ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
マイヤーリンクの心中事件①
「……うっ。たっ、大変だーっ!!!」
「直ぐに皇帝陛下と皇后陛下に連絡を!」
皇太子の死は直ぐに宮廷にいる皇帝夫妻に伝えられた。
「皇帝陛下…」
フランツ・ヨーゼフは何か只ならぬ出来事が起こった事を直観的に予測した。
「ルドルフ様が…今朝方、ご遺体で発見されました」
「なっ、何と…」フランツ・ヨーゼフはガックリと肩を落とす。
一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、直ぐにシシィの事が頭に浮かぶ。
シシィが息子の死を知ったら…きっとシシィのか細い神経をズタズタにするのではないか?
「で、皇妃には伝えたのか?」
「はっ、只今、皇后陛下の元に使いの者を寄こしております」
「そうか…」
マイヤーリンクでは、遺体の検証が行われていた。
やがて銃弾自殺を図った皇太子の遺体は戻ってくるだろう。
皇太子ルドルフ。
この人程孤独な王子はいないだろう…。
つづく