世界一やさしい「郵政民営化」のお話 -3ページ目

世界一やさしい「郵政民営化」のお話

小泉旋風では「賛成!」。民主党旋風では「全面見直し、凍結」。

でも、本当はどっちなの? それともどっちでもいいの?

今イチわかりにくい「郵政民営化」見直し議論。 今だからこそ、ぐっと分かりやすく解説してみたいと思います。

こんにちは。
今日も郵政民営化見直しについて考えてみたいと思います。

さて、今日は「郵政マネーが海外流出って具体的にどういうことが起きることなの?」
についてお話しましょう。

ちょっと前に、郵政が民営化されると、「アメリカにお金が流れる」という説があったようですね。

でも具体的に、それってどういうことなんでしょうか?
現実として起きるとするとどういう場合に起きるのでしょうか?


折角なので、今日はこのテーマについて分かり易く解説してみたいと思います。

ちなみに、郵政マネー、と世の中的に言われるお金というのは、
私たちが郵貯や簡保に預けているお金のことを言います。

ざっと合わせて340兆円くらい。

340兆円っていわれても皆さんピンとこないかもしれませんが。

日本人の1億数千万人がもっている預金とか保険金とか、株とか、つまりいわゆる「個人の金融資産」を全部合わせると、1500兆円くらい。

340兆円というと、その2割くらいにあたります。

ちなみに、日本最大の銀行、東京三菱UFJ銀行の預金を全部集めると100兆円くらいですから、
その3.4個分くらいのお金。

大変なお金ですね。


さて、これが海外に流出してしまうと誰が一番困るかというと、、、

一番困るのは「日本という国」です。

なぜかって、この340兆円の殆どは、「郵貯」「簡保」という組織を通じて、
「国債」に運用されているからです。

要するに、私たちは郵貯や簡保にお金を預けている訳ですが、
郵貯や簡保は、そのお金をどこに投資しているかというと、
国の借金証書である「国債」に投資しているのです。

郵政マネーがいきなり海外に流出すると、
340兆円もの大金を日本という国に貸してくれていた人が消滅することになりますから、
そりゃあもう、国は大騒ぎです。
国は資金繰りに奔走しなければなりません。

鳩山さんも大慌てですね。


ちなみになぜ郵貯や簡保が「国債」に投資しているかというと、、、理由は以下の二つです。

1)安全であること

国債への投資は、若干金利は悪いですが、「日本国」がお金を借りている人ですから、
絶対に絶対に元本を返してくれる、とても安全な運用と考えられています。


2)他に運用しようと思ってもなかなかよい投資先がないこと

本当は普通の銀行のように、企業に貸出したりすればいいのかもしれませんが、
実際のところ、郵貯の企業貸出は認可されていません。

もちろん、株や債券への投資を強化することもやっていますが、国債と比較すると市場が小さいので、340兆円という小さな国がひとつ吹っ飛ぶくらいの金額を一気に投資してしまうと、
「市場に出てるものを殆ど買い占める」ような形になってしまってしまうというのが実態です。



さて、この郵政マネーが本当に海外に流出するのでしょうか?
もしするとしたら具体的にどういうことが起きるのでしょうか?


まず、海外に流出云々という議論をする前に、十分理解しておかなければならないのは、
海外流出するときの為替のリスク」です。

郵貯も簡保も、預けているのは私たち日本人ですから、当然「日本円」で預けていますよね。
「1万円」預けたら、預金残高は「1万円」で、引き出すときも「1万円」であってほしいわけです。

郵貯や簡保は、私たちからお金を預かっている間、そのお金を投資して増やしてくれています。
(それで私たちの預金などに「金利」が付くんですね)

今は、郵貯も簡保も、この預かったお金の殆どを「日本国債」に投資してくれてますから、当然「日本円」で投資して、日本円で回収しています。ここには「円安」だの「円高」だのは全く関係ない訳です。

でも、もし郵貯や簡保が、この預かったお金の殆どを「米国債」に投資し始めたら、どうなってしまうでしょう?
実は、「日本」の借金が支えられなくなるという以外に、郵貯や簡保に大きなリスクが発生します。

はい。なにがリスクかというと、海外の債券(例えば米国債)はドル建であるということです。

私たちは同じように1万円を預け、1万円を返してもらいたくても、
郵貯や簡保はそれを「ドルに換えて」米国債を買い、私たちがお金を引き出したいときに、郵貯や簡保がまたそれを「日本円に換える」必要がある、ということですね。

当然、最初ドルに換えたときに1ドル100円で、次にドルから日本円に買えたときに1ドル90円だったら、
最初の1万円は9000円になってしまいます。

このリスクを「為替リスク」といいます。

当然、私たちが「いいのよ、そのリスクは私たちがかぶるから」と言わない限り、
この為替リスクは郵貯と簡保がかぶることになります。


もし、340兆円が例えば全部米国に流れるなんてことがあったら、
ものすごい為替リスクを郵貯も簡保も負うことになります。


ちなみに、銀行や保険会社には、こういうリスクをあまりに背負いすぎて破綻してしまわないように、
自分達が取るリスクに対して一定以上の「自己資本=つまりいざというときに使える自分たちのお金」を積み立てていなければならないという規制を守る必要があります。
(これを、自己資本規制、といいます)

これを守れないと、金融監督庁から、「営業停止命令」「業務改善命令」が下ったりします。

ですから、340兆円分の為替リスクを負うとすると、
それだけ分の自己資本を積まなければならないので、
日本の国債で運用していたときよりも随分と儲けないといけない
それができないと、自分達の経営を圧迫し、場合によっては自殺行為になってしまう。

(もちろん、いろんな金融商品で為替をヘッジ(為替リスクを消す)ことはできますが、この金融商品を買うにも結構コストがかかるので、実際には殆ど同じくらいの負担がかかります)

ですから、古今東西、

「一部海外で運用することはあっても、基本は現地通貨で調達し、現地通貨で運用する」というのが金融機関経営の基本になっています。


「あまりに多大な為替リスクを負わない」ということが、重要だからですね。

これは、経営者が日本人だろうが外国人だろうが、株主が政府だろうが民間だろうが、外人だろうが
企業体として「潰さない」「過度なリスクを取らない」ことは、金融機関の経営として共通です。



ですから、

たとえ、簡保や郵貯が外資系企業に買収されることになったとしても、郵政マネーを海外流出させるのは、そんなに簡単でもないし、現実的にも難しいと言えるのではないかと思います。


ただ、1つだけ、現実的に「郵政マネー」が海外に流れる可能性があるかなと思うのは、郵便局での投資信託の販売です。


投資信託というのは、プロの「投資運用会社」が貴方のお金を運用してくれますよ、という奴です。

例えば私たちが、郵貯や簡保にあずけていたお金を取り崩して投資信託を買うと、その先には海外の株式や債券に投資しているものが多いですから、結果的に「郵政マネーは海外に流れます」

実はこれは、郵政民営化とは全く関係なく、既に少しずつ起きていることだと思います

実際、郵貯が投資信託を販売し始めてから、リーマンショックで株式市場が低迷するまでの間、
郵便局での投資信託販売はうなぎ上りに上がっていました。

この場合、「為替リスク」は郵貯や簡保ではなく、個人の消費者が承知の上で、個人の判断で負担していますから、郵貯や簡保にとっては全くリスクがない訳ですね。

郵貯や簡保の利用者に限らず、個人がこれまで預金に預けていたものを、思い切って外債を買ったり、投資信託を買ったりすれば、当然そのお金は海外に流れます。

この流れは、郵政民営化云々と関係なく、将来的には増えていくかもしれませんね。

次回は、鳩山政権での郵政見直し議論についてお話してみたいと思います。

お楽しみに。

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すみません、フランスの出張中は殆どインターネットにアクセスすることができず、
アップができなくなってしまいました(涙)

漸く本日帰国しましたので、気を取り直して、
今日からまた郵政民営化見直しのお話をしてみたいと思います。

さて、世界の郵政のお話、最後はドイツのお話をもう少し詳しくしてみたいとおもいます。

以前「ドイツの郵政民営化は失敗だったのか?」の記事に少し書かせて頂きましたが、
ドイツの郵政民営化は1990年、ベルリンの壁崩壊とともに始まります。


以来、実は10年もの長い時間をかけて、経営スタイルを変え、組織構造を変え、事業構造を再編しながら、
郵便物流会社(ドイチェポスト)、郵貯銀行(ポストバンク)ともに株式上場を果たしています。

今や「え、あそこって昔国営だったの!?」と思われるくらいの、世界的な巨大企業グループに生まれ変わりました。
実際、郵便、物流事業の成長がめまぐるしく、ドイツだけででなく、アメリカ(DHLほか)、イギリス、オーストラリア、香港等の地元企業をも買収/統合して傘下に入れた統合物流企業として名を馳せています。


世界中の郵政事業体を見回しても、
本当に株式を上場して、政府のみならず民間の「投資家」も株式を保有している郵政事業体としては、ドイツが初めての成功ケースだと言われています。


あ、そうそう。ここで留意しておいて頂きたいのは、

上場したからといって、イコール政府の影響力が全くなくなるということではありません。実際、ドイツポストでも未だに最大の株主は政府であり続けています。

なぜでしょう?

それは、、、

まずこういう大きな国営企業が上場するときの時価総額(発行する株式につく時価の総額)は、やはり相当巨大な額になってしまうので、

市場にあるお金(=民間の投資家のお金)で全部の上場株を吸収する(=すなわち、すべての株に『買い手がつく』)ことは難しいからです。

あと、政府の側としても、いきなり全部の株を放出するよりは、ある程度のコントロールを持ちながら、安定軌道にのって来たことを確かめながら少しずつ売却していく、という形をとるほうが、

1)少しずつ企業価値があがっていくメリットを受けられる(=より高い価格で市場に売却できる)し、
2)上場直後の郵政の経営を安定させることができるので、急激な混乱を避けることができる

という訳ですね。


この事実にも代表されるとおり、ドイツポストの民営化の成功の背景にあるのは、

「段階的に組織構造を変えながら民営化を行った」

ということではないかと思います。

つまり、
「国営企業」から
「ほんとにほんとにトイレ以外は全部ガラス張り」の本社ビルに象徴されるような「真のグローバル企業」に脱皮するまでに、

いくつかの段階的な改革を経験している、ということです。
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例えば、1990年から1995年の間は、
「とにかく、核となる郵便事業および郵便局の運営について、脂肪を落として筋肉質に変える」

という期間と位置づけていました。

例えば、

1)高すぎるコストを払っている郵便局の不動産の利用方法見直し
(例えば、かつての駅前の巨大郵便局は、写真のとおり今やデパートになっています)

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2)直営郵便局からフランチャイズ郵便局への乗り換え
(採算が合わないようなところは、地元の酒屋さんやタバコやさん、本屋さんに郵便局を兼営してもらう形で、郵便局の数を減らさずに経営の効率化を行いました)

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とにかく「サービスの質を下げずに利益の出る体質」にすることを主眼にした訳ですね。

1995年から2000年は、物流事業の成長と、郵貯の効率化に主軸を置きました。

過去5年の改革で十分利益の出る体質になった郵便事業は、その自己資本を使って海外の物流会社を積極的に買収しはじめました。

一方、改革の遅れた郵貯事業は、はじめてここで徹底的な効率化を行います。
郵便事業で改革の成果を出した経営陣が郵貯事業にも手を入れて、システムを効率化したり、新しい人材を投入したりしたのです。

次の2000年から2005年は、夫々の会社の上場に主軸を置きました。
実際、郵便事業(ドイチェポスト)、郵貯事業(ポストバンク)ともに、この時期に上場しています。

そして2005年以降のドイチェポストグループの主軸は「更なる事業発展」です。

実際、ドイチェポストだけでなく、ポストバンクも欧州の民間金融機関を買収し、
事業の幅を広げ、地理的にも大きく事業拡大を遂げました。

この事業拡大の過程で、ドイチェポストもポストバンクも、普通の民間企業として十分利益を出し、事業成長し続けられる企業体として大きく変身しました。

そして、これは大事なことなのですが、

「4キロに1つは必ず郵便局を設置すること」
「全国津々浦々かならず郵便が届くネットワークを維持すること」

という政府と契約した「ユニバーサルサービス」は、これまでも、そして今も、
しっかり遵守されています



そして、サービス利用者の満足度もうなぎ上りに改善しており、
これはドイツポストのホームページでも毎年公開されています。

もちろん、すべてが成功だったかどうかということは、歴史が証明することかもしれませんが、
少なくとも、そういったケースがあるということは、私たちも十分理解し、知っておく必要があるのかもしれませんね。

次回は、「郵政マネーが海外に流出するとしたら、具体的にどういうことが起きることなの?」
についてお話してみたいとおもいます。

お楽しみに。

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こんにちは。
ちょっと記事をアップするのに間が空いてしまいましたが、
今日も民営化を巡る世界の郵政のお話をしたいと思います。

前回はフランスでしたが、今日はイタリアのお話をしたいと思います。

イタリアの郵政はPoste Italiane(ポストイタリアーネ)
蛍光色の黄色が目印の郵便局です。

実はこのイタリアの郵政は、目覚しい変革を遂げた郵便サービスの例として
ヨーロッパで高い評価を受けています。



ポストイタリアーネは、今の日本郵政と同じ、
「株式会社化はされているものの、100%株は政府保有」の組織です。

ちなみに、世界の郵政の組織をみると

1)完全に政府と一体であって企業ですらないケース(株式会社化もされていない)

2)企業ではあるけれど、その株主が100%政府であるケース

3)企業であって、政府以外にも民間の投資家が株主になっているケース


と3パターンありますが、

ポストイタリアーネは、今の日本郵政と同じ 2)のパターンになります。
ですから正確には「民営化=株式公開、上場」はされていないのですね。


ちなみに前回お話したアメリカのUSPSは、「独立行政法人」ですから、一番「民営化」には遠い1)のパターンドイツは上場され、4割以上の株はすでに民間保有ですから、3)のパターンになります。

さて、話を戻してポストイタリアーネですが。


昔のポストイタリアーネは、事業の採算性という意味でも、サービスという意味でも国内の評判は最悪でした。

薄暗い郵便局。長蛇の列と長い待ち時間。迅速に配達されない郵便物。

国民の負担も噴出していましたが、事業としての採算も極めて悪かったようです。

「これではいけない!」と思った政府は、ポストイタリアーネの思い切った改革を始めることにします。
これがポストイタリアーネの株式会社化の始まりです。

ポストイタリアーネを政府の一部ではなく、「株式会社」にすると、たとえ政府が100%株主であったとしても、一般の企業と同じように他の企業を買収したりすることもできます。改革の自由度が増すわけですね。

同時に、政府は「やり手」経営者を外部から呼んできて、この株式会社の社長にしたのです。

実際、この経営者はその後、イタリアの地方銀行も立て直した「プロの建て直し経営者」でした。

彼はシンプルで、単純だけれども、とても大事な改革を2年間という短い期間でやり遂げました。

郵便局の中の照明を明るくすること。

ガラスをピカピカに磨くこと。

どれくらいの作業がどの郵便局でおきているのかを日々把握するシステムを導入したこと。

その情報に基づいて、必要な郵便局のスタッフ人数の見直しや作業方法の改善を徹底して行ったこと。

郵便局の「マネジメント=局長」自身が変革することがすべての鍵である、と信じ、
局長のマネジメント教育と人事に、徹底して時間とお金を投資したこと。



これらは、イタリアのメディアが何度も大きく取り上げるほどの「ポストイタリアーネの目覚しい変化」を引き起こします。

長い列は消えてなくなり、郵便局の中は明るく笑顔が絶えず、国民の郵便局に対するイメージは一新されます


例えば皆さんがイタリアに行って、ポストイタリアーネの郵便局に入ると、お客様の満足度を自動的に調査できる自動マシンがおいてあることに気がづかれると思います。

$世界一やさしい「郵政民営化」のお話


郵便局を利用したお客さんは、帰り際に気楽に、無記名でボタンを押していきます。

とっても満足ならニコニコマーク。そうでもなければ普通の顔のマーク。

ここで調査された顧客満足の結果は、
なんと、各郵便局の局長の評価に反映されて行く仕組みになっています。


すごい徹底ぶりですね。


さて、郵便局の改革に大成功したポストイタリアーネは、地場の金融機関を買収したりしながら、金融事業にも参入していきます。

ここでは当然「100%政府保有で、民間と同じ金融事業をするなんて、民業圧迫じゃないかー」という議論がおこり得ます。


ですが、ポストイタリアーネはとても積極的に地元の銀行や保険会社と話をし、

「うちのほうが拠点の数多いし、お宅の支店がないところにも店(郵便局)あるから、お宅の商品を代行販売してあげるね」

という約束を交わしていきます。

結果的に、郵便局が積極的に金融業に参入することで、地元銀行の住宅ローンや、地元保険会社の保険商品がたくさん売れるようになる、かえってメリットのほうが大きい、、

という議論に最終的に落ち着いたようでした。


こういうポストイタリアーネのケースをみていると、

「とても敏腕で有能な経営者が、正しい道筋で徹底的に変革を仕掛ければ、株式上場するしない全く関係なく、変革は実現できる可能性が高い」

ということなのかな、とも思います。


株式を上場する、ということは、経営者に対するチェック事業採算が改善しているかどうかのチェックを、誰の目からもガラス張りにすることです。

そんなガラス張りチェックがなくても、しっかり「変革」を実現できる経営ができるのかどうか。

日本の郵政民営化の議論は、むしろ、その本質に集中すべきなのかもしれませんね。


さて、ちょっとインターネットが切れそうなので、
次回のアップデートはあさってになりそうです。

どうぞお楽しみに。

次はドイツについてお話してみたいと思います。

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