※増毛駅については、人が多くいたことから、2007年5月に訪れたときの写真を使用しながら記述させていただく。
増毛駅が開業したのは、留萌本線が留萌駅から延長した大正10年(1921)。今から95年前のことだ。留萌本線の起終点駅として転車台を所有し、隆盛の頃は貨物列車の側線があり、駅員も多く配属されていたようだ。ちなみに、マシ・ケはアイヌ語で「かもめの多いところ」という意味のようだ。
駅舎に掲げられた駅名標がいつの時代に掛けられたものかはわからない。昭和62年(1987)国鉄分割民営化によりJR北海道に継承された頃のものかとも思うが、看板をみるともう少し時代が新しい気もしなくはない。
増毛駅が無人化されて、そば処増毛駅が開店し、夏季に営業していたとインターネットに紹介されていたが、2007年5月の訪問時は確認できなかった。その後、閉店を余儀なくされたようだが、平成24年(2012)から海産物やお土産など売る店が入店している。今回の訪問時(2016年8月)は廃線間際ともあって、とても多くの人が増毛駅を訪れていた。
映画「駅 STATION」が公開されたのは昭和56年(1981)。今も駅前には、映画で使われた建物が残り、観光案内所になっている。しかしその看板には、ロケで使われた風待食堂のものが掲げられている。
増毛駅は終着駅ではあるが、かつて陸の孤島と呼ばれた雄冬との間で定期航路が運航されていたため、列車から船に乗り換える人の姿もあったはずだ。実際、「駅 STATION」では、時化で休航になったことから、男と女が出会う新たなドラマが生まれることになる。しかしその雄冬便も国道の整備が整う平成4年(1992)には廃止されてしまう。
宿直室を備えていたと思われる増毛駅の駅舎は、ホーム側半分がなくなってしまっている。昔の駅舎の写真をみると随分立派な木造建築だったのに残念でならない。廃線後、駅舎は増毛町が引き継ぐことに決まっているようだ。賑わっていた当時の商家が残るまちでは、古いまち並みを観光資源にしたいと期待しているようだが、廃線ブームが去った後は、元の静けさに戻ってしまうような気がする。あと10年して訪れたら、果たしてどんな光景が展開されるのだろう。
駅の機能を失っても映画に登場した
温もりがある駅の光景は消えることはない
心残りなのは、冬の増毛駅を知らぬまま廃駅になってしまうことだ。映画では深い雪に覆われていた。私は信州人だから、雪には慣れているつもりだが、やはりこの付近に降る雪の量は半端なものではないと思われる。そんな雪の中に身を置きたい。そんな願いはついに届かない。(写真/深川駅に折り返すキハ54)
長年に亘り、たくさんの人や資材を運んだ留萌本線留萌駅~増毛駅間16.7㎞がいよいよ明日12月5日をもって廃線となる。同時にこの区間の8駅も廃駅となり、時刻表に刻んできた時が止まる。この増毛駅から通学・通勤。買い物や観光。進学や就職・出稼ぎ。通院や冠婚葬祭へと、果たして幾多の人が旅立って行ったのだろう。そんな感傷的な気分に浸りながら、最終列車を見送る増毛駅のことを思っている。(写真/増毛駅の車止め)
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