愛は永遠に、フランツ死す① | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」

愛は永遠に、フランツ死す①

 

 

ハプスブルク家はヨーロッパで類を見ないアットホームな宮廷だ。

 

兄のヨーゼフとイザベラの結婚の際に、兄弟姉妹達で合唱のプレゼントをした時に指揮を振ったのはレオポルトだった。

 

少々厳しく近寄りがたい雰囲気のする兄とは違い、レオポルトは気さくで快活な性格だ。

兄のヨーゼフが女性との付合いに対しても生真面目だったのに対して、レオポルトは女性関係が賑やかだった。

 

ポルドルという愛称で皆から好かれたレオポルトは、結婚話が出る頃には既にハンガリーの大貴族の娘美しいエルデディと恋人同士だったのは宮廷の誰もが周知していた。

 

しかし、女帝の決める結婚政策は個人の恋愛感情は考慮されない。

ポルドルは素直に国家の決めた相手との結婚に従った。

 

レオポルトの結婚相手はスペイン王カルロス3世の娘ルドヴィカ。

ブルボン家との結束を固める為に決定された。

 

レオポルトは自由奔放の様でありながら、現実的だ。

恋に楽しみを見出しても、結婚はハプスブルクの利に沿ったものと考えていたのだろう。


レオポルトの結婚には、こんなエピソードが残っている。


レオポルトの結婚が決まった時、ヨーゼフが美しい妃を迎えていただけに、口さがない宮廷の人々は「ポルドル様は可哀想な事よ」と噂をし合った。

 

しかし、


実物のルドヴィカは姿絵で想像するよりずっと魅力的で愛らしく、彼女は従順にレオポルトの言う事に従い、夫を支える良き妻となった。


それどころか、ポルドルとルドヴィカの間に生まれた子供の数は、テレーゼ夫妻と同じく16人。

ルドヴィカはハプスブルク家にとって幸多き嫁となったのだった。


一家の出産には、こんな微笑ましいエピソードが残されている。

 

テレーゼは自分が立て続けに女の子ばかり3人も生み、男児が生まれなかった事で非常に苦労した為、子供達に男の子が授からないと、とても心配した。

 

ある時、女帝が部屋にいると、レオポルトに男児誕生の知らせが届いた。

すると、テレーゼは上着を掴み、王宮と棟続きにあったブルグ劇場に走り、劇場のドアを開けると「うちのポルドルに男の子が生まれたのよ~!!」と叫んだのだった。

 

折しも、その日のオペラの演目は悲劇。

まさに場面はクライマックスに向かう真っ最中だったが、俳優は演技を止め、観客と俳優が一緒になって「女王様万歳!!」と叫んだのだ。


すると、ふと我に返ったテレーゼは恥ずかしそうにモジモジしながら後を去ったと言われている。


しかし、


在位40年と言う長きに亘るマリア・テレジアの治世の中で、ある意味レオポルトの結婚は分岐点となる事になる。


何故なら、結婚式と言う慶事と時を同じくして、悲しい別れがあったからだ。


 

 

つづく