フレッド・ロイマー ランゲンロイス ツヴァイゲルト2012
オーストリアの首都ウィーンから西北西に70km程行ったところにある、カンプタール。
このカンプタールにある街がランゲンロイスです。
カンプタールは、パノニア気候の影響を受けて夏は暑く、冬はヴァルトフィアテルの風が冷たい北風から産地全体を守る一方で、夜間には冷気を流す為、葡萄の生育期間がより長くなり、高い酸を維持したまま、ゆっくりと果実味を育む為、トロピカルフルーツの様な熟した果実の香りのするリースリングや蜂蜜の様な香りのするグリューナーヴェルトリナーのワインを生みます。
ヴァッハウの様に直線的な酸をもつクリアーなイメージのワインと一線を画しますが、ふくよかでありながらも繊細さを持つ、複雑性のあるワインが多く、天才的かつマニアックな作り手が多いのも嬉しいところ。
さて、このランゲンロイスの街にある、ブラックボックスと呼ばれるスタイリッシュな美術館の様な醸造所を持つのが、フレッド・ロイマー。
天才肌のイケメン醸造家。
ビオデナミを取り入れた彼のワインは、プレスした果汁は全て重力で移動させる徹底ぶり。
さて、ツヴァイゲルトはオーストリアの固有品種ブラウフレンキッシュとザンクト・ラウレントのツヴァイゲルト教授による交配種。
早熟で多産、病害虫にも強い葡萄品種です。
香りはチェリーや苺、フランボワーズの様な赤系の果実に、やや土っぽさがあり、タンニンはそれ程強くないチャーミングなワインに仕上がる事が多い。
その優しい味わいにロゼの品種としても使われるが、苺の様風味の気さくで素直な印象のワインが多い。
さて、ロイマー氏が作るツヴァイゲルトはどの様な作りとなるのか・・・・。
外観は、紫がかった非常に濃いルビー。
香りは、外観から予測される通り、カシスのリキュール、ブルーベリー。スミレ。
若干土っぽさとハーブの様な香り。亜鉛などミネラルの香り、樽の影響から来る、木の内側の香り、エスプレッソやビターなカカオの香り。
味わいは、アタックにほのかな甘味がありつつ、溌剌とした若干刺激のある酸が序盤から最後迄続く。
渋味も序盤から酸に溶け込んで感じられますが、酸の広がりと共に細かいタンニンが舌の両側に向けて広がって行く感じ。
アフターは苦味が戻ってくる感じです。
明らかに、現代風の作りのツヴァイゲルトですが、好みが二分しそうな気がします。
ロイマー氏は白ワインで評価が高い作り手さんかと思いますが、今回のワインはツヴァイゲルトと言うより、シラーやカベルネっぽい印象。
口中で香りが広がり綺麗に纏まったエレガントな印象のワインが好きか筋肉質なマッチョなワイン系が好きかと言うところで、後者が好みの方には良いかもしれません。
個人的には、作りとしては悪くないけれど、私は好感が持てないなぁ。
この部分の記載は、一部の方にしか分からない表記になりますが、今回のワインを飲んで感じたのはシャンボール・ミュジニの作り手であるボギュエの作風を思い起こさせるワイン。
若い頃の凝縮した果実味、力強さは、ジョルジュ・ルーミエやD.R.C等とは作風を画している感があるが、ロイマー氏のツヴァイゲルトはピノの様な優雅やふくよかさは無いが、凝縮感や力強さはボギュエの若いヴィンテージを連想される。
私が好感を持てないのは、上記の点なのだ。
若くても、するっと典雅に纏まったしなやかさを求めるタイプには難しい。
テクニカルデータが無いので詳細は不明ですが、収量を押さえ、新樽も若干使って熟成されている、地場品種を使いながら国際市場を意識した作りかと予想されますが、ツヴァイゲルトは赤系果実の持つ明るい果実味とエレガントな酸。若干、野性的なところを見せるが、綺麗に纏まった伝統的な作りの方が好感が持てると思います(個人的な意見ですが)。
新しいスタイリッシュな印象のワインですが、鹿肉のソテー、モツなど料理を選びそうなワイン。
若いローヌを想像させるようなワインなので、料理も少し癖のある料理の方が相性が良いと思います。
単体で飲むワインと言うより、癖のある料理と合わせると相乗効果によって、真価が発揮されるワインと言えそうです。
但し、アルコール度が比較的高い割に、スルスル身体に馴染んでしまうのはビオデナミのなせる業か。
ビオ=美味しいワインではないのですが、二日酔いでも身体に優しい位、味わいに文句を言いながらも進んでしまう馴染みの良いワインである事は間違いない。
ロイマーさんは、他にリースリングとグリューナーヴェルトリナーをストックしているので、白ワインに期待しよう。