ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
愛よとどけ!ヨーゼフの不幸な結婚②
ヨーゼフが結婚適齢期にさしかかると、どこの姫君を妃に迎えるのか注目の的となる。
当然ハプスブルクの御曹司に花嫁候補は困らなかった。
その中でも、パルマの公女イザベラの姿を絵と報告書を見るなり、ヨーゼフは一目で気に入ってしまった。
確かにイザベラは誰もがうっとりとする様な美しい公女だった。
優しく聡明で、ピアノも上手く美しい声で歌った彼女は、思考能力も高く、当時の女性には珍しく哲学や数学にも興味を持っていた。
「僕は決めたよ。イザベラ以外の女性とは結婚しない!」
ヨーゼフの希望は受け入れられ、イザベラを皇太子妃に迎える事となった。
ハプスブルク家は大歓迎でイザベラを迎え入れた。
姑になるテレーゼは、遠路はるばるやって来る花嫁が心地良く過ごせる様、何ヶ月もかけて新郎新婦の新居を整えた。
イザベラも眉目秀麗なヨーゼフを気に入った。
しかし、美人薄命と言うが、ほっそりとして天使の様なと謳われた美しいイザベラはテレーゼの様な強かさには恵まれていなかった。
程なくしてイザベラは愛らしい王女を出産したが、産後の肥立ちも悪く、その後すぐに第2子を身籠るが流産してしまう。
暫くしてイザベラは第3子を懐妊したが気分は欝々としたままだ。
そんなイザベラが心の拠り所にしたのが、夫ヨーゼフではなく、義妹のクリスティーネだった。
イザベラはハプスブルク家の人々から暖かく迎えられたが、中でもクリスティーネとは心の内を打ち明けられる大親友となった。
2人は親密な書簡・・・今で言う交換日記…を交わし合い、イザベラは書簡の中で想いのたけを書き綴る。
イザベラは自分の未来を予感するかの様に「私ね、そう長く生きられない様な気がするの・・・・」とクリスティーネ宛ての交換レターに書くようになる。
「何を言っているの!今はただ気分が塞いでいるだけよ。希望を持って強くいきなきゃ…」クリスティーが励ますも、イザベラの予感は当たってしまう。
イザベラの出産が近づく頃、ウィーンではまたもや天然痘が大流行していた。
そして…
不幸にもイザベラは天然痘に感染し、早産となってしまった。
生まれた子供は死児だったが、嬰児に続き、間もなくイザベラも息を引き取ってしまったのだ。
つづく