駒田 史朗
警視庁少年課事件ファイル

元警視庁刑事が書いた少年事件の最前線報告です。
ネットを通じた架空暴走族、名門中学生の作った時限爆弾、おれおれ詐欺の手下、連続婦女暴行の性犯罪、オヤジ狩りなど、実際にあった事件を描いています。
ニュース等でいろいろ見聞きしているせいか、意外感はありません。
やっぱりそんなもんなのかな、という感じですが、犯人の少年少女の罪悪感のなさが印象的です。

白川 由紀
もっと世界を、あたしは見たい

学生時代に留学していたネパールで、ドイツから陸路10か国の国境を越えて車でやってきた人々に出会い、大陸街道に“国際路線バス”を走らせることを企画立案、「ユーラシア大陸横断バス」「アフリカ大陸縦断トラック」「南米大陸縦断バス」を実現させた著者の半生記(といっても1969年生まれですが)です。
「やりたいことをやる」ということの大切さを素直に感じることができます。
いったんOLになった後、会社をやめ、「ユーラシア大陸横断バス」を実現させてしまう行動力には感心します。
もちろん、著者も一般的な生活を外れてしまうことや将来への不安は持っているわけですが、「死んだときにバンザイできるように」やりたいことを実現させていきます。
読んでいて、ポジティブになれる本ですが、自分を省みて、やりたいことをちゃんとやっているか自問すると、今のままでいいのか、後悔しないか、考えてしまいます。

ビル メイソン, リー グルエンフェルド, Bill Mason, Lee Gruenfeld, 田村 明子
宝石泥棒の告白―怪盗メイソン

30年間で40億円相当の宝石を盗んだ宝石泥棒の実話です。
用意周到に事前準備を行い、警備の厳重な高級マンションも警備員の心理の隙をついて侵入し、マフィアの親分、芸能人、大金持ちなどから宝石を盗み出します。
主義は、人を傷つけないこと、単独で行うこと。
但し、「単独で行うこと」は破ってしまったことがあり、それが元で警察に目をつけられてしまいます。
刑務所には入れられましたが、窃盗ではついに起訴されませんでした。
最後は改心するわけですが、映画のような華麗な泥棒です。

岸田 秀, 原田 純
親の毒 親の呪縛

岸田秀は「ものぐさ精神分析」で有名な精神分析学者。
学生時代から著書を読んでいますが、「人間は本能が壊れた動物である」という「唯幻論」を一貫して説いています。
久しぶりに岸田秀の本(対談ですが)を読んで、変わらないなぁと思いました(悪い意味ではありません)。
原田純(女性)は知らなかったのですが、「ねじれた家 帰りたくない家」の著書がある出版社の経営者です。
「正義」を振りかざす父親とそれに従いのちに反発する母親の両方とぶつかって苦しんだということで、母親との関係に苦しんだ岸田秀とはまた別の形で親との関係に苦しんだひとです。
本書が親子関係に悩む人にとって特効薬になるとは思いませんが、「親が子を当然に愛するものではない」ということを認識することは必要でしょう。
対談ということもあり、必ずしも論理的でないところもありますが、示唆に富む本だと思います。


斉藤 寅
世田谷一家殺人事件―侵入者たちの告白

2000年12月30日に起こった世田谷一家殺人事件、犯人はまだ捕まっていませんが、本書はその犯人像に迫っています。
どこまで真実に迫ったのかはわかりませんが、輪郭には迫っているのだと思います。
本書を読む限りでは、アジア系外国人のクリミナル・グループというのはほぼ間違いないのでしょう。
一橋文哉の「三億円事件」や「闇に消えた怪人」同様、ミステリーを読んでいるような面白さがあります。
それとともに筆者が述べているように、いつ自らの身に降りかかってくるかもしれないという怖さも感じました。

石田 衣良
下北サンデーズ

下北沢の小劇団のサクセスストーリー。
テレビドラマの原作ですが、いかにもという感じです。
楽しく読めてしまうので、それはそれでいいのですが、読後に残るものがあまりありません。
名前の付け方も「松多劇場」「ザ・マンパイ」「おこさま企画」「田中ヤマダ」などちょっと安易な感じです。
演劇を主題にした最近の小説であれば恩田陸の「チョコレートコスモス」のほうが迫力がありました。

爆笑問題
爆笑問題の風説のルール―流行と事件のアーカイブ 2005~2006

2005年3月から2006年3月まで週刊プレイボーイに連載されたものをまとめた本です。
6冊目の単行本化ということです。
漫才形式で時事問題を扱ったもので、笑えるとともに1年前にはこんなニュースがあったんだ、と思い出すことができます。
「愛・地球博」や「小泉チルドレン」「つくばエクスプレス開通」などずいぶん前の話のような気がしますが、つい1年前のことなんですね。
最近は、バラエティやニュース番組の司会が多くてテレビで漫才を見る機会が少ない爆笑問題ですが、こういうネタで漫才をやるところを見たいと思います。

A. トフラー, H. トフラー, 山岡 洋一
富の未来 上巻
A. トフラー, H. トフラー, 山岡 洋一
富の未来 下巻

「第1部 革命」「第2部 基礎的条件の深部」「第3部 時間の再編」「第4部 空間の拡張」「第5部 知識への信頼」「第6部 生産消費者」「第7部 頽廃」「第8部 資本主義の将来」「第9部 貧困」「第10部 地殻変動」。
上下2巻、50章の大著です。
空間、時間、知識という軸から幅広い事象を網羅し、富の変化を捉えています。
これまでの著書の総まとめとも言える本で、工業社会(第2の波)に適した制度から、知識を中心とした社会(第3の波)に適した制度への変化が必要だと説いています。
法律、官僚制、教育とあらゆる制度について言及し、また国家以外の組織や生産消費者の重要性の増大など新たな組織、役割について述べています。
今起こっている変化、今後の世界の方向性について、知識を整理し、考えるのに優れた本だと思います。

『週刊東洋経済』村上ファンド特別取材班
トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇

ファンド設立から逮捕まで取材を行った東洋経済の記者が描いた村上ファンドの本です。
基本的には批判的な眼で書かれています。
インサイダー取引疑惑で逮捕されましたが、それ以前も縁故投資が多いことや、「プロ中のプロ」発言は「法解釈のプロ」の意味であったことなど、あまり知られていなかった事実も記されています。
「おわりに」で引用された先輩記者の「総会屋と何が違うのかわからない」との言葉もまさにその通りです。
巻末の逮捕直前の記者会見もあまり報道されていない部分まで収録されていて、村上氏の人間性(インチキなところ)が出ています。
読み物としても面白いですが、資本市場が大きく変わった時期のひとつの記録として、意味のあるものかな、と思います。

許 光俊
世界最高の日本文学 こんなにすごい小説があった

日本の短編小説12編を紹介している本です。
紹介されている小説は、岡本かの子「鮨」森鴎外「牛鍋」三島由紀夫「憂国」泉鏡花「外科室」武者小路実篤「お目出たき人」川端康成「眠れる美女」谷崎潤一郎「少年」江戸川乱歩「芋虫」嘉村磯多「業苦」夢野久作「少女地獄」小林多喜二「党生活者」岡本かの子「老妓抄」。
新作、話題作のほうに目を引かれ、昔の作品を読むことはあまりありませんが、やはりそういったものも読もうという気にさせられます。
特に、川端康成、泉鏡花の作品の紹介には心魅かれました。
「眠れる美女」は日本人としては必読書のようですね。ぜひ読んでみようと思います。