ぽちルンルン部屋 -34ページ目

全ての診療科の医師が診断し、治療しなければならない慢性便秘症。前々回の「臨床推論に使える乙女便秘とフレイル便秘」では、腹部単純X線検査を活用して、便秘の病態(重症度)を確認した上で治療することの大切さを述べた。前回の「経口薬処方だけで帰すと危険な『鋳型便秘』」では、直腸に硬便が詰まっているときに漫然と経口薬の処方で済ますのではなく、初期対応として摘便浣腸をすべきであることを解説した。

 今回は、初期対応を終えた後の処方の組み立て方と、服薬指導のコツを述べる。

徐々に強い薬に切り替えていく

 この数年、慢性便秘症を対象にした機序の異なる新薬が相次いで発売された。昔は酸化マグネシウムなどの塩類下剤とピコスルファートなどの刺激性下剤、漢方薬ぐらいしかなかったが、上皮機能変容薬のルビプロストン(商品名アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)、胆汁酸トランスポーター阻害薬のエロビキシバット(グーフィス)、欧米では第一選択で使用されているポリエチレングリコール(モビコール)などが立て続けに登場している(表1)。

表1 慢性便秘症の機序と主な治療薬、1日当たり薬価(主要な薬剤で添付文書の記載を基に概算)

○プロバイオティクス
酪酸菌配合剤(ビオスリー他)……17~34円

○腸内浸透圧の亢進
酸化マグネシウム……34円
ポリエチレングリコール(モビコール)……170円
ラクツロース(モニラック他、小児の便秘が適応)……32~130円

○腸管蠕動運動の亢進
ピコスルファート(ラキソベロン他)……16~23円
センナ(アローゼン他)、センノシド(プルゼニド)……6~14円

○胆汁酸トランスポーターの阻害
エロビキシバット(グーフィス)……211円

○上皮機能の変容
ルビプロストン(アミティーザ)……244円
リナクロチド(リンゼス)……88~177円

○漢方薬
潤腸湯……65円
麻子仁丸……50円

 これらの薬をどう使っていくか。症状や病態に応じた処方パターンに落とし込む「使い分け」を考えている医師も多いとは思うが、筆者は通り一遍ではなく、患者さんに合わせた「テイラーメード」の処方を行っている。便秘薬によって効果が大きく異なるし、同じ薬でも人によって効き方が違うからだ。

 テイラーメード処方のやり方は次の通り。基本的な考えとしては、作用が穏やかな薬から始め、徐々に強い薬に切り替えていく方法をとる(図1)。また、新薬は従来の薬と比べて価格に結構差がある。そのため、治療開始は薬価の安い従来薬で行い、改善がなければ新薬に切り替えるようにしている。多くの場合、最初に選択する薬は酸化マグネシウムとプロバイオティクス。これで約半数の患者はコントロール可能だ。

図2 便秘の程度別各種薬剤の適応スペクトラム(筆者の考え)
上の薬から試して、2週間後、症状が改善しなかったら下の薬を追加、もしくは以前の薬を休止して下の薬に切り替えていく。ピコスルファートとポリエチレングリコールは、後述する“リセット薬”の位置付けだが、ポリエチレングリコールは14日の投与期間制限が解除されたため、定期薬としても使い始めている。

 十分な効果が得られなければ適宜、薬を切り替えたり追加したりするが、そこで留意すべきなのは「下痢にさせない」ことだ。患者は一度下痢を起こすと「便秘薬が怖い」と感じ、アドヒアランスが低下する。そのため、ルビプロストンやリナクロチドなど切れ味が強い薬では、まず1日1錠だけ処方し、効果が十分でなければ増量する。 

 特にリナクロチドは、添付文書の用量では1日2錠(0.5mg)とされているが、ほとんどの場合1錠で十分である。患者に合う薬が見つかるまでは2週間ごとに受診させ、便秘がコントロールできる薬の組み合わせが見つかれば4~6週間処方にして、患者の通院の手間を減らす。このとき、患者の症状の訴えだけでなく実際にどんな硬さの便が腸管内にどれだけたまっているか、客観的に見極めて治療効果を判断することが大事。そのために腹部X線検査を活用してほしい(前回前々回のコラムを参照のこと)。

患者の治療参加で真のテイラーメードに

 テイラーメード処方では、患者への服薬指導も重要になる。患者自身が便の状態を把握し、もし緩ければ、薬を適宜減量できるようにするのだ。また、生活習慣に合った服薬タイミングの調整も柔軟に行っていいことを伝えておく。

 例えば、高校生が昼のお弁当を食べた後、便秘薬を飲むとなると、どうしても周りの目が気になるだろう。そういう場合は、「自宅で朝晩のみ内服してもよい」と伝える。それで平日、多少便秘気味になるのであれば、週末だけ1日3回内服するという人もいる。一方、便秘の治療を続けると便通が改善してくる人がいる。その場合は、2日に1回服用するのでもよい。ゴールは便秘が解消することではなく、患者さんが便秘をコントロールできるようにすることだ。それぞれの維持療法を見つけてもらうことが大事になる。

 便秘という疾患は、便をうまく出せない状態が続いても、わざわざ医療機関を受診するという行動にはつながりにくいもの。適切な治療をしないと硬い便が直腸付近で詰まり、さらに排便が困難になる。そういう人には、“リセット薬”が必要になる。

 具体的にはピコスルファートなどの刺激性下剤を頓用で処方しておき、便が数日間出ていないときに服用してもらう。患者が会社員や学生であれば、便が緩くなり過ぎると困る平日を避けて、週末にリセット薬を飲んでもらうようアドバイスしてもよい。もちろんリセット薬として浣腸を選択してもよいが、これは慣れないと自分で注入できないし、心理的に抵抗がある患者さんが多いため、実際に選ぶケースは少ない。14日の投与期間制限があった(2019年12月に解除)ポリエチレングリコール製剤も、筆者はリセット薬の位置付けで使っていたが、患者によってはこの薬だけで排便管理ができるようになり、定期服薬につながることもある。

酸化マグネシウムとPPIの併用は注意!

 最後に、処方機会が最も多い酸化マグネシウムの使い方を補足する。多数の便秘患者を診ている筆者でも経験したことがほとんどないが、酸化マグネシウムは高マグネシウム血症を引き起こすリスクがある。そのため、4~6カ月ごとに行う定期採血で、血清マグネシウムを測定しておく必要がある。

 また、酸化マグネシウム(MgO)が体内で作用するためには、酸が必要だ。そのため、H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用している患者では効果が減弱してしまう。酸化マグネシウムを服用すると、体内で以下の反応が起きる。

(1)胃内で胃酸(HCl)と反応
MgO + 2HCl → MgCl2 + H2O

(2)腸内で膵液(NaHCO3)と反応
MgCl2+2NaHCO3 → Mg(HCO3)2 + 2NaCl

 こうしてできたMg(HCO3)2や、さらに分解されてできたMgCO3が腸管内への水分滲出を誘導し、緩下効果をもたらす。制酸作用のある薬を服用するなどして低酸状態になっている患者に投与する際は注意してほしい。

 次回は、服薬指導と一緒に行う便秘を解消するための生活指導に関して、「ある迷信」を検証する。

1日0.5mgという低用量のコルヒチン投与により、複合心血管イベントの発生を有意に抑制されることが明らかになった。COLCOT試験の結果で、カナダ・Montreal Heart InstituteのJean-Claude Tardif氏らが米国心臓協会学術集会(AHA2019、11月16~18日、開催地:フィラデルフィア)で発表した。

 動脈硬化性疾患における慢性炎症への介入については、インターロイキン1β抗体を用いたCANTOS試験でその有効性が報告された(関連記事)。一方、メトトレキサートを用いたCIRT試験は有効性を示すことができなかった。低用量コルヒチンの冠動脈疾患患者に対する効果は、2013年に発表されたLoDoCo試験で検証されているが、同試験は小規模でオープン試験だったことから、今回Tardif氏らは二重盲目ランダム化試験による検討を行った。

 対象は、30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)施行後で、スタチンなどの適切な薬物治療を受けている18歳以上の患者。NYHA3~4度、左室駆出率(EF)35%以下の心不全、過去3カ月以内の脳卒中の既往がある患者などは除外した。12カ国167施設から登録された4745例を、低用量のコルヒチン(0.5mg/日)投与群(2366例)またはプラセボ投与群(2379例)にランダムに割り付け、22.6カ月間(中央値)追跡した。

 主要評価項目は複合心血管イベント(MACE:心血管死亡、心停止による蘇生術施行、心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建術を要した狭心症による緊急入院)の初発、副次評価項目は主要評価項目を構成する各イベントなどとした。

 ベースラインの患者特性は平均年齢61歳、女性19%、糖尿病合併率20%、心筋梗塞後13.5日後、PCI施行率93%などだった。薬物治療の実施率は、アスピリンが99%、アスピリン以外の抗血小板薬が98%、スタチンが99%だった。

 主要評価項目のMACE初発はコルヒチン群で131例(5.5%)、対照群170例(7.1%)に発生、コルヒチン群のリスクは対照群に比べ23%有意に減少した(ハザード比:0.77、95%CI[95%CI]:0.61-0.96)。副次評価項目であるMACEを構成する単独のエンドポイントに関して、心血管死亡のHRは0.84(95%CI:0.46-1.52)、心筋梗塞のHRは0.91(95%CI:0.68-1.21)、心停止による蘇生術施行のHRは0.83(95%CI:0.25-2.73)と有意差は認められなかったが、脳卒中と冠動脈血行再建を要する狭心症での緊急入院はコルヒチン群で有意にリスクが減少した。再発も含めたMACEの総発生も、34%の有意減少を示した(HR:0.66、95%CI:0.51-0.86)。

 安全性に関して、コルヒチンの有害事象で最も多いとされる下痢は両群間で有意差はなく、肺炎の発生がコルヒチン群で21例(0.9%)、対照群で9例(0.4%)とコルヒチン群でわずかに多かった(P=0.03)。

 Tardif氏は今回の試験の限界として、追跡期間が約23カ月と短期間であったことや、個々のエンドポイントやサブグループの解析が十分でない点をを挙げながらも、「コルヒチンは心筋梗塞直後の炎症を軽減し、心血管転帰のリスクを減らすための有効な治療法になるだろう」とまとめた。

オランダLeiden大学医療センターのFeline P B Kroon氏らは、変形性手関節症で指節間関節に疼痛と炎症を起こした患者を対象に、経口プレドニゾロン10mgを6週間投与するランダム化比較試験を行い、プラセボ群に比べ実薬群では疼痛軽減と機能改善が見られたと報告した。結果をLancet誌電子版に2019年11月11日に掲載された。

 変形性手関節症は一般的な関節疾患の1つで、疼痛、障害、QOLの低下などを引き起こすため、疾病負荷は高い。症状を軽減するために非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が広く用いられているが、高齢者では有害事象のリスクのために使用が制限されることがある。そこで著者らは、手関節に痛みがあり、滑膜に炎症が認められる患者に対する、短期的なプレドニゾロン投与の有効性と安全性を評価するRCTを計画した。

 The Hand Osteoarthritis Prednisolone Efficacy(HOPE)試験は、オランダのリウマチ外来2施設を受診した患者の中から参加者を募集した。組み入れ対象は、米国リウマチ学会の基準を満たす症候性の変形性手関節症で、遠位と近位の指節間関節(DIP/PIP)に炎症の徴候が見られる患者。4カ所以上のDIP/PIPに結節があり、1カ所以上のDIP/PIPに腫脹や紅斑があり、パワードプラ法で1カ所以上のDIP/PIPが血流シグナル陽性または超音波検査でグレード2以上の滑膜肥厚があり、100mmビジュアルアナログスケール(VAS)で30mm以上の痛みがあり、48時間のNSAIDsウォッシュアウト期間中に再燃により痛みが20mm以上悪化する患者とした。NSAIDsが禁忌の患者はアセトアミノフェンで代用した。

 参加者登録の進行が遅かったため、NSAIDsウォッシュアウト時の再燃以外の条件は満たしており、痛みが100mmVASで40mm以上だった人々も途中から組み入れた。除外するのは、90日以内に免疫修飾薬を使用した患者、慢性炎症性リウマチ疾患や乾癬患者、コントロールできない癌や感染症を合併している患者など。

 条件を満たした患者は、1対1の割合でプレドニゾロン群またはプラセボ群に割付けた。使用薬は5mg/mLのプレドニゾロン水溶液と、見た目、香り、味が同一のプラセボ水溶液で、参加者には1日1回2mLの服用を6週間継続してもらった。その後は2週間かけて徐々に薬を減量していき、9~14週には使用を中止した。参加者には服薬状況を記録してもらうよう依頼した。痛みと炎症が強い場合のレスキュー薬として、1日3000mgまでのアセトアミノフェンの使用は許可した。ベースラインと2週後、4週後、16週後に、訓練を受けた看護師が関節の状態を確認し、握力を測定し、VASとレスキュー薬の使用状況を聴取した。

 過去6カ月間に撮影していなければ、ベースラインで手のX線写真を撮った。超音波による滑膜肥厚と血流シグナルは、ベースラインと6週後、14週後に検査した。ベースラインと6週後にはMRI造影検査も行うことにした。

 主要評価項目は、6週後の指の痛みとし、100mmVASを用いて評価した。副次評価項目は8週後と14週後の指の痛み、6週後と14週後のOutcome Measures in Rheumatology-Osteoarthritis Research Society International基準、Functional Index for Hand Osteoarthritis、SF-36、画像診断による変化などとした。

 2015年12月3日から2018年5月31日の期間に、149人の患者をスクリーニングして、条件を満たした92人が試験に参加し、46人ずつプレドニゾロン群とプラセボ群に割付けた。14週後まで追跡を完了したのは、両群とも42人(91%)だった。6週後の時点で、プレドニゾロン群44人中9人(20%)とプラセボ群42人中16人(38%)が、過去2週間にアセトアミノフェンを使用していたと報告した。オッズ比は0.43(95%信頼区間0.16-1.13)で差は有意ではなかった。

 ベースラインから6週後までの指の痛みのVASの変化は、プレドニゾロン群が-21.5mm、プラセボ群は-5.2mmで、平均差は-16.5mm(95%信頼区間-26.1から-6.9mm)になった。年齢と性別を補正した平均差は-16.4mm(-26.0から-6.9mm)だった。

 割り付け薬の使用終了後の痛みのVASを比較すると、8週時点では-8.5mm(-18.5から1.5mm)で有意差はなくなり、14週時点では6.6mm(-3.7から16.9mm)になっていた。

 副次評価項目に設定された、疼痛に関する指標の全てと、機能に関する指標の多くは、6週時におけるプレドニゾロンの優越性を示していた。握力や疲労感、SF-36の精神的健康のスコアなどには有意差は見られなかった。主要評価項目の場合と同様に、副次評価項目も、プレドニゾロンの減量開始後には有意差を示さなくなった。

 6週時点の画像に基づく評価では、滑膜肥厚の程度を示すスコアはプレドニゾロン群の方が良好だった。一方で、パワードプラシグナル(PDS)スコアやMRIによる骨髄病変には差は見られなかった。14週時点では、滑膜肥厚の程度を示すスコアもベースラインの値に戻っており、差は見られなくなっていた。 

 重篤ではない有害事象は、両群とも19人の患者に43件起こっていた。重篤な有害事象は5件報告され、心筋梗塞がプレドニゾロン群に1件、あとの4件はプラセボ群に発生していた。内容は、感染を起こした下肢の外傷性血腫で手術が必要だった患者、腸の手術が必要だった患者、心房細動でペースメーカー植え込みが必要だった患者、子宮筋腫により子宮摘出術が必要だった患者だった。

 有害事象により割り付け薬の使用を中止した患者が4人(4%)いた。プレドニゾロン群の1人は心筋梗塞を発症した患者で、残りの3人はプラセボ群の患者だった(下肢の外傷性血腫で手術を受けた患者、腸の手術を受けた患者、膝にライム関節炎が生じた患者)。

 これらの結果から著者らは、手指に疼痛があり炎症の徴候が見られる患者には、10mgプレドニゾロンの6週間の投与は有効で安全だったと結論している。変形性手関節症患者の症状は変動することが多いため、再燃時の短期的治療に役立つと考えられる。この研究はDutch Arthritis Societyの支援を受けている。