川端 康成
雪国

「世界最高の日本文学」を読んで、新しい本ばかりでなく「名作」を読んでみようと思い、まずはこの作品から読みました。
川端康成は恥ずかしながらこの年まで読んだことがありませんでした。
結論から言うと、この作品を読んだ限りでは、川端康成はぼくには向いていないようです。
確かに風景描写は美しく、日本語の表現も見事だと思います。
が、島村という人物がどうにもいい加減で、感情移入ができませんでした。
また駒子は健気だと思いますが、なぜ島村に魅かれるのかが理解できませんでした。

物語よりは文章の美しさと感性を感じる小説だとは思いますが、共感できないものはどうしようもないです。

バンガート めぐみ
南の島で、暮らそうか!

南の島に住みたい、と漠然と思っています。
この本は、鹿児島県の離島、沖縄での暮らしについて、家賃や仕事、島に移り住んだひとの暮らしなどを具体的に伝えています。
現実的なプランを持っているわけではないですが、まずは、短期滞在からスタートしてみるのが一番よさそうです。
まずは沖縄本島に住んで、他の島も回ってみるのがいいのかなぁ、なんて思います。
すぐには行動できなくても、南の島の気分が味わえる本です。

柴田 哲孝
TENGU

昭和49年秋、群馬県の寒村で起こった連続殺人事件。
人間業とは思えない他殺体の写真と唯一の犯人の物証である体毛。
当時はまだなかったDNA解析を行なうと、犯人は、人類にはあり得ない遺伝子を持っていた…。
当時取材を行った駆け出しの記者が2000年になって、鑑識を行った警察官からの連絡を機に、デスクを退いて、30年近く前の事件の真相を探ります。
犯人像はかなり始めのうちから想像がつくのと、ラストはたぶんそうなるだろうというオチでした。
「2001年9.11米同時多発テロ事件にまで連関する」と惹句に書いてありますが、同時多発テロである必然性はありませんでした。
題材は面白いと思うのですが、扱い方がいまひとつという感じです。

正高 信男
他人を許せないサル

ケータイを持った日本人についての日本人論なのですが、根拠薄弱というか著者の思い込みが激しい本です。
確かにケータイに依存しているようなひとも多く、非難したくなるのはわかりますが、データの根拠が乏しく、説得力がありません。
そういえるかもしれないけど、そうじゃないかもしれない、というような言説が多く、学者の書いた書物としてはちょっとお粗末な感じがします。

デヴィッド マドセン, David Madsen, 池田 真紀子
フロイトの函

不可思議な小説です。
停電した真っ暗な汽車の中で、何者かに犯されそうになった記憶喪失の(ヘンドリックと呼ばれることになる)青年。
明かりが着くとジークムント・フロイト博士(同姓同名の精神分析学者)、車掌のマーコビッツが登場。
記憶を取り戻すために博士の催眠術を受けることになるが、眠りの淵から戻ると雪の降る電車の外で下半身ブリーフのみの姿に…ブリーフの上にスカートを穿かされ、線路を歩く。
そして駆けつけた馬車で伯爵の館へ。伯爵の”十三歳”の娘の肢体に惑わされ、大司教の奥さんとの間男の濡れ衣を着せられ、ヨーデルの専門家としてヨーデルについて講演をさせられ…。
夢の中で夢を見て、誰が夢の中の登場人物なのか、どれが現実なのか、わからない話です。
最後までよくわからないのですが、会話の妙も相俟って最後まで惹きつけられます。


角田 康夫
人生と投資のパズル

行動ファイナンスの入門書です。


目次は以下の通り。
1 行動経済学は何をやるか―投資家心理と人間行動
2 損と儲けは紙一重―プロスペクト理論で解き明かされる謎
3 見かた変われば品変わる―フレーム効果の摩訶不思議
4 てっとり早い近道だが―今や金融経済学をゆるがす「簡便法」とは
5 汝自身を知れ―自信過剰と自己正当化
6 後悔を避けるために―行動経済学の処方箋
7 バイアスからの解放―行動経済学の応用


個人投資家にとって非常に参考になる本です。
プロスペクト理論、損失回避、ヒューリスティクスなど行動経済学の知見が網羅されており、またわかりやすく説明されています。
様々なバイアスを避け(実際にはわかっていても難しいですが)、逆張りとバリュー投資に徹することができれば利益を挙げる確率は上がるのではないかと思います。
また、認知的不協和、後悔回避など、実生活における意思決定ついても同様の考え方が応用できます。

アダム ファウアー, Adam Fawer, 矢口 誠
数学的にありえない〈上〉
アダム ファウアー, Adam Fawer, 矢口 誠
数学的にありえない〈下〉

瞬時にして確率を暗算できる能力を駆使して臨んだポーカーで大負けし、巨額の借金を負ってしまった天才統計学者ケイン、統合失調症だった双子の兄、先端科学技術をスパイする政府機関「科学技術研究所」、世界を揺るがす研究をしている科学者トヴァスキー、二重スパイを演じるロシア出身のCIA女性工作員ナヴァ、人間狩りのプロたちなど多彩な登場人物が繰り広げるジェットコースターサスペンスです。
ケインは癲癇の発作に悩まされますがそれは未来を予知する能力の萌芽であり、「科学技術研究所」が執拗に彼を捕まえようとします。
追われるなかで、彼の能力が開花していきますが、系統樹のように拡がる未来の可能性の中から行動を選び、その結果に至る伏線は良くできています。
最後の結末の意外性も納得できるものです。
また、小説の中に散りばめられる確率・統計、物理、脳科学などの知識もうまく説明され、その点もお楽しみです。

マイクル・クライトン、ダン・ブラウン系の傑作と出版社は宣伝していますが、それも肯ける小説です。

新堂 冬樹
底なし沼

一匹狼の闇金王・蔵王のシノギは、闇金業者から完済済みの契約書を買い、完済した借金をさらに払わせる「二重取り」。
蔵王から目をつけられた、結婚相談所を経営する日野は、部下の連帯保証人となって奈落の底に沈んだ過去を持つ。
前半は、蔵王と日野の攻防、後半は暴力団との攻防で壮絶な暴力シーンの連続となります。
蔵王と日野の騙しあいは、偶然に頼った展開もあり、ちょっと物足りないところがありましたが、最後のどんでん返しは良くできていました。
「黒い太陽」も悪くはなかったですが、闇金と暴力の世界を描くとやはり迫力が違います。

ローワン・フーパー, 調所 あきら
ヒトは今も進化している 最新生物学でたどる「人間の一生」

なぜ男たちは大きなバストの女性が好きなのか?(→バストが大きくてウエストの細い女性のほうが妊娠しやすいから)
若者が気まぐれな理由は?(→脳は20代でも発達しているから)
など、生物学の最新の知見から身近なことを読み解く本です。
The Japan Timesに連載されたコラムをまとめたもので、36篇のコラムが集められています。
ひとつひとつが短いため、説明が端折られており、”最新の生物学ミニ知識”のような感じで、ちょっと物足りない感じが残ります。
話のタネとしては面白いです。

村上 隆
芸術起業論

作品がオークションで1億円で落札され、ルイヴィトンとのコラボレーションを手掛けた村上隆氏によるアートの世界における成功戦略です。


目次は以下の通り。

☆第1章 芸術で起業するということ
芸術には、世界基準の戦略が必要である
なぜ私の作品は一億円で売れたか
芸術作品の価値は、発言で高めるべき
芸術は、想像力をふくらませる商売である
芸術の顧客は、栄華栄耀を極めた大金持ち
業界を味方につけて重圧をかけるべき
業界の構造を知らなければ生き残れない
経済的自立がないと、駒の一つになる
「金さえあれば」が言いわけならダメだ

☆第2章 芸術には開国が必要である
芸術家は、技術より発想に力を注ぐべき
世界で評価されない作品は、意味がない
個人の歴史の蓄積をブランド化する方法
価値を生むのは、才能よりサブタイトル
現代の芸術作品制作は集団でやるべきだ
美術界の構造は、凡人のためにできている
世界基準の「文脈」を理解するべきである
芸術家は世界の本場で勝負をしなければ!
日本の本道では、世界の評価はもらえない

☆第3章 芸術の価値を生みだす訓練
六八〇〇万円の源は「門前払い」だった
評価されていない作品ほど大化けする
世界に、唯一の自分の核心を提出する
自己満足を超える価値を発見するには
世界にプレゼンテーションをする秘訣
歴史を勉強すると自由な作品が作れる
歴史のひきだしを開けると、未来が見える
歴史から自分だけの宝を見つける方法
展覧会を成功させるには根まわしが要る
権威は自分で作りあげなければならない

☆第4章 才能を限界まで引きだす方法
作品が歴史に残るかどうかが問題である
徹夜なんて、努力のうちに入りません
芸術家の成長には、怒りが不可欠である
はじめての題材にこそ、うまみがある
挫折を超えられるかどうか、の分岐点
「光を見る瞬間」をどう作るか!?
劣悪な環境は、芸術を生むのには最適
ひたすら作品の奴隷になるという境地
賛否両論の概念が、未来を開いてゆく


業界の歴史を勉強し、顧客を理解し、その文脈のなかで戦略を考え、作品を作り、プレゼンテーションを行う、というまさに「起業」と変わらない世界です。
明確な認識と合目的的な方法論は、美術業界を知らなくても非常に参考になります。