中世最後の騎士マクシミリアン⑥ | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

ラノベ「双頭の鷲―ハプスブルク家物語―」

中世最後の騎士マクシミリアン⑥

 


「あっけなかったな…アイツ。だけど、これで煩いのがいなくなったぞ」

 

「あぁ、突進公と渾名されるだけあって、何処にでも突撃(攻撃)していって、挙句の果てに戦死だもんなぁ。突進公が突進してお陀仏だなんて…超ウケるんですけどーっ」

 

「まっ、いずれにしてもこれで平和が戻ってきたな」

 

「そうだな。かぁ~っ、極楽、極楽~」

 

ブルゴーニュ公国領内では君主を亡くし悲嘆に暮れているかと思いきや、シャルル突進公は所謂ワンマン型の君主で、戦争を起こす度に税を課したり…何かと毛織物工業で潤っているアントワープやブリュッセル、ブリュージュ等から搾取して来た。


先代のフィリップ善良公の時代には容認されていた数々の特権でさえ、シャルルが取りあげてしまっただけに、シャルルには公国内にも敵が多かったのだ。

 

まぁ、俗に言う代官様の言う事は聞け‼︎と言う人民に一番嫌われるタイプ。


それだけに、シャルルの圧政に耐えて来たギルドの組合頭や織物商人、領主達はシャルルの死を機会に、先祖代々認められて来た数々の特権を取り戻そうと躍起になっていた。

 

そこへ、ここぞとばかり割って来たのがフランス王ルイ11世。

 

「長年の宿敵だったブルゴーニュ公国。

だが、そのブルゴーニュ公国は今や領主がいなくなった…フフフッ、今こそ我がフランスと併合してしまうのに良い機会ではないか、そう思わんかね?」

 

公女マリアとの結婚レースではハプスブルクに後れを取ったものの、ルイは未だ諦めた訳ではなかった。

 

奸計に長けたルイは蜘蛛と揶揄されていた。

ルイ11世はマリア獲得の為に病身に鞭打って、あらゆる作戦を立てては、スパイを放つ。


王女王子の婚約など結婚式直前まで宛にならぬもの。

公国の要人達にとっても、ハプスブルクとの縁組よりフランスとの縁組の方が利がある筈…と言う事で、ルイは公国の反乱分子にお金を掴ませて内乱を起こす様扇動したのだった。

 

その結果、公国の主だった者達は皆フランス側に付き、ブルゴーニュの宮廷に仕えていた者達まで1人、2人と宮廷を去って行った。

 

フランス硬貨を握った側近の中には、マリアにフランス王の息子シャルル(後のシャルル8世)と結婚する様迫った。

 

だが、当のマリアは首を縦に振らない。

 

前にも記したが、ブルゴーニュ公国は故シャルル突進公の父フィリップ善良公の時代に騎士文化が絶頂を迎えおり、中でも、騎士の中の騎士を集めたのが、善良公肝煎りで作られた金羊毛騎士団だった。

これは由緒あるトップレベルの王侯貴族しか入団は出来ず、その嗣子達によって世襲制されていたのだった。

 

マリアの育った時代は騎士の時代も終わりに差し掛かっていたが、幼い頃から騎士文化の中で育ったマリアは「男性は愛する女性に忠誠を誓い命を懸けて守るもの」と言う思いが強く、自分の結婚相手は騎士の中の騎士でなくてはならないと決めていた。

 

その為、当時の見合い写真であるマクシミリアンの姿絵を見た瞬間、絵の中のこの若者こそ自分の結婚相手と直感したのだった。


そこで、実際に結婚が決まると、先に行われたトーリアの会見で実際にマクシミリアンに会った従者達をつかまえては、マクシミリアンの人となりを聞き、自分の理想の人物と相違ないか確かめ、益々自分の結婚相手にはマクシミリアンの他にはいないとの想いを深めていたのだ。

 

しかし…

 

フランス王の手先となった反乱分子達の攻撃は激しくなるばかり。


彼らは、マリアとマリアの継母マルガレーテを無理やり引離し、最後まで忠実にマリアに仕えた側近2人を捉えて、要求を飲まないと2人を殺すとマリアを脅してきたのだった。

 

つづく