セラー・セレクション・シャルドネ2013
シレーニ・エステート
ニュージーランド北島にあるホークス・ベイのワイン。
特にワインに詳しくない人でも、シャルドネと言う葡萄品種を聞いた方は多いと思う。
しかし、このシャルドネ程ニュートラルな品種はない。
15年程前、シャルドネを使った白ワインは樽香が強いワインが多かった。
ローストしたアーモンド等ナッツ系の香りやトーストの様な香り。
フライや焦がしバターを使った料理、ムニエルやグラタンなどクリーミーな料理が食べたくなる様なワイン。
果実香りを隠す程の樽化粧をしたワインは、葡萄のポテンシャルの高低まで見抜けないワイン初心者には、複雑な香りに最初の1杯、2杯は心地良く感じてしまう物が多く、その多くは、スペインや新世界のシャルドネに多かったものだ。
同じシャルドネでも、フランスのピュリニーモンラッシェはそのポテンシャルの高さ故に、樽を使っても一線を画していたものだった。
因みに、サシャーニュモンラッシェも樽に頼った味わいではない。土壌の関係から、ピュリニーよりナッツ系の香りが出やすいだけだ。
が、数年前より、新世界ものもステンレスタンクによる発酵熟成でナッツ系のするシャルドネから脱し始めたのである。
確かに、このフレッシュ&フルーティーさは、現代の嗜好に合うと思う。
樽による厚化粧をしたワインより、ワインって果実酒だったんだよね、と改めて感じる作りだ。
・・・・が、シャルドネに関して言えば、のっぺりとして面白くない。
いや、果実香の大人しいシャルドネに関してはと言い直そう。
反感を持たれる事を覚悟で敢えて言わせてもらえば、イタリアや新世界の温かい地域・・・酸を失い易い地域・・・で作られるシャルドネ。ステンレスタンクで発酵熟成をするワインは、私は嫌いだ。
このシレーニ・エステートのシャルドネはイタリアのシャルドネよりは好感が持てる。
何故なら、イタリアの同じ作りによるシャルドネは、消しゴムの香料の様な香り、甘い白い花の様な香りに覆い隠されると言う悲劇は辛うじて免れている。
これは、醸造による香り。ワイン用語でいう第2アロマの香りだが、これが強いと良いワインとは言わない。
今回のワインは、香りは閉じ気味。
グレープフルーツなどシトラス系の香りが若干感じられるものの、ミネラル、生のアーモンドの香り、レモングラスの様な香りが若干感じられる。
味わいはスマート。溌剌とした、刺激のある酸が印象的。と同時に、酸に角が無い。
一瞬、MLFを掛けているのかな?と思う位、ヨーグルトの様な角のない酸の印象もある。
そして、中盤からジワジワと、心地よい苦味が感じられる。
クリームソースのシーフードには持って来いのワイン。
ヘルシーにクリームの部分を豆乳に変えても対応可能だ。
そして何より、アボカドに合う。
全体的な印象として、ややエスプリを感じさせるが能面の様なワイン。
多分、葡萄のポテンシャルが低いのだろう。
これなら、カリフォルニアやスペインの少し樽香のあるシャルドネの方が、数倍、好印象が持てる。
その方が、フライやムニエルなど、シーフードにヴォリュームを与えた時に、余程合うからだ。しかも、昔より樽香は数段控えめだし。
今回は辛口批評だが、シャルドネは作りによって、吉とも凶とも出る。
カジュアルクラスのシャルドネなら、フランスはマコン・ヴィラージュ当たりを飲んだ方が余程良い。
または、値は張っても、ピュリニーモンラッシェかサシャーニュモンラッシェ(私は迷わずピュリニーを取るが)を飲んだ方が、数倍、人生の喜びを感じられる事だろう。