ラノベ「双頭の鷲-ハプスブルク家物語-」
フランス王との対決②
マクシミリアンが公国を後にして2年。
愛児フィリップは7歳になっていた。
マクシミリアンが内乱を鎮圧し、宮廷に戻ると、フィリップは沢山の宮廷人にかしずかれ、マクシミリアンと対面した。
「フィリップ…こんなに大きくなって!!会いたかったよ、フィリップ」マクシミリアンは大粒の涙を流しながら、強く息子を抱きしめた。
フィリップも父に抱きしめられ涙を流していた…が、フィリップの場合は父マクシミリアンとは事情が違っていた様だ。
フィリップは父が宮廷を後にした間、公国の後継者として、ブルゴーニュ人達からかなり甘やかされて育てられていた。
その為、父と別れた時の記憶はだいぶ薄らいでおり、自分をぎゅっと抱きしめるこの大人が自分の父親だとは直ぐには思いが行かなかった様だ。
(くっ苦しい…背中が痛いんですけど…)
「ふぇ~ん。うっ…うっ、うわーん」
余りにも強く抱きしめられ、思わずフィリップは泣き出してしまう。
「あぁ、坊ちゃんも本当に寂しかったんだね」
「親子の再会…感動的!こっちまで泣けてきちゃう」
「若様の苦労を思うと…涙が止まらないぜ…」
諸事情を知らない従者達は、父子の再会を涙を流して喜んだ。
ただ……
この場にフィリップの妹、マルガレーテがいない事が皆の心に影を落とした。
つづく