オランダLeiden大学医療センターのFeline P B Kroon氏らは、変形性手関節症で指節間関節に疼痛と炎症を起こした患者を対象に、経口プレドニゾロン10mgを6週間投与するランダム化比較試験を行い、プラセボ群に比べ実薬群では疼痛軽減と機能改善が見られたと報告した。結果をLancet誌電子版に2019年11月11日に掲載された。

 変形性手関節症は一般的な関節疾患の1つで、疼痛、障害、QOLの低下などを引き起こすため、疾病負荷は高い。症状を軽減するために非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)が広く用いられているが、高齢者では有害事象のリスクのために使用が制限されることがある。そこで著者らは、手関節に痛みがあり、滑膜に炎症が認められる患者に対する、短期的なプレドニゾロン投与の有効性と安全性を評価するRCTを計画した。

 The Hand Osteoarthritis Prednisolone Efficacy(HOPE)試験は、オランダのリウマチ外来2施設を受診した患者の中から参加者を募集した。組み入れ対象は、米国リウマチ学会の基準を満たす症候性の変形性手関節症で、遠位と近位の指節間関節(DIP/PIP)に炎症の徴候が見られる患者。4カ所以上のDIP/PIPに結節があり、1カ所以上のDIP/PIPに腫脹や紅斑があり、パワードプラ法で1カ所以上のDIP/PIPが血流シグナル陽性または超音波検査でグレード2以上の滑膜肥厚があり、100mmビジュアルアナログスケール(VAS)で30mm以上の痛みがあり、48時間のNSAIDsウォッシュアウト期間中に再燃により痛みが20mm以上悪化する患者とした。NSAIDsが禁忌の患者はアセトアミノフェンで代用した。

 参加者登録の進行が遅かったため、NSAIDsウォッシュアウト時の再燃以外の条件は満たしており、痛みが100mmVASで40mm以上だった人々も途中から組み入れた。除外するのは、90日以内に免疫修飾薬を使用した患者、慢性炎症性リウマチ疾患や乾癬患者、コントロールできない癌や感染症を合併している患者など。

 条件を満たした患者は、1対1の割合でプレドニゾロン群またはプラセボ群に割付けた。使用薬は5mg/mLのプレドニゾロン水溶液と、見た目、香り、味が同一のプラセボ水溶液で、参加者には1日1回2mLの服用を6週間継続してもらった。その後は2週間かけて徐々に薬を減量していき、9~14週には使用を中止した。参加者には服薬状況を記録してもらうよう依頼した。痛みと炎症が強い場合のレスキュー薬として、1日3000mgまでのアセトアミノフェンの使用は許可した。ベースラインと2週後、4週後、16週後に、訓練を受けた看護師が関節の状態を確認し、握力を測定し、VASとレスキュー薬の使用状況を聴取した。

 過去6カ月間に撮影していなければ、ベースラインで手のX線写真を撮った。超音波による滑膜肥厚と血流シグナルは、ベースラインと6週後、14週後に検査した。ベースラインと6週後にはMRI造影検査も行うことにした。

 主要評価項目は、6週後の指の痛みとし、100mmVASを用いて評価した。副次評価項目は8週後と14週後の指の痛み、6週後と14週後のOutcome Measures in Rheumatology-Osteoarthritis Research Society International基準、Functional Index for Hand Osteoarthritis、SF-36、画像診断による変化などとした。

 2015年12月3日から2018年5月31日の期間に、149人の患者をスクリーニングして、条件を満たした92人が試験に参加し、46人ずつプレドニゾロン群とプラセボ群に割付けた。14週後まで追跡を完了したのは、両群とも42人(91%)だった。6週後の時点で、プレドニゾロン群44人中9人(20%)とプラセボ群42人中16人(38%)が、過去2週間にアセトアミノフェンを使用していたと報告した。オッズ比は0.43(95%信頼区間0.16-1.13)で差は有意ではなかった。

 ベースラインから6週後までの指の痛みのVASの変化は、プレドニゾロン群が-21.5mm、プラセボ群は-5.2mmで、平均差は-16.5mm(95%信頼区間-26.1から-6.9mm)になった。年齢と性別を補正した平均差は-16.4mm(-26.0から-6.9mm)だった。

 割り付け薬の使用終了後の痛みのVASを比較すると、8週時点では-8.5mm(-18.5から1.5mm)で有意差はなくなり、14週時点では6.6mm(-3.7から16.9mm)になっていた。

 副次評価項目に設定された、疼痛に関する指標の全てと、機能に関する指標の多くは、6週時におけるプレドニゾロンの優越性を示していた。握力や疲労感、SF-36の精神的健康のスコアなどには有意差は見られなかった。主要評価項目の場合と同様に、副次評価項目も、プレドニゾロンの減量開始後には有意差を示さなくなった。

 6週時点の画像に基づく評価では、滑膜肥厚の程度を示すスコアはプレドニゾロン群の方が良好だった。一方で、パワードプラシグナル(PDS)スコアやMRIによる骨髄病変には差は見られなかった。14週時点では、滑膜肥厚の程度を示すスコアもベースラインの値に戻っており、差は見られなくなっていた。 

 重篤ではない有害事象は、両群とも19人の患者に43件起こっていた。重篤な有害事象は5件報告され、心筋梗塞がプレドニゾロン群に1件、あとの4件はプラセボ群に発生していた。内容は、感染を起こした下肢の外傷性血腫で手術が必要だった患者、腸の手術が必要だった患者、心房細動でペースメーカー植え込みが必要だった患者、子宮筋腫により子宮摘出術が必要だった患者だった。

 有害事象により割り付け薬の使用を中止した患者が4人(4%)いた。プレドニゾロン群の1人は心筋梗塞を発症した患者で、残りの3人はプラセボ群の患者だった(下肢の外傷性血腫で手術を受けた患者、腸の手術を受けた患者、膝にライム関節炎が生じた患者)。

 これらの結果から著者らは、手指に疼痛があり炎症の徴候が見られる患者には、10mgプレドニゾロンの6週間の投与は有効で安全だったと結論している。変形性手関節症患者の症状は変動することが多いため、再燃時の短期的治療に役立つと考えられる。この研究はDutch Arthritis Societyの支援を受けている。