
おもちゃ修理情報のまとめ・備忘録にNoteを使っています。
修理記録や電子工作メモをNoteに写真付きで整理しています。
今回の記事は下記note記事からの転載です。
【おもちゃ病院】伝説の電子ゲーム 「サイモン(Simon)」の修理
おもちゃ病院での修理記録 です
今回は伝説の電子ゲーム サイモン(SIMON) の修理をしました。
実はこのサイモンのゲーム機には、思い出があります。
大学生の夏休みにグレイハウンドバスでアメリカ貧乏旅行をしているときに、これを見ました。
LAのバスディポで、若いお母さんと小さな娘さんが床に座ってこれで時間をつぶしていました。
トイレに行くときか、Please keep eye on my luggage? とか頼まれました。
概略:古い電子ゲーム「サイモン」の修理
電池をいれて、動作確認しても全く動かない。
スピーカも含め、色々と修理をして動作するようになりました。
1. 持ち込まれた状態
・年式/メーカー:1978~1979年 米 ミルトン・ブラッドリー社
日本では米澤玩具から発売
・症状:電池をいれても全く反応しない。
006P 9V電池と単一電池2個 3Vの電池フタは欠落
3つのスライドスイッチの化粧ノブも欠落
4つの本体裏の止めネジも内1個が欠落していました。
2. 原因
・電源スイッチ、ゲーム選択スイッチ、レベル選択スイッチの接点不良
・スピーカが断線
・メイン基板が動作しない
起動時のLAST、START、LONGESTのスイッチ接点の不良
3. 不良解析
・分解して、不良解析をしました。
① 電源スイッチ、電源スイッチ、ゲーム選択イッチ、レベル選択スイッチ
いずれも接触不良でした。
② スピーカのボイスコイルの断線
57mmΦで、0.2W 8Ω Top Tone made in Japanと印刷があります。
テスタで導通を調べると無限大です。ボイスコイルの断線のようです。
交換するしかないですね。
やっかいなことにボンドで固定されています。
③ メイン基板が動作しない
9V電源と3V電源を外部安定化電源で供給し、電源スイッチをONして
Startを押しても何も反応しません。
9V電源の電流をテスターで測りました。約3mAでした。
なんらかの動作はしていると思われます。
4. 修理内容
① 電源スイッチの修理
・メイン基板から、ハンダ吸い取り器を使って取り外しました。
このタイプのスイッチがないので、分解して掃除することにしました。
4つの抑えをマイナスドライバとマイクロラジペンで広げて外します。
コの字型のスライド接点と、受け接点の酸化物ををクエン酸で溶かします。
キレイに水で洗って乾かしたら、また組み立てます。
4か所の抑えフックのところをマイクロニッパーで閉じるときに、やら
かしました。ピーンと部品が飛んでバラバラになりました。
幸い黒いノブの小さなネジは見つかったのですが、コの字型のスライド
接点がどうしても見つかりません。
仕方ない、手持ちで似たサイズのスイッチをばらしてみます。
おお、2回路で同じサイズの接点が2個はいってました!
これを移植することにします。2コイチ、ってやつですね。
これで電源スイッチの修理は完了です。
テスターでON抵抗を測ります。1オーム以下でOKになりました。
残りの2つのスライドスイッチですが、いつものサンハヤトの接点復活王を吹いてガチャガチャします。
3つのスライドスイッチ不良は、これでOKになりました。
② スピーカの交換修理
・いまのおもちゃに比べると、しっかりとした立派なスピーカです。
でも、接着剤で固定するところが、さすがアメリカさん設計ですね。
水戸黄門を歌いながら、地味にカッターで接着剤をはがして行きます。
びくともしません。困りましたね。
AIに相談して、アルコールを溝に充填して接着剤が柔らかくなるよう
にして、さらにこそいでいきます。
でも、スピーカのヘリが多少浮きましたが、中々全部はとれません。
最後の手段、ブロアーであっためてみます。
スパンジャーをテコにして、スピーカエッジを持ち上げます。
おっ、少し動いたようです! 慎重に続けます。
おっ、とれました! よかったです! なかなかてこずりましたね。
Aliexpressで1個200円くらいで入手した同じサイズのスピーカを
見つけました。これに交換します。(安っぽいですね。)
ホットメルトで固定します。100均のやつより、さすが本職用ですね。
液がズルズルでてきて、作業が進みます。ちなみにHakko製です。
スピーカの不良もこれで完了です!
③ メイン基板が動かない
これが、今回の修理の本命です。
50年近くたっているので、CPUも含めて何か部品の故障でしょうか?
ネットで調査して、修理情報と回路図を手に入れました。
使用しているCPU TMS1000:4 bit
-
プログラムROM (マスク):2K × 4 bit = 1024バイト
-
RAM:64 × 4 bit = わずか256 bit = 32バイト
-
しかもROMはマスクROMなので、製品になったら書き換え不能
-
入出力もこの1個のICで担当
今の感覚からすると「こんなのでよくこのゲームを作れたな!」というスペックです。
最初のバージョンは、TIの4bitマイコン TMS1000とドライバIC SN75494を使っています。
のちに、TMS1000 はASICのMB4850に置き換わるので、この最初のバージョン REV Aの
基板は貴重です。
Saving a Simon
さて修理ですが、マイコンを使った基板で常道の・リセット確認、
・クロック確認、・IO動作確認 の順番に行っていきましょう。
・リセット信号
このCPUはPMOSプロセスなので、+9VがVss、GNDがVddです。
したがって、RESET信号も0Vから一旦9Vになって、また0Vになります。
9ピン、INIT端子がリセット信号です。 動作はOKでした。
・クロック信号
資料によると、クロックは300kHz~400kHzとのことでした。
オシロで見ると18ピン、19ピンのクロックは315kHzで、これも
正常に動作していました。
・IO信号
資料によると、IOはスキャン入力です。
最初の3個はLast, Start, Longestのスイッチです。
23ピンからパルスが出て、それぞれ5ピン、6ピン、7ピンに入ります
オシロで見ると23ピンからパルスが出て、Startを押すと、5ピンに信号
が出ました。しかしよく見ると、なにも押してないのに7ピンにスキャン
信号が常時でています。これはおかしいですね。
スイッチのところを見ると、7ピンに相当するLongestのスイッチがへ たって常時接触しているようです。
裏のハンダ付けを溶かして、少し前に接点を動かしました。
無事、スイッチを押さないと接触しないようになりました。
この状態でSartを押すと、ピーッと音が鳴って、右下が光りました!
やった、動きました!
起動後にキーをスキャンして、Start信号がはいるのをポーリングして
いるのに、別の信号が入ってました。おそらく、シーケンスが先に進ま
なかったので動作しなかったのでしょう。
Youtubeに動作している動画をあげました。
4色キーの反応が悪いいですが、そこは古いおもちゃの味として勘弁してもらいましょう!
(基板単体ではスイッチ動作に問題がないのですが)
これで、ウン十年前にLAで見た、アメリカ生まれのマイコン内蔵電子おも
ちゃがまた動いているのをみることができて、大感激です!
あとは組み立てて、欠落した電池ボックスを作り替えて、依頼主に渡す
だけですね。
これでファイナルアンサーです。
修理完了、お疲れ様です!
④ メモ(次回の自分へ)
-
マイコンはIntelのi4004が1971年にでたのが最初と思ってました。
TIのTMSxxシリーズはROM RAMが入った最初のマイクロコントローラ
ということのようです。あのETに出てきたSpeak & Spellにも内蔵されているそうです。
-
Simonのプログラム解析はこちらのChatGPTのログを参照ください。
https://chatgpt.com/share/6abf6ddc-f664-83ee-ba71-74830af47067 -
さらにGeekなことに、サイモンのCPUの殻割りをして、TMS1000のコアの写真を撮って、ROMを吸い出し逆アセンブルして、リバースエンジニアリングをしたつわものがいるそうです。恐れ入りました!
Simon Die Shot -
修理手順は他ドクターや愛好家への共有と再組み立てのために写真で残す。