ジャクソン キュヴェ №738 NV
さて、今回ご紹介するシャンパーニュは、700シリーズの738というキュヴェ。
2000年の収穫分からヴィンテージを反映する700シリーズをリリースし、ヴィンテージの特徴を追及したシャンパーニュの為、毎年造られるワインの個性は異なります。
№738とは、738番目のキュヴェという事。
さて、テイスティングですが・・・・。
グレープフルーツなどシトラス系の香りからリンゴ。咲きたての白い花。
シュール・リーによる、パンの白い部分、潮汁の様な香り。
若干アップルパイの様な香りもあるが、樽発酵をさせている割に樽から来るロースト香りは大人しい。
若干カツオ出汁の香り・・・・上記のシュール・リーの香りにアミノカルボニウム反応から来るもの。
濡れた石灰の様なミネラルの香り。
兎に角、香りが開くまで時間がかかるシャンパーニュ。
余り温度が低いと香りが閉じてしまう。
味わいは、アタックにかすかな甘味が感じられるが(かなり少ない)スマートな印象。
しっかりとした酸にのって苦味がジワジワと舌の両側から広がっていく印象。
フレッシュな印象だが、単体で飲むより、食事と楽しみたいシャンパーニュ。
個人的には、もう少しドサージュに糖分を乗せた方がバランスが取れる様な気がします。
シャンパーニュは細かくテイスティングをしていくと奥が深い。
業者さんに、どこそこのメゾンの様なベクトルのシャンパーニュと注文を出しても、方向性は確かにあっていても、気に入るか否かはかなり微妙な差(0.(零コンマ)の世界)です。
実は、このシャンパーニュも、好みを伝え(メーカー名も複数あげ)取り寄せたものですが、面白いもので、僅かな点で合格点は出せなかった代物です。
今回テイスティングをして、通常のワイン以上にシャンパーニュは作り手の個性が出やす事を痛感。
こちらが出した条件を全てクリアしても、「好き」と言う一線を越えがたい何かがシャンパーニュにはある。
私のワイン評には、優美とか繊細、典雅、フィネスという抽象的な言い方を使う事がありますが、この超え難い何か・・・つまり、僅差(0.何とかと言う)の壁は、これらの要素なんです。
つまり、とっておきのワインやシャンパーニュとは、芸術的要素があると言う事。
これがあるワイン・シャンパーニュが心を捉えて離さない飲み物なんです。
このシャンパーニュはエクストラ・ブリュットでドサージュは低め(糖分添加が少ない)。
その為、フレッシュ感はあるものの、樽を使った厚味のある酒質の割にコクが足りない気がします。
果実は完熟している事は良く分かるのですが、もう一歩何かが足りない。
ただ、誤解しないで頂きたいのは、このシャンパーニュは十分美味しいシャンパーニュである事は確かです。
例えて言うなら、いつもフェラーリを乗っている人が、ランボルギーニも良いんだけど、ここがね・・・と敢えてダメ出しをしている様なコメントだと理解して頂きたいです。
と言うのも、前髪の長さが1mm、2mm違うだけでも見た目が違うけれども、それを異常に気にする人もいれば気にしない人もいる。
この様に、微妙な差を良しとするかしないかは、その人の審美眼に大きく左右されます。
私がOKを出さないのは、その微妙な差を良しとしないだけであって、普通に飲むに十分に美味しいシャンパーニュなのだから・・・・。
ただ、この微妙なズレを見つけ自分軸と比較する事もまた楽しいのです。