ラノベ「双頭の鷲-ハプスブルク家物語-」
フランス王との対決④
マルガレーテは小さなフランス王妃として厳しい中でも贅をこらした宮廷で大切に育てられていた。
しかし…
マルガレーテは、アンヌ・ボージュの元に集められた子供達からも憧れの的として人気を集めていたが、決して故郷のブルゴーニュの事、とりわけ父マクシミリアンの事は忘れていなかった。
マルガレーテの義祖母は、マクシミリアンが宮廷を去った後、子供達に父マクシミリアンがどれだけ勇敢で、君主として優れた器を備えているのか語って聞かせていたので、マルガレーテは英雄と言えば父の事だと思っていたのだ。
字が書けるようになると、マルガレーテは故郷の父に長い手紙を書いて送った。
マクシミリアンはマルガレーテの手紙から、贅を凝らしたフランス宮廷の財力の強さを知るが、同時に、少しでも早く我が娘を取り返し、我が胸に抱きしめたいと切に願う。
だか、迂闊にフランスに軍を進める事も出来ず、状況を待つしかなかったのだった。
時は流れ、マルガレーテがフランスに連れ去られて10年近い月日が流れていた。
マクシミリアン26歳。
神聖ローマ帝国内では、老境になった皇帝フリードリヒには退任してもらい、新しくローマ王を選出しようとの動きが高まっていた。
と言うのも、帝国では相変わらずフリードリヒが逃げ回っていたからだ。
…と言うのも、ハンガリー王国はトルコの軍隊と手を組み攻撃の手を緩めて来なかった為、フリードリヒは皇帝としての職務を務める事が出来ず、常に帝国内は内乱や略奪が絶え間なかったのだ。
そう、この人は敵に立ち向かうと言う事を知らない。
だからこそ、誰よりも長生きをして、貧乏なくせに歴史上最も長い王朝のバトンを無事に次世代に繋いだのかもしれないが。
しかし、帝国内では「もうお飾りの皇帝はいらない。皇帝に相応しい者をローマ王に就いて欲しい」と言う気概が高まっていた。
そこで白羽の矢が立ったのがマクシミリアンだった。
ブルゴーニュ公国に渡ってからの10年間。マクシミリアンの活躍はヨーロッパ全土に知れ渡っていた。
リーダーとしての統治力、判断力、人望等、皇帝として必要な要素を備えている者はマクシミリアンをおいて他にはいない、と誰もが思っていた。
父フリードリヒは毒にも薬にもならない為、お飾りの皇帝に適任、と満場一致で推薦されたが、息子マクシミリアンは逆の立場で満場一致で推薦されたのだった。
つづく