ラノベ「双頭の鷲ーハプスブルク家物ー」
退却②
マリアとの結婚によって、マリアが持っていたブルゴーニュ公の全遺産をマクシミリアンに帰属された訳だが、公国でのマクシミリアンの立場はマリアあってのマクシリアンに過ぎなかった。
マリア存命中はマクシミリアンの長所は若き君主の裁量として称賛されていたが、マリア亡き今は、彼の勇気は危険の種となり、毅然とした態度は圧政者の態度と見なされた。
「マクシミリアンは我らがお姫様の亭主に過ぎない、所詮よそ者さ。お世継ぎのフィリップ様がいらっしゃるのだから、よそ者には出ていって貰おうぜ」
「そうだな、オーストリア人に大きな顔をされる筋合いはないよな」
「フィリップ様をよこせ!オーストリア人は出て行け!」
案の定、公国の諸都市ではマクシミリアンを国外へ追放しようとする動きが活発化し、反乱分子達は、手始めに2人の子供達を人質として手元に置く事にした。
勿論、彼らの中にはマクシミリアンをよそ者と見なし、外国人に支配されたくないと思う者もいたが、実はこの裏で手を引いていたのがフランス王ルイ11世だった。
ルイは自分の息子シャルル8世とマリアを結婚させ、ブルゴーニュ公国を乗っ取る事に失敗したものの、相変わらずこの豊かな公国を手に入れる事を諦めていなかった。
その為、袖の下として多額の金をバラまき、諸都市の反乱分子を煽動し、公国を乗っ取ろうと企てていたのだ。
継承者のフィリップなど、まだ5歳の幼児だ。
マクシミリアンのいない公国は赤子の手を捻る様なもの。
そして、我が息子シャルルと3歳になるマルガレーテを結婚させれば、豊かなブルゴーニュ公国はフランスのモノになる。
ブルゴーニュ併合は代々受け継がれてきた長年の夢だからな…フフッ、フフフ。
「蜘蛛」の異名を持つ狡猾なフランス王は笑いが止まらない。
公国はこれまで戦い続きだった。
好戦的な先王シャルル突進公に続き、公国を守る為とは言えマクシミリアンが君主になってからはフランスとの戦いが耐えなかった。
度重なる戦費を払わされ続けてきた公国の領主達は、自分達がフランス王に騙されて、いずれはフランス王から公国を乗っ取られ様としている事など気づきもせず、オーストリア人を追い出せば戦いが終わると思っていたのだった。
つづく