ケン・ライト・セラーズ ピノ・ノワール
ウィラメット・ヴァレー 2012
新大陸のピノ・ノワールの中でも、作り手によってはブルゴーニュのワインを上回るとされているのが、アメリカ、オレゴン州のウィラメット・バレーのピノ・ノワール。
冷涼気候下にあるものの、太平洋岸の暖流の影響を受ける為、葡萄が十分成熟し、ピノ・ノワールを始め、ピノ・グリ、シャルドネ、リースリングと言った、ブルゴーニュやアルザス系の葡萄品種の栽培地として有名な地域です。
作り手のケン・ライト氏は、ブルゴーニュの大手ネゴシアン「ルイ・ジャド」がオレゴンに進出する際に相談をしたと言われる、名の知れた作り手。
テロワールを表現する事に真摯に取り組んでいます。
新大陸のワインは、どちらかと言えばテロワールと言う概念よりは、気候による区分を元に灌漑設備を整え、データとテクノロジーによって作り上げて行くと言う考え方ですが、このワイナリーは「ワイン造りはテロワールが全て」という信念のもと、オレゴン・ウィラメット・ヴァレーで最上ブドウ畑のテロワールを そのまま表現したワイン造りに専念しています。
作り手さんのデータによると「健康で、極端に低い収穫量(1枝に2)房のみ、 しかも1房が実れば残りの1房は堆肥にしてしまうほど)により、凝縮したアロマ、フレーバーと滑らかな 質感を持つ偉大なワインへと仕上がります。樹齢の高い樹は全て母岩に達し、テロワールを表現」しているのだそうです。
さて、本日のワインは、シングルヴィンヤードを造る若樹から取れたブドウで仕込み、セカンド・キュヴェのもの。
実は、トップキュヴェは、世界中のワインラヴァー垂涎の的の為、樽で寝かせている状態の内から、全て完売してしまうんです。
率直に言って、ピノ・ノワールらしいピノ・ノワールを飲もうと思うと、やはり高いな、と言うのが正直な感想。
秀逸なACブルゴーニュや村名格には及ばないかも知れない。けれど、実際、5千円台では納得出来るブルゴーニュは飲めない。その逃げ口をどこに持って行くかとなると、新大陸に向かうのですが、カリフォルニアのピノ・ノワールも昔に比べると値が上がっている。
カリフォルニアのピノ・ノワールもピノも、ちょっと良いなぁと思うと、万単位となってしまう。
ブルゴーニュのピノ・ノワールとは少し違うけれど、なんとか及第点を出すとしたら・・・・と言うのが、このワイン。
ただ、改めて、美味しいピノ・ノワールは新世界でも1万円前後、それ以上を覚悟しなくては飲めないと言う事を痛感しました。
勿論、軽くてチャーミングな3、4千円クラスのブルゴーニュの赤もあるけれど、ピノ・ノワールの真価はもっと違う。
芸術的な高みに持っていったピノ・ノワール・・・・の片鱗を、少しでも真っ当なお手頃価格で飲みたい。
新大陸でも陰影のある、ピノ・ノワール本来の特徴を多少なりとも兼ね備えたピノを、5千円程度で飲めれば、ピノ・ノワールの本当の良さを少しでも多くの人に知って貰えるのだけれど・・・・そう、思うと残念な一夜でした。
確かに、そこそこ美味しいワインです。
但し、売り手のテイスティングレポート程の評価を私はしません。
香りです・・・直ぐに閉じてしまうので開くまで時間がかかりますが、カシスやラズベリー。スミレ。甘草、土、紅茶。
第一印象は閉じ気味なので、若干の果実の印象はあるものの、スパイス的な香りが先に来ます。
アルコール分が豊か(13%)なので、若干メントール系の香りで鼻を覆われる感じ。
香りが開くまで時間が掛かりますが、開くと、軽いチャーミングなピノ・ノワールの香りが広がります。
味わいは、優しい果実味の後、直ぐに豊かな酸が広がります。
優しく、酸に溶け込んだタンニンを感じますが、タンニンの収斂性よりもエスプレッソ的な苦味が口中にじわじわと広がる印象の方が強い。
タンニンは酸に便乗して広がる程度。
この苦味は、種まで熟しているからなのか、それとも除梗100%ではないのか?
または、果実のポテンシャルの割に樽の度合いから来るのか不明。
料理はブルゴーニュ程気難しくない。
家庭ならポークソテー程度でも十分楽しめるワイン。
若干、アルコール観が吐出しているワイン。
トップキュヴェを飲む機会があったら、期待したい。
真のブルゴーニュのピノが狂おしく愛おしく思う夜。