ハプスブルク程の名門の御曹司となれば、どんなに愛し合っていても、身分が低い女性とは結婚出来ませんでした。
しかし、この一族。
当時の風習なら、身分ある者なら愛人の1人や2人持つのが当たり前だったにも関わらず、愛人を囲う事を良しとせず、一度、結婚したからには最後まで仲良く添遂げると言う、王族としては珍しい一族。
しかも家訓として定められている訳でも無く、多くの皇帝や大公達が自発的に、妃だけを愛したのですから、微笑ましい一族です。
それ故に、不運(?)にも、一般市民の女性を好きになってしまった大公達は、何年もかけて皇帝を説得して、愛する女性と正式に結婚をしました。
ハプスブルクの王子様達が、どんな苦労をしても生涯を共にしたいと思った女性達に共通して言える事は、皆、料理の腕前がプロ並みに上手だった事。
・・・・と言うと、「好きな男性の心を掴むには、やっぱり、胃袋を掴めって事ね!」と思う方もいるでしょう。
いいえ、その様な安直な恋愛テクでは、王子様の奥方にはなれません。
彼女達は、大公達の仕事が如何にハードで重要か良く分かっていましたから、いつも、大公達の身体の心配をしていたんです。
大公達は、帝都ウィーンにいる時は、国政に参加したり、王室付き外交官の顔を持ちながら、地方自治も行わなければならない。
せめて、家族水入らずの時位は、家庭的な暖かさの中で寛いで貰いたい、そんな優しい心遣いの一例として、料理の腕を磨いたのかもしれません。
それに、お妃になると言う事は、家政がしっかり出来ないと失格です。
因みに、「王妃は家事が出来ないとダメ」とはモナコ王妃グレース・ケリーも言っている位です。
さて、チロル地方と言えば、フェルディナント大公と豪商の娘フィリッピーネが暮した土地。
ハプスブルク一族が保養旅行に来た際、窓から皇帝一家の一行を見ていたフィリッピーネを、フェルディナントが見初めて、ゴールインしたカップル。
勿論、このカップルも他の貴賤結婚の例に違わず、結婚までの道程は決して平坦なものではありませんでした。
結婚後、フィリッピーネは大公の体調に合わせて献立を考え、新しい料理を思い付くとレシピとして記録に残していたんです。
今でも、フィリッピーネのレシピ集は見る事も出来ます。
人をもてなす事が大好きだったフィリッピーネが得意としたのが、チーズを使った料理。
フィリッピーネは数々の料理の他にも、チーズを使ったお菓子やデザートのレシピも豊富に残しています。
さて、次回は、いよいよチロル地方の伝統のお料理の紹介です。
出会いの光景。右端の上白い服の人がフィリッピーネ
フィリッピーネ
・・・・・to be continued