コロナウイルスの影響で外出が出来ない昨今。
家での生活を少しでも心地よいモノにしようと、実の周りをお気に入りのモノでそろえたり、お花を飾ってみたり、皆さん色々工夫をされていると思います。
私は、この現状を、19世紀のウィーンで起こった芸術様式「ビーダーマイヤー」に重ねてしまいます。
ビーダーマイヤー様式の部屋
小市民様式(小市民の生活様式)と言われるビーダーマイヤーですが、実は、このビーダーマイヤーにはこれといった特徴がないんです。
例えば、いびつな真珠を意味するバロックや華麗さを表したロココ等は、この様なモチーフが使われていればバロックとか○○様式と言った言一定の定義がありますし、それらは王侯貴族によって作られた芸術様式ですのでお金もかかっていれば、神話や宗教が土台となっているので文化としてもスケールが大きく後世の人がみても分かり易い。
それに比べてビーダーマイヤーは芸術様式ではなく生活様式として生活全体を指すので、これと言った特徴が無い。
私は、ニュースで緊急事態宣言延長による「新しい生活様式の提案」と聞いたとき、生活様式とはどんな様式になるんだぁ?と何か根底から生活が覆されるのかとドキッとしました。
では、このビーダーマイヤーと言う生活様式ってどこから出てきたのか。
実は19世紀のこの時代。
ウィーンでは秘密警察が横行していた為、市民がうかつに外出出来なかったの。
630年以上にわたってハプスブルグ家がオーストリアを拠点に、ハンガリーやチェコと北イタリアと言った周辺諸国を帝国領として統治してきた訳だけれど、統治された周辺諸国にしてみれば牛耳られて来たと思ってきた訳。
18世紀の末、フランスに革命が起こって王侯貴族が次々に処刑されて国民が自由を勝ち取った・・・正確には暫くは勝ち取ったと錯覚していただけだけど…のを見て、当然ながらハプスブルグ家の配下にあった国々もハプスブルグの支配から独立しようと立ち上がっていったんです。
そんなナショナリズムの嵐は皇帝のお膝下ウィーンにも及んで来た訳で、悪く言うと新しい動きにカブレた有識者達は政治の実権を我ら国民の手にとウィーン市民を煽動していったのね。
勿論、ハプスブルク家一人の手によって政治が動かされる事が良いとは思わないけれど、無駄に頭が良いと言うか、こういった有識者って世の中の流れにカブレやすいよね~(失礼)。
現代でもTVを見ているといるじゃない?
御用学者よろしく偉そうに知識と意見を語っているけれど、それって多角的に物事を見てるのかなぁ・・・って思っちゃう人達(あぁ、どんどん辛口になっていく~)
別にハプスブルグ家を擁護する訳ではないけれど、ハプスブルグの人達だって何も利益や権力を独占しようとしていた訳じゃなかったのよ。
時代の流れとしては仕方がないのかなぁ・・・と、弱腰な見解と同時に、でも「今小さな国々がいきなり独立しても、共産圏の国に吸収されるだろうし、そうなったら彼らは自由が無くなっちゃうよぉ。憎まれても親戚同士(と近隣諸国の事を思っている)、ちゃんと経済力が付くまでうちで面倒みるからさぁ、もうちょっと待ってよ。緩~く行こうよ、緩〜く」と言うのがハプスブルグの人達の考え方だったんです。
が・・・・
帝国解体や王権を国民にと思う人達にとっては「うるせーやい!ガタガタの老体がグダグダ言うな。力づくでも実権をよこしてもうらぜ」位な勢いで政治運動が繰り広げられていたのが世紀末のウィーン。
余りにも押す声が強ければ、守ろうとする力も大きくなるもの。
時の宰相メッテルニヒを始めとする政府側は、どんどん反抗する市民達を投獄し、スパイを放って政治活動をしている地下組織を通報させたりと、当時のウィーン市民はもう誰が敵で誰が味方だか分からなくなっちゃったんです。
実際に政治活動をしたり、政治活動を煽動するような小説や新聞を作ったりしている人もそうですが、政治活動に関わっていないのに少しでも行動が怪しいと思われたら投獄させられちゃう訳だし街には秘密警察がウヨウヨしているから、市民は怖くて、外に出なくなっちゃったのね。
そりゃ、そうだよねぇ。
外に出るだけでも・・・いいえ、家に居たって、何か人と違う事をしただけで目を付けられちゃうんだら、じっと息を殺して、嵐が過ぎるのを待つしかないじゃない?
今まで自由に外に出て、カフェで美味しいコーヒーを飲んで甘~いお菓子を食べて、カフェに集まる人とお喋りをしたり新聞を読んだりetcそんな自由が奪われて家にいるんだものストレスが溜まる、溜まる。
何だか、今の日本にちょっと似てる。
だって、有名人が不倫とか何かちょっとでも他人を刺激する事をすると社会的に制裁をされる世の中でしょう?SNSを使って。
今回のコロナ禍も、早く終息させたい気持ちは皆んな一緒だけど、営業しているパチンコ店や飲食店を通報したり、槍玉に上げたり(個人的感想です)…なんか、これからは健康も含めて、色々な面で監視社会になりかねないなぁ、ってね。
…で、世紀末にウィーン話しを戻すとね、自由が奪われて人々は思ったんですよ。
家族で過ごす時間、家で過ごす時間を大事にしようって(この辺りも似てますね)
外に出られないから、お金は使わない。
じゃあ、そのお金を家で過ごす時間にかけられるよね、ってね。
ちょっと贅沢な家具を買ったり、ちょっと良い食器やカトラリーを揃えて食事の時間を充実させたり・・・・そんな市民的な生活全体の事をビーダーマイヤーと呼ばれています。
・・・・と言う背景を知ると、なる程、特徴が無いというのも良く分かるでしょう?
だから、ビーダーマイヤー期の家具や食器は貴族的なデコラティブなものではなく、シンプルだけど質が良い…まさに質実剛健って感じで無駄がないんです。
残念ながら、現代の市民生活は経済をも脅かす程で、ちょっと贅沢は難しいかも知れませんね。
でも、その一方で心地よく過ごす為の工夫を人それぞれされている事と思います。
人によっては、欲しかった食器を買ってティータイムを楽しんだり、ストレスを和らげるアロマやキャンドルを楽しんだり、今までとは違うジャンルの音楽を聞いたり・・・・・社会全体としてはデリバリーやオンラインと言うシステムがもっと生活に浸透するとかね。
私も、普段使いに新しくケーキ皿が欲しいと考えているところ。
本来なら収納スペースの奥深くに仕舞いこんだリチャードジノリのアンティークローズのケーキ皿を引っ張りだせば買う必要が無いのですが、何せ引っ張り出すのが面倒臭くて…
取り敢えず2枚あれば良いので、この機に便乗してジノリのイタリアンフルーツのケーキ皿を買っちゃおうかなぁ、とか、普段私はヘレンドのモカカップ「ウィーンのバラ」を使っているので、統一感を出してヘレンドの方が良いよね、でもイタリアンフルーツ柄が欲しい〜等と、悩む事を楽しんでいます。
↑アンティークローズのケーキ皿
とは言え、最近私は体質改善に漢方を始めましてお値段と相談の上・・・と言う状態ですが、でも、買っても買わなくても、自分の「好き」を周囲に置いたり、「こんな事をしたいなぁ」と頭の中に描くだけでも十分だと思います。
それが、これまで「家を出たら実現させよう」とかお子さんがいる方だったら「子供達が独立したらやってみたいなぁ」等と、何か条件をつけて出来なかった事や、やらなかった事を実現させる一歩になるんじゃないかな?
新聞を見ると、このお家時間は悲喜こもごもで、夢を描くばかりではない現実も沢山ある様です。
勿論、実際には生活がありますので、ご家族がある方はお子さんの事や毎日のご飯、中には旦那さんが家にいるのでお米の減りが早くなると機嫌が悪くなる奥様もいらっしゃるなど、ちょっと切ない記事も拝見します。
でも、そんな時代だからこそ、誰がいるからではなく、家族1人1人が自分の役割を見つめて精神的に自立する事や、行動で自立をする事も大事な気がします。
そして、1人1人が自立していく事で、「私って何?」「私って、この人生でどんな事がしたかったんだっけ?」って忙しい日々に置き去りにしてきた何かを探してみる機会にもなる様な気がします。
自分の為に、お花を買う。
家族の為に我慢して来た事をやってみるetc
こんな小さな事でも良いと思います。
自分のやりたい事を叶えてあげてみませんか?
それが現代のビーダーマイヤーなのかも。