吾妻 ひでお
逃亡日記

筆者自らが本書の中で述べている通り「失踪日記」の便乗本で、インタビューが中心となっています。
筆者の生い立ちやこれまでの漫画家生活など、吾妻ひでおファンには面白いと思いますが、やはりマンガで読みたかった内容です。
巻頭のマンガは面白かったです。

三輪 太郎
ポル・ポトの掌

第1回日経小説大賞佳作。
株のディーラーだった主人公は、相場で莫大な財産を築き、31歳のときに引退を決意。
アメリカで有名ヘッジファンドのディーラーとして名をはせた幼なじみ修一が、内戦の続くカンボジアで事故死したという情報を得てカンボジアに向かう。
死の真相を探る中でポル・ポト(と思われる人物)と合い、会話を交わすのがヤマ場となります。
相場についてもカンボジアについてもよく書けていると思うのですが、その両者が交わらず、主人公が相場をやっていた必然性が伝わってきません。
題材は面白く、文章も読みやすいのですが、十分活かされていない感じがしました。

伊園 旬
ブレイクスルー・トライアル ~第5回『このミステリーがすごい!』大賞 大賞受賞作~

第5回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。
セキュリティ会社主催の賞金1億円の一大イベント「ブレイクスルー・トライアル」に参加する主人公たち、宝石泥棒グループ、ライバル会社社員や宝石泥棒を追う私立探偵、頑固一徹の管理人などが登場します。
認証システムなどの知識は豊富なのだと思いますが、登場人物の関係などがちょっとご都合主義すぎる感じがします。
登場人物の設定などを工夫すればせっかくの題材をもう少しうまく活かせたのでは…と思いました。

レイ A.クロック, ロバート・アンダーソン, 野崎 稚恵
成功はゴミ箱の中に―レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男-マクドナルド創業者

マクドナルド王国を一代で築き上げた事業家レイ・クロックの足跡を追った半生記。
ピアニストや紙コップのセールス、マルチミキサーのセールスなどを経て、52歳からマクドナルドを立ち上げ、大企業まで育て上げたその努力に素直に驚きます。
マクドナルドのシステムはすごいと思うのですが、そうしたところよりも人材や不動産開発、新商品開発などにページを割いているのはそこに筆者の関心があるからでしょう。
最後にソフトバンクの孫氏とユニクロの柳井氏の対談、柳井氏の解説が付録としてついてますが、これも参考になります。
仕事に成功するには、情熱と努力という当たり前のことを強く感じました。

矢次 信一郎
ファイリング&整理術

著者は、キングジムのファイリング研究室室長ということで、日頃なかなか整理整頓できないことを省みて、読んでみたのですが、基本的には目新しいことは何も書いてませんでした。
本を読んで整理できるかというよりも実行できるかどうかが問題のようです。
全くファイリングの知識のない人には意味のある本かもしれませんが…。

ビル・エモット, ピーター・タスカ
日本の選択

「日はまた昇る」の著者ビル・エモットとトップストラテジストのピーター・タスカの対談です。
二人とも日本を良く知る英国人で、これからの日本について、好意的な応援者というスタンスで「日本の選択肢」について話を進めています。
国際貢献の方法、アジアの金融センターとなるべきこと、グローバル化すべきこと、「賢明な投資家」となるべきことなど、その可能性を評価しながら提言をしています。
特に中国との関係では、やはり価値観の問題として、二人とも、中国が存在感を増していく世界よりも、日本がそれを抑える力を持つ世界のほうが望ましいと考えているようです。
日本人の書く日本の将来像よりも楽観的な感じがしますが、それはまだ日本人が「自信」を持っていないことと、二人の母国である英国がそれをうまくやってきているということから来ているようです。

黒木 亮
カラ売り屋

「カラ売り屋」「村おこし屋」「エマージング屋」「再生屋」の4編が収められています。
どれも金融知識を生かした著者らしい作品です。
それぞれタイトル通りの内容で、「カラ売り屋」はカラ売り専門ファンドを留学時代の友人と立ち上げた元官僚が主人公、「村おこし屋」は地元に帰った元外資系証券マンの目から、村おこしを利用して金儲けをしようとする高校時代の友人を描いたもの、「エマージング屋」は邦銀から外資に移ったエマージング専門家を描いたもの、「再生屋」は老舗ホテルの再生に奔走する若手弁護士を主人公にしたものです。
著者の専門である国際金融を描いた「エマージング屋」が一番生き生きと描かれています。

林 和人
香港大富豪のお金儲け 7つの鉄則

著者は、日本の証券会社の香港現地法人で華僑の大金持ちと出会い、その後、香港で成功し、現在は中国株のインターネット証券の経営者です。
本書は著者が出会った香港の大金持ちや著者の経験から「7つの鉄則」を説いています。
「7つの鉄則」とは「経済的合理性を第一に考える」「お互いに儲ける」「お金に感情をはさまない」「資産は不労所得で増やす」「一極集中こそ王道」「国境を越えて投資する」「つねに三年先を検証する」の7つです。
「一極集中こそ王道」はちょっと誤解を招きそうな表現ですが、あとは基本的には肯けるものです。
特に否定するつもりはありませんが、一冊の本にするほどの内容かなぁという感じはしました。

広瀬 康令
金融マーケティングとは何か これがプロの戦略だ!

著者は、シティバンク、フィデリティ投信、チューリッヒ保険、東京スター銀行を経て現在はドイチェ・アセット・マネジメントで投信マーケティングのディレクターを務めています。
各金融機関でマーケティングを担当し、それぞれ成功してきました。
本書はマーケティング理論ではなく、著者がこれまでやってきたことを綴ったものですが、それなりに面白く読めました。
夕刊紙や折込チラシの効力などは意外でした。
最終的にはマーケティングを成功させる最大のポイントは「やる気」であるという著者の結論も納得できるものがありました。

清水 良典
2週間で小説を書く!

本書は、冒頭でも書かれている通り、「2週間で小説を書く」のではなく、「2週間で小説を書く基礎力をつける」ための本です。
内容は具体的でもあり、また、小説を書くだけでなく、小説を読む際にも参考になる内容だと思います。
実践練習として第1日から14日目まであり、それぞれ1日では習得できるものではないですが、確かにこうした訓練をすればいいのではないかと思わせるものです。
実践練習の内容は1日目から順番に次の通り。
「リレー小説」「断片から書く」「最初の記憶を書く」「BGM物語」「人称を変える」「一瞬を書く」「人物スケッチ」「コップを眺める」「なりすまし文体」「指先の物語」「夢を書く」「職場を書く」「三題噺」「何事も起こらない普通の日」
著者が言うように、誰にでも小説を書くことはできそうですが、それを続けることが才能だと思います。