内田 和成
仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法

著者は、あのボストン・コンサルティング・グループのシニア・ヴァイス・プレジデントであり、元日本代表。
コンサルティングのプロ中のプロです。
が、仮説→実験→検証という当たり前のことが書いてあります。
普通のビジネスマンならある程度身に着けている発想です。
例もあまりたいしたものではなく、ページ数もこの数分の一で十分でしょう。
伝えたいことを的確に伝えるというよりは、分量を増やしてページを稼いだ感じがして、いかにもコンサルタント的なイヤな感じもします。


小幡 績
ネット株の心理学

著者は、東大経済学部卒、大蔵省、一橋経済研究所を経て慶應大学大学院助教授、ハーバード大学Ph.D.。
従来のファイナンス理論は間違っており、株式投資において①業績で株式を買って利益を上げるのは困難であり、②長期保有は最もリスクの高い投資戦略であって、③タイミングも含めた、売り方を考えることが投資の中では最も重要なことであると主張しています。
その結果として、デイトレードはリスクの少ない投資であり、バブルに突っ込むのは投資の王道だと述べています。
「出口戦略」が最も重要という指摘など、著者の主張は肯けるところも多いのですが、「行動ファイナンス」を謳っているわりに「行動ファイナンス」の理論はあまり出てきません。
これまでの投資理論へのアンチテーゼとして、やや極端な書き方となるのはやむをえないところもあると思いますが、もう少し「行動ファイナンス」の裏づけが欲しかったと思います。
「行動ファイナンス」の理論からはデイトレードで儲けられるということにはならないと思うのですが…。
基本的にはゼロサムゲームだと思いますし。

川上 弘美
ざらざら

「ラジオの夏」「びんちょうまぐろ」「ハッカ」「菊ちゃんのおむすび」「コーヒーメーカー」「ざらざら」「月世界」「トリスを飲んで」「ときどき、きらいで」「山羊のいる草原」「オルゴール」「同行二人」「パステル」「春の絵」「淋しいな」「椰子の実」「えいっ」「笹の葉さらさら」「桃サンド」「草色の便箋、草色の封筒」「クレヨンの花束」「月火水木金土日」「卒業」の23編が収められています。
雑誌に連載した10ページ程度の小品を集めた本です。
川上ワールド満載で、登場する女性がみんな独特の間でいい感じです。

倉阪 鬼一郎
下町の迷宮、昭和の幻

「昭和湯の幻」「飛鳥山心中」「無窮の花」「絵蝋燭」「廃屋」「奥座敷」「まどおり」「紙人形の春」「クラリネット遁走曲」「跨線橋から」の10編が収められています。
この作者の小説を読むのは初めてだったのですが、暗くて救いもなく、2編読んだところで読むのはやめました。
昭和レトロホラーとのことで、文章とか雰囲気はそれなりだとは思うのですが…。

M・レヴィン, 佐藤 桂
「壊れ窓理論」の経営学 犯罪学が解き明かすビジネスの黄金律

小さな犯罪(壊れ窓)を放置すると大きな犯罪を招く、だから小さな犯罪を取り締まれ、という「壊れ窓理論」、ニューヨークの治安回復に有効だったという犯罪学の理論をビジネスに当てはめたという謳い文句ですが、目新しい話は特にありません。
ニューヨークの治安回復も「壊れ窓理論」のせいではないとする説がいろいろと出ているなかで、無批判に理論を当てはめている感じの本です。
本書の内容を一言で言うと「小さなことも大事なので一生懸命実行しよう」ということです。
それはそれでその通りですが、「経営学」と名乗るほどのものではないです。
アメリカのマクドナルドはトイレが汚いようですが、それは経営学以前の問題ではないかと…。

小島 寛之
算数の発想―人間関係から宇宙の謎まで

個別的思考とフィクション感覚―「算数の発想」とは何か、
「旅人算」から宇宙論へ―ものごとを相対的に見る発想、
「ガウス算」から環境問題へ―グラフをさかさまに見る発想、
「相似図形」からフラクタルへ―無限をイメージするための発想、
「仕事算」から経済成長理論へ―景気低迷を読みとく思考、
「数え上げ」から不可逆現象へ―格差社会を読みとく思考、
「集合算」から協力ゲームへ―政治力学を読みとく思考、
という内容で、算数の発想から科学や経済、社会問題を説明しています。
算数は苦手だったのですが、なんとかんるかな、と思ってトライしたのものの、それほど理解しやすい内容ではありませんでした。
頭の体操としてはいい本かなぁと思いますが。

竹田 陽一
プロ☆社長

中小企業社長向け経営書です。
主張は、中小企業は「弱者」であるので、弱者の論理で戦略を考えるのが重要な仕事であり、そのためには勉強しなさい、勉強にはCD,DVDが効率的、ということです。
で、会社の業績の98%は社長で決まるとのことです。
もっともなこととは思うのですが、「キャッシュフロー」と「キャッシュ」を混同したような説明をしたりして、コンサルタントがそれをやっちゃいかんなぁというミスをしてるので、ほかの部分まで説得力が薄れました。

石田 衣良, 角田 光代, 重松 清, 篠田 節子, 藤田 宜永, 唯川 恵
vintage '06 (ヴィンテージ・シックス)

ワインを主題にした短編集です。
「父の手」石田衣良~「岩の原ワイン」田舎に一人で住む父親の元に帰ってきた息子と恋人の話、
「トカイ行き」角田光代~「TOKAJI ASZU HETSZOLA 1995 6put」恋人と別れハンガリーに一人で旅した女性とハンガリーのワイン畑でバイトしている日本人男性の話、
「ひとしずく」重松清~「CHATEAU BEYCHEVELLE 1962」妻の誕生日プレゼントに妻の生まれた年のワインを買って、いざこれからというときに義弟一家がやってきて…、
「天使の分け前」篠田節子~「CHEVALIER-MONTRACHET 1990」30カ国の首脳を迎え、大晩餐会を開催する仏大統領が、威信にかけて供しようとするヴィンテージ「ラ・ターシュ1937」とその顛末
「腕枕」藤田宜永~「CHATEAU HAUT BRION 1971」パリに来た映画監督と彼が昔パリに住んでいた頃の知人の娘の話、
「浅間情話」唯川恵~「登美」男に騙され、軽井沢に帰って来た女性と彼女が働くことになった別荘の持ち主の話、
どれもそれぞれ味わいがあり、ワインが重要な小道具となっています。
なかでも「ひとしずく」は泣き笑いの趣がよかったです。

久坂部 羊
無痛

見るだけですぐに症状がわかる二人の医師を中心に、「痛み」の感覚をまったく持たない男、別れた妻を執拗に追い回すストーカー、殺人容疑のまま施設を脱走した自閉症の少女などが描かれ、表現もかなりグロテスクなものがあります。
著者は医師なので、そのあたりは違和感がないのかもしれませんが、あまり気持ちのいいものではありません。
また、刑法39条(心神喪失時の犯行は罪に問えない)について、その不合理な面、搾病なども描かれています。
精神障害についての描き方にちょっと疑問は残りますが、ストーリー展開は面白く、一気に500ページを読めました。

石田 衣良
灰色のピーターパン―池袋ウエストゲートパーク〈6〉

池袋ウェストゲートパークⅥです。
「灰色のピーターパン」「野獣とリユニオン」「駅前無認可ガーデン」「池袋フェニックス計画」の4編が収められています。
盗撮映像売買で恐喝されるハメになった小学生の「灰色のピーターパン」、足に障害を負わされ、レストランを持つ夢をあきらめざるを得なくなった被害者と加害者の「野獣とリユニオン」、Gボーイズの元キングが経営する無認可保育所の保育士の「駅前無認可ガーデン」、池袋から外国人と風俗を追い出そうとする「池袋フェニックス計画」。
いずれもIWGPらしいマコトの頭脳と機知に富んだ話です。
「野獣とリユニオン」はわかっていても泣ける作品です。
石田衣良の作品は量産されているので、波はありますが、このシリーズは期待を裏切りません。