ハプスブルク家の歴史を見つめてきたお菓子リンツァートルテ② | Salon.de.Yからの贈りもの〜大事な事は全てお姫様達が教えてくれた。毎日を豊かに生きるコツ

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元ワイン講師であり歴史家。テーブルデコレーションを習いに行った筈が、フランス貴族に伝わる伝統の作法を習う事になったのを機に、お姫様目線で歴史を考察し、現代女性の生きるヒントを綴ったブログ。また宝石や精神性を高め人生の波に乗る生き方を提唱しています。

リンツァーはバリエーション豊かなお菓子で、ブルクテアター・リンツァートルテ(Burgtheater Linzertort)もその1つ。


デメルと言えば日本でも有名なウィーンのお菓子屋さんですが、このブルクテアター・リンツァートルテはデメルのお菓子で、小麦粉の分量よりアーモンドやヘーゼルナッツの粉の方が分量が多く、ココアパウダーやチョコレートも入っている、さらにリッチなお菓子。


写真はデメルのレシピで作ったブルクテアター・リンツァートルテです。



表面には格子模様ではなく、刻んだアーモンドやヘーゼルナッツ、チョコレートを載せてオーブンで焼き上げていますが、中にラズベリージャムがサンドされているのがリンツィアーのスタイルを崩していません。


チョコレートにアーモンド、ベリーと女性の好きなモノばかりのお菓子です。


お菓子の名前にもなっているブルク劇場は、昔はホーフブルク宮から棟続きで、皇帝一家が外に出なくても自由に行き来き出来た、ハプスブルク家縁の王宮付きの歌劇場。

現在は、火災によって焼失した為に、現在の場所に立て直しされました。


忙しい公務の合間を縫って、劇場に足を運んだ皇帝一家達。


宮廷に寄りつかない愛妻シシィの代りに、皇帝フランツ・ヨーゼフが女友達として女優カタリーナ・シュラットを見初めたのもブルク劇場での芝居でした。


尤も、シシィの手解きで女優を皇帝に紹介したとは言え、末っ子のマリー・ヴァレリーは儀礼上カタリーナ・シュラットと親しく関わらなくてはならない事が嫌で堪らなかったそうです。



父フランツ・ヨーゼフと女優語カタリーナ・シュラットとの不自然な友情に悩んだマリー・ヴァレリー。



カタリーナ・シュラットは気さくで悪い人では無かったけれど、ヴァレリーにとっては、家族の中に他人が入ってくるのが嫌だったのでしょうしょぼん


そしてブルク劇場と言えば、微笑ましいエピソードが1つ。


男子の後継者に恵まれなかった為に、23歳で即位したマリア・テレジアもまた、立て続けに女の子ばかり3人も出産した為に、後継者問題には大分心を痛めました。


幸運にも4人の男の子が生き残ったとは言え、長男ヨーゼフは跡取りを残さずに最愛の妻イザベラが病死した後、国家への義務の為再婚をしましたが、イザベラの事が忘れられず、二度目の皇妃が天然痘で亡くなると、「二度と結婚はしない!」と宣言してしまった為、またもや後継者問題に頭を抱えてしまったテレーゼ。


この一族は呪われているのかしら・・・・。

最愛の夫にも先立たれ、独り寂しく帝国の将来を心配していたのです。


そんなある時、フィレンツェからの使者が日を夜に繋いで、大急ぎで朗報を届けに来てくれたんですニコニコ


トスカーナ大公レオポルトに男子誕生!!


この朗報に飛び上るほど感激したテレーゼは、何を思ったのか、側にあった上着を羽織ると、ブルク劇場に向って走り、勢いよく扉を開け


「うちのポルドルに男の子が生まれたのよ!!


と叫んだのです。


折しも、悲劇が上演されていた最中でしたが、俳優や観客全員が一堂に、女帝陛下にブラボー!と返し、テレーゼと共に喜びを分かち合いましたラブラブ


この時、はっと我に変えったテレーゼは、恥ずかしそうに劇場の扉を閉めて自室に戻って行ったと言う、何とも微笑ましいエピソードが残っている程、皇帝一家との繋がりが深いのがブルク劇場です。



左が「うちのポルドル」ことトスカーナ大公レオポルト。イケメンでしょ?

因みに、右が兄の皇帝ヨーゼフ。



いまでもブルク劇場はオペラ座と並んでウィーンのシンボル。


ヨーロッパで愛されている伝統のお菓子達は、こう言った沢山のストーリーがあり、歴史として語り継がれ、伝統の食文化として現在も脈々と楽しまれています。