ウィーン郊外にあるマイヤーリンク。
そこにひっそりと建つ、淋しげな印象の修道院は、ウィーン郊外のバスツアーの観光名称の1つです。
何故そんな場所が、観光地なのか・・・・ここはハプスブルク家の皇太子、ルドルフが男爵令嬢のマリー・ヴェッツェラとピストル心中した場所だからなんです。
ルドルフの死は映画等では、愛人マリー・ヴェッツェラとの許されぬ恋の果ての心中とロマンティック路線に繋げようと描かれている様ですが、本当の所は、父である皇帝フランツヨーゼフと政治理念が合わず、将来に絶望した為だとか。
しかも、最愛の恋人は別にいて、最初は彼女に一緒に死んで欲しいと頼んだところ、断られた、ルドルフに熱を上げていたマリー・ヴェッツェラを道連れにしたと言う壮絶なものでした。
ハプスブルクの御曹司ルドルフは、頑固一徹な父に比べて、現実的な政治理念を持っていて母シシィの考えをそのまま受継いだかの様なリベラルな王子だったの。
遊び上手でやんちゃで…昔々の品行方正の王子様と言うより、現代の王子様…メディアで伝えられている英国のヘンリー王子のイメージを重ねてしまいます。
皇帝とは意見が合わず、匿名で皇室批判を投稿したり、民族の独立を支持したり、リベラル派の仲間達と居酒屋でお酒を飲む等、我が道を行くルドルフですが、その性格は感受性が強く極めて繊細なもの。
母親であるシシィの性格をそのまま受継いでいたんです。
子供が生まれると・・・・特に男児は誕生すると国家のモノとして取り上げられるのは、王室のしきたりです。
当然、ルドルフも生まれると直ぐに王室に取り上げられ、幼くして皇帝になる為の英才教育が施されるのですが、これが本人の資質を無視した、カチコチの軍事教練だった事がイケなかった。
父フランツヨーゼフは軍事教育を耐え抜いて、戦場でも砲弾が跳んでくる中をビクともせず指揮を取って来た人だから、ルドルフにも同じ事が出来ると期待したのね。
まだ3つかそこらの小さな子の耳の側で銃を撃ったり、大砲の轟く訓練所に立たせたりetc
ルドルフの家庭教師に容赦なく息子を鍛え上げる様に命令したんです。
その結果、か細いルドルフの神経はズタズタに引き裂かれ、身体にも影響して寝込む様になってしまったんです。
衰弱したルドルフを見るに見かねた侍従の1人が、シシィに現状を報告したところ、シシィは余りの酷さに、今直ぐに家庭教師を解任させ、教育方針を自分に任せなければ離婚!と離婚を突き付け、やっとルドルフは「しごき」から解放されたんです。
シシィは自分が離婚をチラつかせれば、フランツヨーゼフが思い通りになる事が分っていたの。
夫の弱みをしっかりと掴んでいたのね。
だから長年、自分の手で子供を育てたいと願っていたシシィにとっては、ルドルフを取り返す良いチャンスだったんです。
その様な環境と相まって、大事な我が子が痛めつけらているのを見過ごす事は出来ないと言った、母親なら誰でもそうするであろう行動に出たシシィに、ルドルフは、この時の事を一生恩義に思う様になったんですって。
だって、小さな男の子には、「殺されるかもしれない」と思う程怖い世界から助けてくれたのですから、お母さんが救世主に思えても不思議じゃありませんよね。
ルドルフは心からシシィを慕ったのですが、ルドルフにとって不幸だったのが、崇拝する母親がいつも不在だった事。
そして、末娘のマリー・ヴァレリーを溺愛したシシィが、ルドルフがヴァレリーを嫌って傷付けるのではないかと警戒し、疎まれた事でした。
大人になったルドルフがどこか寂しげで自信無さげに見えるのは、淋しい子供時代が影響している様な気がします。
それでも、ルドルフはシシィを慕って、いつも母親の存在を拠り所にしていたんですよ、死の数日前までは。
健康の悪化に加えて、父親と大喧嘩をした際、「このままでは帝国の後を継がせられない」と宣告されたルドルフは、自分にはもう死ぬしか道がないと思ったんですって。
でも、死を決意したって、人間、そう踏み切れるものではありませんよね?
ルドルフは強い人間では無かったから、死を覚悟したとは言え、怖さも躊躇いもあったと思うの。
シシィに話せば、もしかしたら、子供の頃の様に助けてくれるかも知れないと一縷の望みを賭けたんです。
でも、シシィは自分の事で精一杯で、ルドルフの事など構う余裕が無かったのね。
ルドルフにとって、奇跡は2度起こらなかったの。
さて、今回は悲しいエピソードでしたが、私達の周りでも、何気ない事が実は周りのお役に立っている事って、意外とあるんですよ。
例えば、何気ない一言でモヤモヤが晴れたり、気持ちが救われた事ってありませんか?
イライラしている時、気分が落ちている時、誰かの笑顔に癒される事ってありますよね。
でも、笑顔を向けた人や、言葉をかけた本人は、特別元気づけようなんて気持ちは無かった筈です。
いつもの、ありのままのその人で対応してくれた事が、キッカケを与えてくれただけ。
こんな風にね、人は自分が気付かない所で、誰かに元気や勇気を与えたり、時にはターニングポイントに立ち会っている事があるんですね。
だからね、いつも笑顔でいなさいとか、素直でいなさい、前向きにいると良いよ、って言うのは、自分がHappyになれる事もあるけれど、自分以外の誰かもHappyにするからなんだと思います。
人はいつでも機嫌よくいられる程強くないです。
自分がつらい時は、誰かの笑顔に癒されたり、誰かに相談して話を聞いて貰っていい。
でも、同じ様に、貴方も皆に笑顔や勇気を与えている、凄い存在なんだって事、忘れないでね。
大丈夫! 貴方は本当は凄いんだよ。
※全ての写真はお借りしました。