たいして親しくなかった10年以上没交渉の旧友からいきなり連絡があったら何事か、と思うだろう。
①マルチ商法のお誘い。
②宗教の勧誘。
嫌な予感しかしない。
相手が異性だった場合は精一杯うぬぼれてみてやっと
③不倫のお誘い。
くらいか。いずれにしてもろくな話ではない。
私は学生時代から「将来はCDジャケットやフライヤーを作る仕事をしたい」
と思っていたので、大学在学中も、就職してまだ勉強中のデザイナーになってからも
友達のバンドのスタッフをさせてもらって勉強のため無料でフライヤーなどを作っていた。
当時のインディーズバンドの音源の主流はデモテープ。
デモテープのジャケットも作った。スタッフなので物販席に座って自分で売った。
私がいまもKISAKIさんのライブの物販を手伝ったり、真田のスタッフをしていたのは
昔こういうことをしていたからです。普通デザイナーあんまり物販しない。
だいたい4~5バンドくらいのスタッフをして、その後にKISAKIさんと出会い私は一人前にお金の頂けるデザイナーになった。
その4~5バンドのうちのメンバーの一人から10年ぶりくらいに電話がかかってきた時の話である。
先述のとおり特に親しかったわけでもないのでわりと不信感しかなかった。その時いた場所がたしかFan-J twiceの楽屋だったので、そこらへんに適当にいる人に何だと思う?と感想を聞いた事を覚えている。
前回のブログにご出演願ったキングオブクソ氏にも聞いた(当時は現役地下線麺)。
答えは「④借金の申込み」であった。
自分と一緒にするな。
ある意味模範解答である。
とりあえず、会って話がしたいというので行った。
もう10年以上前にバンドをやめて結婚もしているらしかったが、V系バンドマンはバンドをやめるとだいたい98%位の割合で太る。収入が安定して毎食きちんと食べられるようになったり体型を維持する目的を見失ったりするためだが、意外と変わっていなかった。
(余談だが「バンドやめる」と決心しただけでまだやめてないのに太った人もいる)
お茶を飲んだり昔話をしたり、何故か天王寺公園をお散歩したり、目的がわからないまま数時間経過し、私が「ひょっとして③だろうか」と考えだした頃やっと切り出された用件とは。
まさかの「逆援助交際のお申込み」であった。もちろん私が援助する側である。
逆援希望氏の話によれば、彼の妹さんに障がいのあるお子さんがいて療育にお金がかかり、たびたび生活費を無心されるので仕送りをしていたが、稼ぎに余裕のあるほうではないので足りないくなった時は消費者金融で借りていた。
収入があったときは少しでも多く返済したいので競馬で増やそうとしたが予想がはずれてまた借りた。
繰り返すうちに今では利子を払うだけでせいいっぱいになり、元金はすこしも減る気配が無い。ということだった。
もちろん嘘か本当かはわからない。全額競馬に突っ込んで溶かした可能性も0ではない。
ようするにアナタが替わりに借金を返してくれ、そのかわりにアナタとセックスしてあげます。というご提案である。
借金総額はたしか280万円くらいだったと思う、そして1回につき5万くらいくれというのだがそれだと56回セックスをしないと完済しない計算だ。
念のために言っておくが特別にかっこいいとかバンドマンとして華があったという訳でもないうえに1ミリも好きでない、連絡がくるまで存在すら忘れていたような男である。
第一の感想は「なんでそんな体力的にしんどそうなことをしなくてはならんのか」であった。
当時は実家から職場まで片道1時間以上かけて通勤しており、アンダーコードのデザインの仕事がメインだったので時間が不規則で残業も多かった。
そんな勤務態勢のなかの貴重な週休2日(よく休日出勤で潰れる)
その貴重な休みの日に、好きでもない男と、毎週セックスしに出掛けて、その上金を払うだと?
一瞬、「それは私がこんな残念な女でなければ逆にお金を貰える案件では」と思ったが(それは普通の援助交際っていうか売春)
ただでさえ仕事で疲れているのにそんな余計に疲れそうなことやりたくない。何とか体力の温存を図りたい一心で私がとっさに思いついた名案が
「280万円一括で払ったら、合計56回のセックスをするのは勘弁してもらえるのでは?」 だった。
ちょうど引っ越し計画中で地味に小金をためていたのである。
次の瞬間「いやいやいやいや!昨日まで忘れていた人!会うの10年ぶり!そんなことする義理がどこに!」と思い直し、援助交際という名目でも既婚者とそういうことはできない旨をつげ、また金を出す人が一人では効率が悪いので分母を増やしたほうがよいのではないかという謎の提案をし、対策として「V系たぬきの掲示板」を教えた。
私の対応も若干おかしいし、準備麺でも厳しいと聞くのに10年前の元麺なんか需要ないだろうとは思ったが知ったことではない。
それにしても、私が逆援助交際でもして金を払わなければセックスもしてもらえない残念極まる女であると決めつけられている点はまあ事実なので怒ってもしょうがないが、逆援希望氏が10年間のあいだに私が結婚もしておらず彼氏もいないだろうと勝手に思っていて、そしてまんまと当たっているのは不愉快であった。
時間が経つにつれてなんか腹が立ってきたので言いふらしてやることにしたのだが、逆援氏のバンドマン歴が昔すぎて、すでに関西V系インディーズ業界に共通の知り合いはほとんどいなかった。
もう、ヴィジュアル的にも社会的にもとっくに立派なパンピなのに、何をもって逆援交などという発想に到り着いたのか謎中の謎である。
しょうがないのでKISAKI社長にお話しした。
重ねて言うが他に共通の知り合いが居なかったのである。
そのKISAKIさんとて直接は知らない、一方的に顔を見知っているというくらいのものなのだ。
KISAKIさんは私が最後まで喋り終えるより先に、若干食い気味で
「絶対お金貸したらあきませんよ!!」と、結構な剣幕で言った。
「いや、貸してじゃなくって、くれって言われてるねんて」とココロの中でツッコミつつ、私は大変驚いていた。
KISAKIさんがどうこうではなく、男性は全面的に男性の味方だと思っていたので、
「それは是非とも援助して、代わりに借金を返すべき」と諭されると、
そう予想しながら話していたからだ。
とりあえず共通の知り合いの大半がV系を去っていたので、言いふらし作戦は失敗に終わった。なのでこんなインターネットの片隅の、誰も読まないようなところに書いて鬱憤を晴らしているわけです。