ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
愛よとどけ!ヨーゼフの不幸な結婚③
ヨーゼフの新婚生活は僅か3年で終わってしまった。
しかし、ヨーゼフの不幸はこれが終わりではなかったのだ。
イザベラの死後、イザベラとクリスティーネの親密な書簡が見つかった。
そこには、イザベラにとってヨーゼフとの結婚生活に安らぎや幸せが見いだせなかった事や、敬虔なカトリック教徒のイザベラは、ヨーゼフとの夫婦生活によって、自分が穢れ神から愛されない存在になって行くのではないか、と恐れていた事が赤裸々に語られていたのだった。
その書簡から、イザベラは現世になんの未練もなく、そればかりかあの世への憧れを抱き、早く向こうの世界へ行きたいとさえ望んでいた事が明るみとなったのである。
ヨーゼフとイザベラは、誰の目から見ても仲睦まじい夫婦に映っていた。
そして、ヨーゼフもイザベラの愛は嘘偽りの無いものと信じて疑っていなかっただけに、真実を知ったヨーゼフは非常にショックだった。
「ひぇ~、僕は彼女の笑顔を見るたびに、てっきり彼女も幸せだと思っていたのにぃ……。それを妹に相談していたなんて…もう、クリスティーネの顔をまともに見らんない。 ってか、僕の事を愛していなかったなんて…僕はイザベラへの愛でいっぱいだったんだ。あぁ、もう立ち直れない。僕ちゃん、人間不信になりそ……」
「まぁ、まぁヨーゼフそんな事言わないで」テレーゼは何とかヨーゼフを落ち着かせようとする。
「そうさ。今は最愛の妃を失って混乱していると思うけど、時が解決してくれるさ」フランツもしきりに慰める。
しかし・・・
どんなに周りが慰めても、ヨーゼフの悲しみは収まる事はなかった。
そればかりか、イザベラの忘れ形見である、たった1人の愛娘も病気で死んでしまった。
つづく