フランス革命で幼くして両親を失ったマリー・テレーズは、大人になって、従兄弟の子供達に、母マリー・アントワネットとの懐かしい子供時代の事を話して聞かせる事があったそうです。
ある時、馬車に押し込まれ激く揺られて、泣き出してしまった親戚の小さな男の子を膝の上に抱いて、こんな話を聞かせてあげたそうです。
屋外で昼食をする狩猟会の為、アントワネットとマリー・テレーズは一緒の馬車に乗っていました。
ところが、途中で王妃達を載せた馬車は、狩猟を楽しんでいる国王達の一行を見失ってしまったのです。
そして、十字路に差し掛かり、遠くに聞こえるラッパの音を頼りに、進むべき方向を決める為馬車を止めた時、一頭の牡鹿が馬車の側に現れたのでした。
従者達が牡鹿にマスケット銃を向けると、アントワネットは牡鹿を逃がす様に命令したのだそうです。
牡鹿は、大きな水たまりを越えて逃げていったのですが、お礼を言うかの様に一度だけ振向いて、そのまま雑木林の中に消えていったそうです。
動物が好きなアントワネットは、自分や子供達の前で動物が殺されるのを見るのが忍びなったのでしょう。
やがて国王達がやってきて、こちらに鹿が来なかったかと尋ねると、アントワネットはこれ迄の出来事を正直に伝え、こう言ったのです。
「あれは私の牡鹿です。鹿に触るのはやめて貰いたいわ」
すると、国王は大笑いをして、狩りの終了を告げたのだそうです。
そして、「あなたは今年一番の獲物をくすねたのですよ」と応酬したと言います。
レーリュッケンは、ドイツからスイスにかかる一帯で親しまれている伝統のお菓子です。
王朝が長く続いたオーストリアは、食文化の宝庫であり、有名な伝統のお菓子が沢山残っています。
その為、特にレーリュッケンが代表的なお菓子として紹介される事はありませんが、ウィーン市内には森があり、チロルの山々に囲まれたオーストリアでも楽しまれている様です。
日本では鹿は神様の御使いとされている地域もありますが、チロルの様な山岳地帯や深い森のあるドイツでは、鹿は身近な動物なのでしょうね。