愛は永遠に、フランツ死す③ | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」

愛は永遠に、フランツ死す③

 

 

176585日 挙式は行われた。

インスブルックでは結婚の祝賀行事が連日続きお祭り騒ぎだ。

 

街を挙げての祝祭も佳境となった818日。

この日はテレーゼとフランツ、ヨーゼフの3人で芝居を見に出かけた。

 

「何だかツマラナイ芝居ねぇ。私、先に帰るわね。フランツルとヨーゼフはゆっくりしていくんでしょ?」とテレーゼは一幕を見終えると、さっさと宿に帰える事にした。

 

「うん。僕達は最後まで観ていくよ、ねっパパ」


「あぁ、偶には息子と男同士、水入らずでのんびりするか」

 

「そう、それじゃヨーゼフ、パパを宜しくね。じゃあまた後でね、フランツル」

 

「あぁ…」

 

そんな軽いやり取りの後、テレーゼは一足先に滞劇場を後にした。

 

それから数時間経った。


結婚式にダンスパーティー等連日のイベント続きで疲れが出たのか、テレーゼがうつらうつらしていたその時だった。


テレーゼは外の騒々しさにふと目が醒めた。

 

「テレーゼ様!テレーゼ様、大変です。皇帝陛下が・・・」

 

テレーゼは胸騒ぎがする。

 

「フランツルがどうしたの?」

 

「こっ、皇帝陛下が先程逝去されました…」

 

テレーゼは頭が真っ白になり、何が何だか分からなくなる。

 

「なっ、何ですって?! フランツルが死んだって…嘘でしょ? 嘘よ、嘘よ、絶対嘘だわ。」

 

「いえ、残念ながら嘘ではございません。芝居が終り劇場を後にしようとロビーの階段を下りる途中で発作に見舞われまして・・・・ヨーゼフ様の腕の中に崩れ落ちる様に倒れたかと思うと、そのままヨーゼフ様の腕の中で息を引き取られました・・・・」

 

テレーゼは慌てて劇場に駆けつけようとするが、従者に止められる。

直ぐに、ヨーゼフに付き添われてフランツの遺体が運ばれて来る。

 

テレーゼは目の前の光景を受入れる事が出来ない。

 

「フランツル、フランツル、起きて頂戴!! 悪い冗談は止めて頂戴!目を覚まして、フランツルーっ。私を1人にしないでーーーっ!!

 

フランツの亡骸にすがり付き、半狂乱になりながらフランツを揺り起こそうとするテレーゼ。

家臣達がテレーゼをフランツから離そうとするが、テレーゼは頑として離れ様とはしない。


すぐさま皇帝一家はウィーンの宮廷に戻る事となる。

皇帝一家の帰宅は葬列となってしまった。


インスブルックの観光名所の1つである凱旋門には不思議な彫刻が刻まれている。


表側には結婚のレリーフが、裏面には悲しみのレリーフ。

まさにこの時の出来事が門に刻まれているのだ。


 

つづく