ルイとの愛欲の日々を過ごす間に、すっかり年を取り、度重なる出産で太ったモンテスパン夫人は、容色の衰えに、寵姫の座を明け渡す日が、いつか来る事を気にしていました。
しかし、それはまだ先の事。まだまだルイ威光に守られたこの生活を手放す気にはなれない。
その為、ルイの周囲に若い娘を近づけない様細心の注意を払いました。
そもそも、スカロン夫人を養育係に付けたのも、若い女をルイの目の届くところに置きたくなかったからです。
何故なら、スカロン夫人はルイより3才年上。年増の女にルイが見向きをするとは思わなかったのです。
しかも、スカロン夫人は、父親が獄中にあった為、監獄で生を受け、幼い頃から苦労を重ね、自分の生活費は自分で稼がなくてはならない身の上。
間違いが起ったところで、その素性ははばかれる為、寵姫になる事はまず無いと考えたのでしょう。
モンテスパン夫人は若さを、若い娘が持つ瑞々しいまでの肌を憎みました。
自分の権力に執着し、自分の欲望を満たしてくれるルイの権力に執着した結果、老いて失われつつある美貌や魅力に恐怖を感じ、嫉妬し、他人を排除した挙句の失脚でした。
自分が執着した物を他人と比べて嫉妬する。自分が執着している事を他人に投影するから、投影した範囲の事でしか判断しなくなる。結果的に相手の粗ばかりあげつらって苛々する。、嫉妬と執着心の炎に煽られて苛々し、心も外見もおブスになって行くと言う典型です。
モンテスパン夫人の例に置き換えると、彼女は美貌が武器でした。
若さを伴う美など一瞬なのに、美貌に執着したから、同じ美を持つ人間を排除する。自分のエゴに執着するから、人の気持など配慮もしない。どんどん人としての品格が無くなる。結果、人の上に立つルイの顔に泥を塗る様な振舞をしても気にも留めない。
これでは、孤独に耐え激務に耐えているルイだって心を許せる人が欲しくなりますよ。
美人は3日で飽きると言いますが、心のおブスは1日だって目が当てられません。
そもそも、遊び好きでも根が真面目で努力家のルイとは、見かけ上の条件は合ったとしても人としての器が違うので、釣り合う訳がなかったんです。
ここまで酷くなくても、好きな人の周囲に綺麗な女性や仕事が出来る女性がいたら、心はざわつくものです。
起きてもいない未来を勝手に想像して、心配し不安になる事もあるでしょう。
しかし、蓋をあければ取り越し苦労も多いもの。
さらに悪い事に、不安はやがて現実になります。
そして意外と、マークしていた才色兼備ではなく「あれっ、何故彼女が?」と言うタイプの女性とくっついてしまった、なんて話も案外聞くものです。
他人にあって、自分に無い物を探して悔んだり心配しても何の得にもなりません。
自己嫌悪やコンプレックスを引き寄せるだけですよね。
そんな暇があったら、自分の良い所を伸ばせばいい。
彼・彼女の為にしてあげられる事を自分なりに一生懸命やれば良いんです。
条件を付けない、あるがままの愛情は、結婚に結びつくか否かは別として、決して悪い流れにはなりません。
自分を可愛がってくれるから、経済的に楽になりたいから等と言う理由で恋人を選ぼうとするから、「こんな人ではなかった」と愚痴を言ったり、合コン受けするキャラを演じて自分を安売りしたり、結果、こんがらがって面倒臭い事になる訳です。
彼の為に何をしてあげられるのか、誰かと競うよりも、彼と共に何をこの世の学びとしていくかを感じた方が健全で実りも多いと思います。
恋愛程思いがけない展開があるものです。
手が届かないと思っていた相手でも、何かのキッカケで距離が縮まるのが恋愛の醍醐味です。
愛される為の広告に翻弄される事なく、自分の中にある彼・彼女への思いを大切に。
愛に裏付けされた品性が、きっと新しい扉が開く筈です。