったカールだったが、カールは相変わらず政治中枢から外されたままだった。

 

カールは帝国の全ての国が独立し共和制を取ると言う政治理念を持っており、聡明な皇妃チタといつか理想を現実させようと強いし信念を持っていた。

いつか、理想的国家を作る為、チタとは婚約中からいつも意見を交わし合っていたのだった。

 

しかし、高齢の皇帝を抱え、後継者問題に頭を抱えているハプスブルクが、何故これ程までにカールを政治の外側に置いたのか?

 

そこには、カールがハプスブルクの一員として政治に参加する事を心よく思っていなかった人物がいた。

 

それがサラエボで暗殺されたフェルディナントだった。

 

フェルディナントとカールは互いに理解し合い交流を深めていたが、フェルディナントは自分が帝位に着いた後、カールが帝位継承者として周囲から認められる事に神経を尖らせていた。

 

そこには、フランツ・ヨーゼフ亡き後、皇帝との約束を反故にして自分の子供を帝位に就かせたいという思いがあったのかもしれない・・・・正確なところは分からないが、不思議な事に、フェルディナントは、カールに将来帝位継承者となる為に必要な軍隊での履修任務について、何も教えてはいなかった。

 

加えて、フェルディナントの取巻き達もカール擁立には全く興味を示さず、カールがフェルディナントの後任として、そつなく業務を遂行しているか監視の目を光らせていたのだった。

 

早々に戦争を収束させたい。

崩壊しつつあるハプスブルク帝国の役に立ちたい。

 

カールは皇太子としての立場を模索するも、誰もカールに政治の手ほどきをする者も補佐を買って出るものもいなかった。

 

「自分専用のスタッフがいてくれたら、もっと皇太子としての仕事がやり易いのに…。フランツ大叔父さんが気付いてくれると有難いんだけど・・・」

 

カールは立場上、フランツ・ヨーゼフに皇太子としての権限を掌握したいと申し出る事はしなかった。

 

 

つづく