世界一やさしい「郵政民営化」のお話 -4ページ目

世界一やさしい「郵政民営化」のお話

小泉旋風では「賛成!」。民主党旋風では「全面見直し、凍結」。

でも、本当はどっちなの? それともどっちでもいいの?

今イチわかりにくい「郵政民営化」見直し議論。 今だからこそ、ぐっと分かりやすく解説してみたいと思います。

こんにちは。

今日も郵政民営化見直しについて考えてみたいと思います。

実は今日から一週間はヨーロッパにおりまして、今は早朝のパリ、ドゴール空港です。
結構、寒いです。

それで、せっかくですので今日から一週間は、
民営化をめぐる世界の郵政のお話、
特に民営化の波が押し寄せている、ヨーロッパの郵政お話をしてみたいと思います。

ではまず最初は、私が今いる国おフランスから。

フランスの郵政は「La Poste」(ラポステ)という、青いポストとロゴマークで有名な国営企業です。


$世界一やさしい「郵政民営化」のお話


ちなみに、日本の郵政のコーポレートカラーは赤ドイツは黄色フランスは青、という形で、どれも国旗の中の印象的な一色を使っているのが、興味深いですね。

さて、ラポステをよく見てみると、歴史的な成り立ち、郵便局の規模や従業員の数、事業構造など日本の郵政によく似ています。

例えば、郵便局の数でいうと17000局(日本は25000局、従業員の数はほぼ日本と同じ28万人です。

ラポステは、日本と同じように金融サービスも非常に強く、2006年には銀行ライセンスを取って郵貯を立ち上げましたし(La Banco Postale)、保険会社も傘下に入れました。

実際、先日紹介したアメリカの郵政(USPS)のケースと全く違い、グループ収益の20%以上を金融サービスで稼いでいます

(もっとも、日本の郵政の金融サービスの収益貢献は、ラポステよりもずっとずっと大きいですけどね)

ずっと国営であり続けた背景にある思想は、フランス革命以降、連綿と受け継がれてきた、「信書の秘密」「信書の自由」を守るという精神だといわれています

確かに、フランス革命以降、唯一のコミュニケーション手段であった手紙を、誰しもがやりとりする権利、誰かの検閲に合ったり盗み読みされない権利を保護するということは、民主主義を貫くフランス政府の大事なミッションだったに違いありません。

実際、誰の家庭からも5キロ以内には必ず郵便局を設置する、ということも明文化され、遵守されています。

一方で、この郵便局での金融サービスの提供についても、ラポステは非常に積極的でした。民間の相互銀行とJVで傘下に銀行をつくったり、国内の保険会社グループの株を取得して保険サービスも提供しはじめたり。

結果的に、扱っているサービスは、ほぼ日本の郵政に近いものだと考えていただいていいと思います。


しかしこのラポステにも、民営化の波というのはひたひたと訪れています。


2008年、ラポステ会長のジャンポールベイリーは2011年にラポステグループを「公開株式会社」にすることを決断、政府との合意を得ました。

この背景はなんだったのでしょうか?

ラポステの事業は順調に推移していましたし、赤字もありませんでした。


実は、この背景にあったのは、

「ラポステが今後本当の意味で事業成長していくためには、国営では難しい」

という経営判断だったのです。

もっともっと、海外(フランス以外)のネットワークを増やしたい、金融サービスも発展させたい。
そのためには企業買収もしたい。

そうすると、競合と同じように"「政府のお金だけでなく、市場から資金(自己資本)を集められる」ことが必要である、とそういう判断だったわけですね。

実際、企業買収や設備投資などをやるには莫大なお金が必要なわけですが、たとえ「銀行業務や保険業務」をやっていたとしても、お客さんから預かったお金を使うわけにはいかないのです。

なぜなら、預金も保険も「絶対に絶対に元本に利子をつけて返さなきゃならない、人様から[預かった]お金」だからです。


企業買収や設備投資に使うお金は、自分で稼いで利益を出して、さらにその後株主に利益配当した後に残ったお金か、そもそもこの会社の事業そのものにリスクを承知で「出資」してくれている株主の出資金か、どちらかしか使えないわけですね。

これらを合わせて、「自己資本」と呼びます。
株式会社になり、公開会社になれば、新しく株を発行したりして、いろんな人が株を買ってくれる可能性が出てきます。
自己資本を柔軟に増やすことができるわけですね。

ラポステからすると

「自分たちは、市場競争にさらされている。だから競争に打ち勝ち、生き残るためには、民営化をし、自己資本の調達先の幅を広げ、より効率的な経営を推進していくのだ」

という、不断の経営決断をしたのです。


一方、会長は、以下の点について明確にしています。

1)株式会社になり、公開されて投資家が増えたとしても、実際のところ大株主は国であり続ける。だから、「国」がオーナーの企業である現状には変わりはない

2)従業員の処遇については、公開株式会社になってもこれまでと変えない


3)郵便のユニバーサルサービスを提供するという、ラポステと国の間の契約は、2011年以降も維持し続ける



ラポステの民営化のパターンは、

「これからは、いろんな投資家からも必要資金を調達し、事業を広げていかなければ、競争に負けちゃう!」

という前向きな危機感と、

「自分たちはもっとよいサービスを、より多くのエリアで提供できるはずだ!!」

という自信の現れ

から生じたもののようですね。


これまでの民営化のパターンのなかでも、
とてもユニークなケースだと思われます。

面白いですね。

次回は、「イタリアの郵政」についてお話してみたいと思います。

お楽しみに。


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こんにちは。
今日も郵政民営化見直し議論について、考えてみたいと思います。

今日のテーマは、「アメリカの郵政はなぜ民営化されないのか?」です。

実際、「民にできることは民に」という考えが最も強いはずの米国で、
郵政事業はずっと国営のままになっています。

ドイツや、EU諸国、日本でさえも民営化の波がどんどん押し寄せているのに、、です。

この理由を、いくつかの事実を確認しながら追ってみましょう。

通常、「民営化」の議論が発生する背景には、大きく分けて2つのパターンがあるように思います。

一つ目は、

あまりに赤字が拡大してしまい、『ホントにこのままずっと税金で運営を維持していくの??』という議論になるケース


二つ目は、

「別に民間でもできるビジネスなのに、税金負担で、有利な条件でビジネスしてるってどうなのよ?」
という議論になるケース

国鉄民営化はどちらかというと1番目のケースでしょうか。

郵政民営化の場合は、どちらかというと2番目のケース。
これに加えて、「郵政が民営化していくと、郵政から最終的に多くのお金が流れている「日本国」の財政改革も早くなるだろう、、、」という政治的な目論見が加わったというのが、正確なところだと思います。

ドイツの郵政民営化は、1)と2)両方に加えて、東西ドイツ統合というイベントが加わったケースかもしれません。


さて、米国の場合はどうでしょう?

まず、ここは大きな違いなのですが、

アメリカの郵政(USPS)は「郵便事業」しかやっていません。

郵便局では貯金もできないし、保険もできない。

郵便(信書)については規制でUSPS の独占事業になっています。「信書」については郵政局(USPS)しか自宅まで配達することができません。これはちょっと前までの日本と同じです。

ちなみにですが、皆さんご存知のとおり、アメリカというのは国土が極めて広い国で、人口密度は日本に比べると随分低い。

ですから、

日本の郵便局(25000局)の1.5倍くらいの数の郵便局(36000局)があるのに、

1つの郵便局がカバーする地域の平均面積は、、、

日本は15キロ平米。
アメリカはなんと260キロ平米です。


日本では4キロ四方に一つ郵便局があるのに、
アメリカでは、例えば東京23区を全部合わせた広さに2ー3の郵便局しかない。


それでも郵便事業の使命である「ユニバーサルサービスの義務」=全国浦々、すべての住戸に期日通り郵便物を届けなくてはならない義務、を負っています。

一方、1つの郵便局がカバーしている人口は、平均で日本の郵便局の3分の2しかありません。
みんな散らばってすんでいるからです。

「お客さんの数は少ないのに広いエリアをカバーしなきゃならない」となると、当然郵便局の運営コストは相対的に高くなります。

つまり

1)日本では郵政の大きな収益源になっている「郵貯」や「簡保」が一切なく
(=銀行や保険など、「民」で提供されている分かり易いビジネスは行っていない)

2)規制で信書(お手紙)を自宅に届けるのはUSPSしかできない
(=郵便はそもそも規制上自由競争になっていないビジネスなので、民業圧迫の議論はおきない)

3)特にアメリカのような国土の広い国の郵便事業は「構造的にコストがかかって儲かりにくいビジネス」
(=民間がこぞって「参入したい!規制緩和して自由競争にしろ!!」というタイプのビジネスではない)

わけですから、

二つ目の理由、すなわち「民間でもできるサービスなんだから、民営化すべきなのでは?」という議論は、アメリカではなかなか生じないわけです。



ただ意外なことに、ごく最近、2006年まで、アメリカの郵便事業が赤字転落することはありませんでした。

なぜでしょう?

それは、アメリカの一般家庭や企業が送付する郵便物の量は、日本の10倍くらいあるからです。

(アメリカに、もし日本と全く同じレベルの郵便物しかなければ、アメリカの郵政などとっくの昔にまっ赤っかの事業だったでしょう)


この背景にあるのは、、「小切手」です。

日本だと、日々の買い物を除けば、多くの決済は銀行引落しです。家賃も、電話料金も。
でもアメリカではまだ「小切手」ですから、この小切手を送付する郵便物というのがやたらに多いのですね。

結果として、USPSはなんとか赤字になることなく、政府から税金補填されることもなく、独立運営されてきました。

ですから、「この拡大していく赤字を、ホントに税金で補填し続けるのか?」という、民営化議論がわき起こるもうひとつのパターンの状況も、アメリカではつい最近まで発生しなかった訳です。


でも、最近になって急激に状況は変わって来ました

小切手の「電子化」が進み、決済もインターネットで処理されるようになった結果、郵便物の量は2006年をピークに下がり始めました。
2008年のリーマンショック以降は、企業のダイレクトメールも減ったため、収益はさらに悪化しました。

結果、2007年以降、USPSの赤字は増える一方。


この1ー2年でUSPSも相当思い切った郵便局の統廃合を行って来たと主張しているようですが、今年の夏の米国政府の調査では、「まだ50%の過剰キャパがある、さらなる合理化が必要」との提言がUSPSに対して提出されました。

結果、この強い合理化のプレッシャーに晒されたUSPSは、先月史上初めて、68万人の従業員のうち16万人に早期退職勧告をし、話題になりました。

この流れのなか、最近メディアに出て来ているのが、「この赤字を国がずーっと税金で補填し続けるっていうのは、どうなのよ??」という議論。

「郵便を巡る環境が大きく変化していく中で、ちゃんと黒字体質にしようと思うと、アメリカの郵政(USPS)も民営化したほうがいいんじゃないか」
という話です。

Fortuneなどの記事をみていると、
「世界は郵政民営化の流れにある。EUも、日本も郵政民営化を決めた。アメリカもそうする時なのではないか」という論調が、マスコミの主流になってきているようです。


巨大な郵貯や簡保がない分、日本の郵政民営化の議論とは様子が随分違いますが、
今後アメリカの郵政民営化も、ホットな議論になりそうですね。


次は、「民主党政権の郵政民営化見直し案」について考えてみたいと思います。

お楽しみに。

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こんばんは。

今日も郵政民営化見直しについて、考えていきたいと思います。

このブログの読者の方からのご質問もあったので、
今日は「郵政民営化は米国の陰謀なのか?」について、もう少し詳しく解説してみたいと思います。


1.米国の「年次改革要望書」は、郵政民営化が米国との密約であった証拠?


郵政民営化が米国の陰謀だという話の根拠にあるのは、どうやら米国が毎年日本政府に対して書面で提出している「年次改革要望書」のようです。

この文書には、郵政民営化をあたかも「指示」「命令」するような記述が入っており、

その記述がちょうど、小泉改革が始まった時期が重なる、

だから、「郵政民営化」は米国と日本の間の密約で始まったのではないか


という話です。

さて、本当にそういう解釈で正しいのでしょうか?
本当に小泉、竹中両氏は、「米国の片棒を担いだ密約者」なのでしょうか?

この問題を紐解いていくために、もう少し事実を追ってみましょう。



1)小泉氏が郵政民営化を唱えはじめたのは、米国の指示があったから?

もし本当に郵政民営化が米国に指示、命令されたものであるならば、米国の年次改革報告書の記載と、小泉氏が「郵政民営化」を唱えはじめた時期は、前者のほうが先か、もしくはぴったり一致する時期であるはずです。

この点、Wikipedia「小泉純一郎」によると、

1979年 大蔵官僚だった時代から「郵政民営化」論者であった
1992年 郵政大臣就任会見で、「郵政事業について、国は民間では採算がとれないサービスのみに特化すべき」と述べ、就任後郵政改革に着手する

とあるように、小泉氏の郵政民営化への想いは、かなり年季が入っています

実際、1999年5月に出版された「郵政民営化論」という彼の著書をみると、どれだけ長く彼がこのテーマをライフワークにしてきたか、理解できると思います。

一方、米国の年次改革報告書をみてみると、簡保について初めて「競争優位をもったままビジネスを拡大しないでほしい」という記述があるのが1999年10月。「郵政民営化」の文字が出てくるのは、2001年からです。

つまり、小泉氏にとって「郵政民営化」は、米国の年次改革報告書よりも、遥か昔からの彼の信条だということになりますね。

この事実を観る限り、「米国に指示されたから郵政民営化が始まった」、という議論は成り立たないといえるでしょう。



2)ではなぜ、実際の構造改革の時期と米国の「年次改革報告書」の提案の内容が常に一致するのか?

とはいえ、「改革が実際に始まった時期」と米国の提案の内容に奇妙な一致があるのは事実です。
これはなぜでしょうか?

では実際に米国政府が提出した「年次改革要望書(2003年)」の文面をみてみましょう。

*************************************
 郵便金融機関(郵便貯金「郵貯」および簡易保険「簡保」)が日本の金融市場の効率的な運営に与える影響について、日本経団連やその他の機関が表明している懸念を、米国政府は引き続き共有する。

V-A. 透明性 簡保商品および日本郵政公社による元本無保証型の「郵貯」投資商品の開発および販売にかかわる法律の改正案の策定につき、米国政府は、総務省が、関連分野における民間活動に影響を及ぼしうるあらゆる面について、一般市民(外国保険会社も含む)への十分な情報提供および意見の収集を行う手段を講じることを求める。それは、保険業界や他の民間関係機関(国内外を含む)が以下の事項に関し、意見を述べ、また総務省の職員と意見交換する有意義な機会を提供することを含む。

(中略)

V-B. 同一基準 米国は日本に対し、郵便金融機関と民間の競合会社間の公正な競争確保のため、郵便金融機関に民間と同一の法律、税金、セーフティーネットのコスト負担、責任準備金条件、基準および規制監視を適用することを提言する。

V-C. 拡大抑制 米国は日本に対し、郵便金融機関(簡保と郵貯)は、民間が提供できるいかなる新規の保険商品の引き受け、あるいは新規の元本無保証の投資商品を提供することを、上記にあるように公正な競争が確保されるまでは、禁ずることを求める。そのために、米国は日本政府に対し、新規の商品に関し、1994年の日米保険協定に規定されている新規商品の検討および認可手続きに関する日本の約束を再確認するよう求める。

V-D. 民営化 米国政府は、2007年4月の郵政民営化を目標に、小泉首相が竹中経済財政・金融担当大臣に簡保、郵貯を含む郵政3事業の民営化プランを、2004年秋までに作成するよう指示したことを特筆する。現行制度のいかなる変更も日本の広範な保険市場における競争およびその効果的な運営に重要な影響を与えるため、民営化に関するすべての意思決定および実施についてはオープンで透明性のある方法で行われることが重要である。これには、上記のV-Aに述べられているものと同様の措置が含まれる。

***********************************

はい。気になるのは、

「米国政府は、2007年4月の郵政民営化を目標に、小泉首相が竹中経済財政・金融担当大臣に簡保、郵貯を含む郵政3事業の民営化プランを、2004年秋までに作成するよう指示したことを特筆する」

というところでしょうね。

「民営化プランを指示したのは、米国政府なのか!?」

と読もうと思えば読めるわけです。

でも、もう一度、よーくよーく訳をみてみましょう。

米国政府は、、、小泉首相が、、、民営化プランを、、、作成するように指示したことを特筆する


ですから、「指示」したのは小泉首相で、
米国政府はその「小泉首相が指示した事実」を「特筆」しただけ、、、なんですね。

要するに米国政府は

「いつまでに民営化のプランを書くべしという指示があったか、ちゃんと分かってるぞー(=特筆する)」
「だから、やるなら公平にするように。あと、どう改革するのか、ちゃんと情報共有してくれなきゃやだ」

といっている訳ですね。

あらゆる大きな構造改革について、「日本でこんな議論が始まっている」という情報は当然米国に流れます。
構造改革は、日本企業だけでなく、米国企業にとってもチャンスになります。

ですからその度に米国政府は、

「やるなら、ちゃんとすべての企業(含む外資)に公平にチャンスがくるようにしてね」
「どんな風に改革するのか、ちゃんと情報共有してね」

という「ごく一般的な」の提言を行っているのですね。

あらゆる構造改革と、米国の年次改革報告書の内容に一致がみられるのは、
ある意味当然
だといえるでしょう。




二つの事柄に因果関係があるとき、

AだからBなのか
BだからAなのか

因果関係の流れの向きを正確に理解することは、
正しい判断をする上で、極めて大事なことです。

これまでの郵政民営化見直し議論をみていると、その因果関係がなぜか逆転されて理解され、議論されていることが多いような気がします。

民主党政権には、その辺りの混乱を一度すべてクリアにした上で、
本質的な見直しに着手してもらいたいものですね。

次回は「アメリカの郵政はなぜ民営化されないの?」について解説してみたいと思います。
お楽しみに!


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