今回もラノベの途中ですが、ハプスブルク家の根拠地オーストリアの食について。です。
ハプスブルク家で伝統的に食された料理の1つに「オリオ・スープ」があります。
これはスペインから持ち込まれたスープで、色々な食材を豊富に使ったスペイン風ごった煮。
ごった煮と言っても、全ての材料を1つの鍋に入れて作るのではなく、例えば鶏と野菜で作ったスープ、牛脛肉と野菜で煮込んだスープ、と言う様に別々の寸胴鍋で作られたスープを合わせ、これを漉したかなり栄養価の高いスープがあります。
現在ブログに投稿しているラノベ「ハプスブルク家物語」はまだまだ序盤ですが、後に登場するマリア・テレジアは小さなカップに入れて、1日に何杯もこのスープを召し上がっていたとか。
16人の子供の母親でありながら、政治を行うのですから体力が勝負。
ハプスブルク家の人々の栄養源として受け継がれていた様です。
それだけに、オーストリアの食文化にスープは欠かせません。
オーストリアはスープ大国なんです。
冬の寒い夜、暖かいスープで身体を暖めたり、風邪気味や食欲の無い時等、スープは胃に負担をかけず手軽に摂れる栄養食。
心にも温かさが浸み入りますね。
日本にはお味噌汁と言う和のスープ文化がありますが。
お味噌汁がお袋の味と言われる様に、スープはママの味なのでしょう。
私もスープは大好きで、幾つかお気に入りのスープがあります。
コンソメスープと言えば定番中の定番ですが、実はコンソメスープ程手間がかかるスープはありません。
少しでも手を抜くと、手を抜いただけの味しか出ない。
野菜やお肉をふんだんに使い、それをじっくりと煮詰めて、さらに澄んだスープを摂るために漉す。
コンソメスープは、かなりの手間暇とコストがかかる為、多くのレストランではコース料理にもスープはカットされる様になってしまったんです。
さて、今回は、究極とも感じられるコンソメスープを頂いて参りました。
レストランに到着し、今日のコースの説明をして頂いていたところ、「今日のスープは、クヌーデル(お団子)の中に煮込んだオックステールの入ったコンソメスープ」とサーヴィスの方が紹介されたので、「あっ、前々回頂いたスープね。あのスープも美味しかったから、また食べられて良かった」と思いつつ、順番にお料理を頂いていたところ・・・・。
さぁ、スープの出番となり運ばれてきたお皿には、根セロリと人参のマリネの上にじっくり煮込んだ神戸牛が乗っていて、思わず「?」。
「あれ?メイン?…でも、私、メインにお肉は食べないし。うーむ・・・・」と思っていたところ、どうやら、スペシャルな内容に変えて下さった様です。
前回も急遽ホワイトアスパラのスープに変更して下さったし…レストランはある一定期間でメニュー構成を変えますが、常連には、同じ味は出さないぞ‼︎と言う、キッチンの職人魂なのでしょう。
感謝です。
サーヴィスの方々も「僕達もまだ食べてないんです」との事。
このお野菜とお肉の上から、暖かいコンソメスープが注がれて、スペシャリテの完成です。
このコンソメスープ。注がれている時から、芳醇な香りが鼻先に広がるのですが、一口スプーンで流し込むと、先ず舌先にお野菜からの甘味を感じます。
その後に、スープ全体の旨味やコクが広がる、奥行きがあって密度の濃いお料理でした。
まさに究極のコンソメスープ。
ホロッとフォークとスプーンだけでも切れるお肉と一緒に頬張るこの幸せ。
普段、余りお肉を食べない私は「そろそろ菜食にしても良いかなぁ」と思っていた矢先だったので、「偶にはお肉も食べてみ」と、完全に変化球を投げられた感じです。
さてこの日は、嬉しい事にアミューズに早くもキュウリのスープが登場。
このキュウリのスープも大好きなスープの1つで、絶対に1年に1度は食べないと気が済まない。
この綺麗な淡いグリーンを出す為に、キュウリの皮を全部剥いて、中身だけを使うのだそうですよ。
今回も、ホワイトアスパラを頂きました。
ボイルをして、軽くバターでソテーするのですが、アスパラを茹でる時に、剥いた皮も一緒に茹でて香りを移すのだとか。
レストランの知られざるひと手間です。
前菜は13種類のスパイスを使った土海老のフリットとサラダ。
このスパイスの香りが凄く良いんです…上手く例えられないのですが、ケバブってあるじゃないですか?シュラスコみたいにお肉をそぎ切りする・・・あれを繊細にした感じ。
ケンタッキーのフライドチキンと並べては申し訳ないのですが、このまま海老でも良いですが唐揚げの様に鶏肉にまぶしてサッと揚げて、バンズに挟んでバーガーにして食べてみたい!! 贅沢だけど。
南瓜の種のオイルと卵を使ったソースの他に、海老の下にもサワークリーム?サッパリとしたクリームのソースが敷いてある、ソースの二段使い。
トマトには、これまた良いあんばいに、一ひねりお塩が掛っていて・・・・こう言う細部に拘るところが嬉しい。因みに、トマトの皮も剥かれてます。
ソルベは金柑に蜂蜜が入ったソルベ。
ネットリした食感と金柑の微かな苦味が爽やかな今の季節にピッタリ。
余韻の長いソルベです。
メインはまとう鯛と芝海老のソース。
このソース「ザ芝海老」って感じる位、海老が濃い。
オマールとまた一味違って、海老の香ばしい香りが口いっぱいに広がります。
こちらもスープ同様、最初の一口目に素材の甘味が広がってとても印象に残るお料理でした。
オーストリア料理って、フレンチの様なカツーンと来る様な直球的な味ではなく、素材の味が幾重にも重なって、柔らかく包み込む様な優しい味。だけど、ちゃんと響く所に響くと言う・・・・・長い歴史の中で、結婚によってもたらされた色々な国の味や技法が重なりあって、それがそぎ落とされ洗練されていったんですね。
最後まで王朝が残って、ハプスブルク家のキッチンで修業した料理人達が、その技術を街のレストランに広めていき今に至っているのでしょうね。
デザートはサワークリームの入ったフワフワのパンケーキ。
ブルーベリー、ブラックベリー、レッドカラントの3種類のベリーを使った甘くないソース。
ベリーの酸味が主体となったサッパリとしたソースに、卵とサワークリームの優しい味が良く合います。
こう言う、グチャグチャにして食べられるデザートが食べられるのはレストランならでは。
今回も素敵な一時となりました。