皆さん、ちょっと想像して下さい。
相手は、得意先でも、上司や先輩、ママ友でも誰でも良いです。
会話が弾まない退屈な食事会。
・・・・何だか、食事を食べた気もしませんよね!?
実は、皇帝家との晩餐は、退屈極まりなかったと、笑い話の様なこんな話が残っています。
フランツ・ヨーゼフの一目惚れで結婚に至ったフランツ・ヨーゼフとエリザベート。
魅かれ合っていても、一緒にいると何故か互いを傷付け合ってしまう夫婦でした。
早くも結婚生活は破綻したものの、カトリック教徒の宮廷では離婚は許されなかった為、体調不良を理由に宮廷を飛び出したエリザベート。
宮廷行事はもとより、家族の行事さえ皇妃不在のまま行われていました。
まさに今で言う、父子家庭。
多忙な皇帝であるにも関わらず、シングルファーザーさながらのフランツ・ヨーゼフだったんです。
そんな冷え切った家庭ですから、一家団欒の食事風景なんて、まずありえません。
ハプスブルクの歴史の中で、マリア・テレジアの時代が尤も宮廷が家庭的で、その家庭的暖かさは、ロイヤルファミリーの中だけではなく、皇帝一家と臣下の間柄でも同じだったそう。
しかし、その後、再び宮廷儀礼が厳しくなり、フランツ・ヨーゼフの時代には、皇帝に話しかける事は許されなかったんだそうです。
加えて、フランツ・ヨーゼフが会話が苦手だった為、晩餐の席に着いても、だんまりしたまま手短に食事を終わらせてしまうだけ。
皇帝の食事が終ったら、同席した大公達は、まだ食事が終わっていなくても・・・メインディッシュに手をつけていなくても!・・・食事はおしまい。
宮廷儀礼の決まりで、お皿は片づけられてしまうんです。
皇妃エリザベートが同席している時は、更に最悪。
稀にエリザベートが晩餐に同席しても、夫婦間に会話は無し。
しかも、エリザベートは節食をしているので、更に早く食べ終わってしまう。
やってらんないよーっ!
同席した大公達のボヤキが聞こえてきそうです。
さて、食事の途中でお皿を取り上げられてしまう大公達。
お腹を空かせた大公達は、ホテル・ザッハーに行って、やっと、ゆっくりご飯にありつけたって訳。
この頃、大公達が大勢詰めかけたので、ホテル・ザッハーのレストランの売り上げが上ったんですって。
差し詰め、現代の若者風に言えば、
「なぁ、ザッハー行かねぇ?」
「あっ、行く行く、もー死にそ。俺、メイン食ってないんだぜ。」
「えっ、何、ザッハー行くの?!自分も行くっス!しっかし、まぁ、食ったきしねーよなぁ」
・・・と、こんな会話がされていたのかも知れません。
お洒落をした、見目麗しい貴公子達がぶつくさ言いながら、ガツガツ食べているところを想像すると、可愛らしいやら可笑しいやら。
宮仕えは、昔も今も辛いものですね。