今日も郵政民営化見直し議論について、考えてみたいと思います。
今日のテーマは、「3事業一体ってそんなに重要なの?」です。
郵政民営化の議論を聞いていると、「4分社化」だの「3事業一体」だのという文脈で4と3という数字がでてきます。
ひょっとしたら、「この4だの3だのっていうのは一体なんなんだーっ!!」と思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ですのでまず、この郵政民営化にまつわる「4」と「3」について、今一度おさらいしてみたいと思います。
昔から「郵政3事業」といわれたように、郵政公社時代までは郵政の事業は以下の3つに分類されていました。
1.郵便事業(郵便物を集荷したり配達したりするお仕事)
2.郵貯事業(国が運営する「郵便貯金」や送金サービスを提供するお仕事)
3.簡保事業(「簡易保険」=文字通り、普通の保険よりも小額の保険を販売するお仕事)
です。
この3つの事業は、郵政公社の中で一体運営されていました。
もちろん、内部には「郵貯のことを考える部署」「簡保のことを考える部署」「郵便のことを考える部署」というのは別々にありましたが、最終的な経営責任はすべて、郵政公社総裁が負っていました。
25000局ある郵便局も、この3つの事業を、当然すべての郵便局で提供してきました。
これがいわゆる、「3事業一体」というやつです。
このように歴史的に3事業一体で運営されてきた郵政ですが、
小泉改革では、「郵政民営化」に向け、「3つの改革」を行いました。
1) 郵政公社をやめ、郵政を「株式会社」にしたこと
要するに、後々の「上場」「民営化」の準備のため、まずは公社っていう公的組織にしておくことはやめたわけですね。取りあえず普通の会社と同じ「株式会社」にしました。
ただまだ、「日本郵政株式会社」の株は100%政府がもっていますから、正確には「民営化」はまだされていないことになります。
本当の意味で「民営化」するためには、この株式を上場し、「民間」の私たちが自由に株主になれるようになる必要があるわけです。今の段階では、まだここまでは実行されていません。
ですから「民営化したからって、何が変わったのか!?」なんて言われる方も多いのですが、
正確には「まだ民営化なんて、していない」のですね。
2).今まで「3事業」と思われていた郵政事業を、「4つの事業」に再分類したこと
4つの事業、、、って、郵便、郵貯、簡保はわかるけど、もう一つ何??
と思われると思います。
もう一つは実は、「郵便局」なんですね。
ここでひとつ気づいて頂きたいのですが。
「郵便」、「郵貯」、「簡保」は、どれも「どんな商品を売るか、どんなサービスを提供するか」という視点の事業の切り口です。
「郵便」といえば手紙だし、宅配だし、年賀状。
「郵貯」といえば、貯金、送金、振込。
「簡保」といえば、養老保険とか学資保険。
でも「郵便局」はどうでしょう?
人によっては「年賀はがき」や「不在届」をイメージするひともいるかもしれないですね。
「郵貯」や「かんぽ」をイメージする人もいるかもしれません。
はい。実は「郵便局」というのは、いろんな商品やサービスを扱っている「窓口=売り場」なんですね。
たとえていうなら、「カルビーのポテトチップ」も「ハーゲンダッツのアイス」も「花王の洗剤」も売っている「コンビニ」と同じ。
この「宅配も銀行商品も保険商品も売れる、マルチな地域密着型売り場=『郵便局』」が全国津々浦々25000カ所もあるわけです。
ですから、郵政民営化が当初議論されたときに、この「マルチな巨大売場ネットワーク=郵便局」が、「郵便」や「郵貯」「簡保」の商品サービスだけじゃなく、もっと広くいろんなサービスを扱えるようになったら、結構すごいことになるんじゃないか、という議論がされたのです。
そこで、これまでの3事業に加え、新たに「郵便局会社」という第四番目の事業分類が誕生するに至った訳ですね。
3)こうして分類した4事業を、「分社」して別の株式会社として独立させたこと
はい。おそらくこれが一番大きなインパクトがあったのだと思いますが、
3つを4つにしただけでなく、それを4つの別々の会社にして、それぞれ株式会社にしたわけです。
この結果、
郵便配達をする郵便局員やトラック、バイク、仕訳する機械→「日本郵便」へ
郵便貯金の残高管理をするシステム→「ゆうちょ銀行」へ
簡保を売っていた外回りの営業の人→「かんぽ保険」へ
いくことになりました。
そして、郵便局は、、
大きめの郵便局とその局員→使っている場所ごとに「ゆうちょ銀行」や「日本郵便」の「直営」に
小さめの郵便局とその局員(昔の特定郵便局)→「郵便局会社」に
所属することになりました。
皆さんも少し気をつけて、お近くの郵便局の看板をみてみると、看板の色に4つあることが分かります。
「赤」は「日本郵便」(ゆうびんやさん)
「緑」は「ゆうちょ銀行」(ぎんこうやさん)
「青」は「かんぽ保険」(ほけんやさん)
「オレンジ」は「郵便局会社」(窓口<売り場>やさん)
です。
ほとんどの郵便局は、オレンジの看板をかかげていますよね?
じゃあ、「郵便局」で扱えるサービスや商品は減るのかというと、、、必ずしもそうではありません。
郵便局ではいままで通り、郵便の受け渡しもするし、貯金もできるし、保険も買える訳です。
なぜかというと、郵便局会社は、『窓口』事業として、郵便のサービスや貯金のサービス、
保険のサービスを「代理店として代行」していて、郵便、郵貯、簡保という3つの会社から手数料をもらっているからです。
ただ、「3事業一体」のときと大きく違うのは、
「郵便局会社は、独自の判断で、日本郵政グループが扱っていない、他の会社の商品やサービスを、郵便局で提供する」ことができる、
ということですね。
このまま4つが独立していれば、将来的には、地銀の住宅ローンを郵便局で手続きできてしまう、
なんてこともあるかもしれません。
さて、ではなぜ今、「見直し」が叫ばれているのでしょうか?
「3事業一体じゃないと駄目だー!」と政治家が言っているのはなぜでしょう?
はい。どうやら
「3事業一体じゃないと、不採算の郵便局を閉鎖されたりして、サービス停止されたりして、いままで通りの郵便局の数とサービスが維持できなくなるかもしれないから」
ということが理由のようです。
確かに、
「今まで通り、不採算であろうがなかろうが、絶対に絶対に、現状維持!!!。足りない分は税金で補填!」ということであれば、3事業一体でかつ「国営」にするのが一番早い話
になります。
でも、
「不採算の郵便局も、なんとか採算ベースに乗せて維持する企業努力をする」ということであれば、民営化して4分割するのがいちばんやりやすい
はずです。
実際、不採算の郵便局を採算ベースに乗せる努力として、実行可能な方法はいくつもあります。
例えば、前回お話した、ドイツが行った「フランチャイズ郵便局」を活用する方法もありますし、郵便や郵貯、簡保以外の商品サービスを提供して、追加利益を上げるという考え方もあるでしょう。
ただこの場合、「採算ベース」に乗せる工夫と経営努力が最も必要なのは、「郵貯」でもなく「郵便」でもなく、「郵便局会社=郵便局の経営」になります。
なぜなら「いまある郵便局をやめるのかやめないのか、郵便局のサービスを増やすのか減らすのか」はゆうちょでも簡保でもなく、「25000局の『窓口』をもつ郵便局会社」が決めることになるからです。
郵便局の経費(働く人の人件費とか家賃など)と、
郵便局が得られる収入、、つまり
1)ゆうちょや簡保、郵便から入ってくる「代理店手数料」+
2)これから新しく何かサービス提供する場合はその追加収入
を比較して、収入のほうが少ない場合は「郵便局」が赤字ということです。
ですから、赤字郵便局をなんとか維持するためには、これまでずーっと公務員で地元の名士であった「郵便局長」さんが、地元の「中小企業の社長」として、経営努力をすることができるかどうか、がポイントになるわけです。
そういう意味では、郵便局は郵便局で、「これまでの3事業とはよい関係を保ちながら、独自路線で収益も追求できる」自由をもっていたほうが、気兼ねなく新しいビジネス立ち上げたり、工夫したりできるので、採算ベースには乗せやすいのではないでしょうか。
「でも郵便局長さんたちにそんなことできるの?無理なんじゃないの?」
という方もいるかもしれません。
あなどってはいけません。
実は郵便局長さんって、すごいんです。
これまで、小さめの郵便局(特定郵便局)の郵便局長さんは、代々「世襲」できる公務員、つまり、お父さんが局長さんなら息子も局長さんになれる、というファミリー公務員でした。
この制度に対しては、相当な批判もありましたが、結果的に長い歴史のなかでこれまで代々蓄積されてきた、郵便局長さんの地元ネットワーク、影響力はすごいわけです。下手な政治家ファミリー顔負けですね。
(実際、自民党の政治家さんが選挙のときに票を集めようとおもうと、郵便局長さん達との関係が切っても切れない関係があった、、というのは皆さんも聞いたことがあるかもしれませんね)。
つまり、郵便局長さんたちがすごいのは、「その地元の近所の人達のことは、知り尽くしている」ということなのです。
どこの坊ちゃんはいつどこの大学にいった、とか、あそこの奥さんは働き始めた、とか、、、。
実はこういった情報は、普通に商売をする企業なら、特にものやサービスを売る企業なら、のどから手が出るほど欲しい情報なのです。
そういう情報があると、どこにビジネスチャンスがあるかが分かるので、非常に効率的な営業ができるからです。世の中的にはCRM(Customer Relation Management <顧客マネジメント>)といって、それだけのために本が出たり、コンサルティングサービスがあったり、システムソフトが飛ぶように売れたりします。
でも、郵便局長さんたちはそんなもの要らない訳ですね。
だって、頭の中に入っているのですから。
すごい人になると、1ー2年先まで誰にどんな商品が売れそうか、多分読めてしまう。
この方達のパワーを最大限発揮できたら、
採算のとれない郵便局なんていう議論は、必要ないような気がするのは、私だけでしょうか。。。
「民営化して何が良くなったんだ、何も変わらないじゃないか!」というのは、ある意味当然です。
さっき申し上げたように、「まだ民営化なんてされていない」のですから。
前回の記事にも書いたように、これまでの時間は、3事業だったのを4つに分けるだけで相当な時間を使って来たので、たとえて言うならまだストレッチと準備運動をしているだけです。
まだフィールドにさえ立っていないのですから、変わらないのは当たり前ですね。
民営化して何かが変わるかどうか、本当に意義があったかどうかを判断するには、本当はこれから3ー5年はみておく必要があります。
今の段階で相当なにか問題が噴出しているのだとしたら別ですが、
(といっても、特段民営化した訳ではありませんから、問題が噴出しているとしても民営化そのものが問題でない可能性のほうが高いといえるでしょうが、、、)
「民営化しても変わらないから、巻き戻し」というのは、
かなり乱暴な議論のように思います。
郵政民営化の見直しについては、
「とにかく元に戻す!絶対絶対現状維持!!!」
という、単純な話ではなく、
もっと正確に事実を把握した上で、
「ガラス張り」の議論をして頂きたいですよね。
次回は、「民主党政権の郵政見直し構想とは??」
についてお話したいと思います。
お楽しみに。
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