1日0.5mgという低用量のコルヒチン投与により、複合心血管イベントの発生を有意に抑制されることが明らかになった。COLCOT試験の結果で、カナダ・Montreal Heart InstituteのJean-Claude Tardif氏らが米国心臓協会学術集会(AHA2019、11月16~18日、開催地:フィラデルフィア)で発表した。

 動脈硬化性疾患における慢性炎症への介入については、インターロイキン1β抗体を用いたCANTOS試験でその有効性が報告された(関連記事)。一方、メトトレキサートを用いたCIRT試験は有効性を示すことができなかった。低用量コルヒチンの冠動脈疾患患者に対する効果は、2013年に発表されたLoDoCo試験で検証されているが、同試験は小規模でオープン試験だったことから、今回Tardif氏らは二重盲目ランダム化試験による検討を行った。

 対象は、30日以内に心筋梗塞を発症し、経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)施行後で、スタチンなどの適切な薬物治療を受けている18歳以上の患者。NYHA3~4度、左室駆出率(EF)35%以下の心不全、過去3カ月以内の脳卒中の既往がある患者などは除外した。12カ国167施設から登録された4745例を、低用量のコルヒチン(0.5mg/日)投与群(2366例)またはプラセボ投与群(2379例)にランダムに割り付け、22.6カ月間(中央値)追跡した。

 主要評価項目は複合心血管イベント(MACE:心血管死亡、心停止による蘇生術施行、心筋梗塞、脳卒中、冠血行再建術を要した狭心症による緊急入院)の初発、副次評価項目は主要評価項目を構成する各イベントなどとした。

 ベースラインの患者特性は平均年齢61歳、女性19%、糖尿病合併率20%、心筋梗塞後13.5日後、PCI施行率93%などだった。薬物治療の実施率は、アスピリンが99%、アスピリン以外の抗血小板薬が98%、スタチンが99%だった。

 主要評価項目のMACE初発はコルヒチン群で131例(5.5%)、対照群170例(7.1%)に発生、コルヒチン群のリスクは対照群に比べ23%有意に減少した(ハザード比:0.77、95%CI[95%CI]:0.61-0.96)。副次評価項目であるMACEを構成する単独のエンドポイントに関して、心血管死亡のHRは0.84(95%CI:0.46-1.52)、心筋梗塞のHRは0.91(95%CI:0.68-1.21)、心停止による蘇生術施行のHRは0.83(95%CI:0.25-2.73)と有意差は認められなかったが、脳卒中と冠動脈血行再建を要する狭心症での緊急入院はコルヒチン群で有意にリスクが減少した。再発も含めたMACEの総発生も、34%の有意減少を示した(HR:0.66、95%CI:0.51-0.86)。

 安全性に関して、コルヒチンの有害事象で最も多いとされる下痢は両群間で有意差はなく、肺炎の発生がコルヒチン群で21例(0.9%)、対照群で9例(0.4%)とコルヒチン群でわずかに多かった(P=0.03)。

 Tardif氏は今回の試験の限界として、追跡期間が約23カ月と短期間であったことや、個々のエンドポイントやサブグループの解析が十分でない点をを挙げながらも、「コルヒチンは心筋梗塞直後の炎症を軽減し、心血管転帰のリスクを減らすための有効な治療法になるだろう」とまとめた。