ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」
中世最後の騎士マクシミリアン⑦
側近の命を助ける為、慌てて1人敵の館に駆け込んだマリアだったが、マリアの目の前で2人は処刑され、その場で捕らえられたマリアはそのまま幽閉されてしまった。
このままでは、公国はメチャクチャになってしまう。
それに…
自分はあの奸智にたけたフランス王の息子と結婚させられてしまうのか?
「じょっ、ジョーダンじゃないわ!!ヤダ、ヤダ、ヤダ、絶っ対にイヤーっ!!」
自分の夫となるのはマクシミリアンしかいないと信じきっているマリアは、教会の祭壇の前にシャルルと並んで立つ自分、ニヤけながら新郎新婦を見つめるルイの顔を想像するだけでも、ゾワッとしてしまう。
しかし、囚われの身となったマリアには厳しい監視の目があり、逃げる事も出来なかった。
「何か、良い案はないかしら…」
マリアは健気な女性ではあったけれど、暴力に屈したり大人しく運命に従う様な弱い女性ではなかった。
幸い、マリアの側には、親身になって身の回りの世話をしてくれるフラマン人のアレヴィン夫人と言う女性がいた。
そこで、マリアはアレヴィン夫人に頼んで、婚約者であるマクシミリアンに助けを呼ぶ事にした。
マリアはマクシミリアンに宛ててペンを取る。
「愛する婚約者マクシミリアンへ
今私は反乱者の手によって幽閉されています。愛する継母とも引離され、信頼を寄せていた家臣も殺されてしまいました。私がフランス王の息子シャルルと結婚しなければ、次は継母に何をするか分かりません。
愛するマクシミリアン。私には貴方様以外との結婚は考えられません。私の事を愛しているならば今すぐに助けに来て下さい。
使いの者には貴方様からの返事を受け取るまで帝国を出てはならないと申し伝えてあります。
どうか後ろ盾を亡くした哀れな女をお助け下さいませ。
貴方を心よりお慕いする者マリアより」
つづく