ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
破綻した結婚生活―彷徨える皇妃―②
「ここかぁ」
フランツ・ヨーゼフは素直にグリュネ伯爵から教えられた場所に行ってみる。
「あら~、フランツ・ヨーゼフちゃん、いらっしゃーい」
(フ、フ、フランツ・ヨーゼフちゃんって…)
「さぁ、さぁ、お入りになって」
どこかの令嬢だろうか。メッチャ美人の女の子が数人、きゃっきゃ、きゃっきゃとフランツ・ヨーゼフの周りに集まってくる。
イマイチ状況が読めないフランツ・ヨーゼフ。
「何、召し上がる?」
「私、シャンパンが飲みたーい。ねぇ、皇帝、いいよね?」
「ひっ、シャンパンって…高いじゃん、あれ。」
フランツ・ヨーゼフの生活は結構質素だったりする。
(家でも特別な記念日以外シャンパンなんて開けないのに)と、まごついている間に、さっさとオーダーを取られてしまった。
「ちょ、ちょっと、まだ、いいって一言も…」
(う~、もしかして、これが噂に聞くキャバクラってやつか。グリュネ伯爵の奴…シシィにバレたら嫌われちゃうよ~(泣))
…が1時間もすると…
「僕ぁね、戦ったよ、兵士達の先頭を切ってさ。でも、フランス軍は強かったんだ。あんなにイタリアで沢山の負傷者を出しちゃうなんてさ…」
堅物なフランツ・ヨーゼフは、仕事が頭から離れない。ソルフェリーノの戦いを振返って肩を落とす。
「うん、うん、フランツィーは頑張ったよぉ。」
「そうそう。敵が悪すぎたんだって。」
「そうだよね、そうだよね。君達、ホント優しいね。
嬉しいなぁ。僕、こんな風に優しくされたの久しぶりだ~♪」
「皇妃様はお優しくないの? とっても綺麗な方なのに」
「ぜーんぜん! 僕に興味ないみたい。でも綺麗だよ~。彼女の美しさが大好きなんだ」
「まぁ、可哀そう!私達で良かったら慰めてあげるねーっ」
(でへへ…なっ何かいいなっ!! 家じゃこんな風に頼って貰えないし。ちょっと楽しいかも)
「じゃぁ、明日も来ちゃおうかなーっ」
…と、フランツ・ヨーゼフは外に慰めを求めた。
つづく
※ラノベの為あくまでも面白く、分かりやすく…その為キャバクラ設置とさせて頂きました。が、しかし、グリュネ伯爵が適当に女の子を見繕って、フランツ・ヨーゼフが外に慰めを求めた事は相違ありませんので、こんなおバカなノリですが許して下さいませませ。
裏話
シャンパーニュは高価だったので誕生日等の特別の日にしか飲まなかったのも事実。
シャンパーニュ好きなシシィがある時何でもない普通の日にシャンパンを開け「今日は誕生日でもないよ」とフランツ・ヨーゼフが嗜めた事がありました。
すると「貴方の女友達に乾杯!」と当て擦りをしたと言うエピソードがあります。
結婚生活が破綻すると、自分が旅ばかりで家にいない後ろめたさから、せめてもの慰めにと、シシィは女優のカタリーナ・シュラットを公認の皇帝の女友達に選び、夫が自由に会える様にしたのですが、その日は、カタリーナ・シュラットの誕生日だったそうです。尤も、夫のガールフレンドの誕生日を祝ったのは優しさからと言う程単純なものではありません。シシィの性格は複雑。カタリーナ・シュラットに「貴女って本当におデブちゃんね」と嫌味を言う一面も…。因みにカタリーナ・シュラットは全然太ってないですよ。