王位継承戦争⑤ | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」

王位継承戦争⑤

 

 

皇帝になりたい王は山ほどいる。


フランツは好人物だか、何もフランツ1人に良い思いをさせる事はなかろう、これが諸侯の考えだ。

 

かくして、神聖ローマ帝国の帝冠はバイエルン王の元に渡ってしまった。

 

(王冠が奪われた!フランツの王冠が!!

テレーゼの瞳から大粒の涙が滝のように溢れ出す。

 

「酷い!なんて酷いんだろう。あの王冠はフランツのモノなのに!! フランツ、ごめんなさいね。祖国まで捨てて結婚したのにこんな事になるなんて…うっ、うっ、うわーん」悔しさと申し訳なさで、テレーゼは思わず声を上げて泣きだしてしまう。

 

片や・・・・

 

「ふん、女など子供を作る道具に過ぎん!オーストリアのお嬢ちゃんも結婚して間もないのに、もう3人も子供がいる。それだけじゃぁない。腹には4人目がいるって言うじゃないか。そんな尻軽なお嬢ちゃんに何が出来るかな、ふふふ…ハハハハ」と大笑いをしているのはフリードリヒだ。

 

「なんて奴!この大泥棒!この恥さらし!」テレーゼは考えうる限りの悪態をつく。

 

そして・・・・

 

「許さない!絶対に許さない!!」テレーゼは復讐を誓う。

 

テレーゼは戦争の為に軍隊を形成した。

 

しかし…

 

この時、オーストリアには軍隊も無ければ、国庫も空っぽだった。

 

ハプスブルク家の領地は広大とは言え、いわゆる飛び地だった。国境警備の為には、例えばイタリアとの国境に1万、東方の国境に2etcと言った具合に、主要な国境周辺にある程度纏まった軍隊を置かなければならず、対プロイセンに送ることが出来る兵士の数はそれほど多くなかったのである。

 

他にも軍隊については問題が多かった。


多民族からなるハプスブルグ軍は、言ってみれば帝国領からの寄せ集めの軍隊である。

その為、使用する言語もバラバラで末端の農民の末っ子達からなる雇いの兵士まで命令が伝わらない。

まるで、ギャグの様な状況が当たり前の様に繰り広げられていた。

 

ハプスブルク家に使える貴顕や家臣達はいわゆる荘園領主の様な存在で、領地からかなりの収益を上げていたが、何かに理由をつけては国家の為に差し出そうとはしなかった。


そのくせ、事あるごとに彼らは宮廷にせびっていたのだった。

 

つづく