★1960年 日野コンマース 国産初のFFワンボックス ~ 自動車カタログ棚から 242 | ポルシェ356Aカレラ

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木曾の御嶽山が噴火しました。御嶽山は過去2万年で僅か4回のみ、過去5000年は一度も噴火せず、永らく死火山と思われていたのが1979年(昭和54年)に噴火して以来、活火山となり2007年にも噴火しています。今回の噴火が大きな被害をもたらさないよう祈っています。
御嶽山と言えば、私が最初に上松を訪ねたのは木曾森林鉄道がまだ現役だった1969年(昭和44年)、小4の時でした。以来、何度となく木曾森林鉄道の廃線跡を訪ねているので木曾には親近感があり他人事とは思えません。

今日は自動車カタログ棚シリーズの242回目、国産旧車の日野コンマースをサクっとピックアップします。本当は玩具・模型カタログ棚シリーズの記事を先にアップしてから自動車カタログの記事をアップする予定だったのですが時間がなく玩具・模型カタログ棚の方は記事をつくることが出来ませんでした。これから10月半ばにかけて趣味の音楽の関係でかなり忙しくなるため、暫くは極く簡単な記事しかアップ出来なくなりそうです。
 




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★1959年(昭和34年)10月24日~11月4日に東京・晴海に会場を移して初めて開催された第6回東京モーターショー(当時の正式名称は全日本自動車ショー)で日野自動車は1ボックス商用車コンマース(Commerce)を公開し、翌1960年(昭和35年)2月より市販に移した。
当時、技術提携により生産していた日野ルノー4CV(本シリーズ第153回記事参照)が搭載していた4気筒OHV748cc/21psエンジンを改良したGP10型OHV836cc/28psエンジンを搭載した日本車史上でも稀なFFフルキャブオーバーのワンボックスモデルであった。コンマースの市販は、ルノー4CVの後継車となるべくデビューしたコンテッサ900(本シリーズ第160回記事参照)や小型トラック「ブリスカ」が1961年(昭和36年)4月に発売されるより1年以上早く、日野オリジナルの小型車としては記念すべき最初のモデルとなった。

★コンマースの企画・設計・試作は1957年(昭和32年)に開始され、RR車ルノー4CVをベースとしたワンボックスということから、同じRR車VWビートルの派生モデルVWタイプⅡも当然参考にされたと思われるが恐らくリアエンジン部分のデッドスペースによる荷室縮小のデメリットから見送られ、最終的にFFとされたのは1947年デビューのシトロエンHトラック/バン(Citroën Type H)や1959年デビューのルノー・エスタフェット(Renault Estafette)の影響が大きかったのではないだろうか。
FF、4輪独立懸架という極めて先進的なメカを採用したコンマースは、1961年秋にはコンテッサ900と同じGP20型893cc/35psエンジンに換装し2割以上のパワーアップが図られた。しかし、絶対的にアンダーパワーであったこと、1959年デビューのFF英車ミニ(ADO15)が採用した等速ジョイントを未だフロントに備えていなかったこと、積載時の前輪トラクション不足による走行能力の低さ(荷物を沢山積むと坂は登れない)など技術的な問題もあり1962年(昭和37年)10月に生産を中止した。コンマースの総生産台数は2344台といわれ、生産期間2年8ヶ月(32か月)で割れば月産70台強という数字となり当時でも稀少車の部類だったことが分かる。
コンマースの実車は八王子の日野オートプラザと福山自動車時計博物館に保存されている他、山梨県内には廃車体が現存しているようだ。



【主要スペック】 1960年 日野コンマース PB10型 (1960 Hino Commerce PB10)
全長3940㎜・全幅1690㎜・全高1910㎜・ホイールベース2100㎜・車重1035kg・FF・水冷4気筒OHV836cc・最高出力28ps/4600rpm・最大トルク5.3mkg/2800rpm・変速機4速MT・四輪独立懸架・乗車定員2名・最大積載量500kg・電装系12V・シャシー開始番号PB10-60-200001・最高速度82km/h・販売価格59万5000円



●日野コンマース「マックスウェル・インスタントコーヒー」
日野自動車の広報誌「日野ニュース」1961年10月号(通巻55号)より。日野ニュース誌上でコンマースを真横から写したカラー写真のネガを募集し、読者投票で第1位になったデザインの写真投稿者に賞金1万円を贈るとした「日野コンマース誌上デザインコンクール」が数次に亘り開催された中の1枚。AGFのHPによれば、このマックスウェル・インスタントコーヒーの発売は1960年。しかし、誌上でコンマースのコマーシャルカーの写真を募ってみても、当時でも路上で滅多に見かけなかったと思われるコンマースの写真が実際に読者から送られてきたのか疑問ではある。
マックスウェルコーヒー

第4回誌上デザインコンクールの8台(最下部にどれが良いデザインか日野の宣伝課へ葉書で応募するよう記載されています。)
第4回コンクール



●1960年3月 日野コンマース カタログ (縦23×横29cm・3つ折6面)
日野カタログNo.R102。3つ折だがこれが初期の本カタログかもしれない。紙質がシボ地のものと光沢紙のもののバリエーションあり。「新機軸の万能商業車」のコピーはコンマースの生涯を通じて使われた。
簡易表紙

【中面から】
リアの丸味を帯びたラインはVWタイプⅡと似ている。
簡易(1)リアアングル

ミニバス
簡易(2)ミニバス

病院車
簡易(3)病院車

宣伝車
簡易(4)宣伝車


●1960年 日野コンマース 簡易カタログ (縦20.8×横20cm・3つ折6面)
日野カタログNo.:印字なし。雨の夜に赤い傘の女性という印象的な表紙。
簡易雨表紙

【中面から】
「全く新しいVANです。」
簡易雨(1)全く新しいバン

ナンバー「1961」の部分は1960の印字の上に小さな紙が貼られている。
簡易雨(2)1961貼付

病院車
簡易雨(3)病院車

牛乳運搬車
簡易雨(4)牛乳運搬車

幼稚園バス
簡易雨(5)幼稚園バス

スペック
簡易雨(6)スペック



●1960年8月 日野コンマース 本カタログ (A4判・10頁)
日野カタログNo.R106。いかにも昭和30年代らしい天然色カラーが味わい深い。ピンクはパブリカUP10、三菱500、マツダK360、マツダB360等にも使用されたこの時代の流行色。女性の乗る半世紀以上前とは思えないお洒落な自転車にも注目。
608表紙

【中頁から】
ライセンスナンバーは西暦を示す「1960」
608(1)1960ナンバー

2人乗り500kg積
608(2)500kg積タイプⅡ似

みんなで楽しいピクニック
608(3)ピクニック

室内&回転半径4.6mを活かした縦列駐車の図
608(4)室内&回転半径小4.6m

FFレイアウト&28psエンジン
608(5)FF&エンジン

図面: 2人乗り500kg積バン(PB10型)
608(6)500kg積バン図面

図面: 5人乗り300kg積バン(PB10-S型)
608(7)300kg積バン図面

図面: 10人乗りバス(PB10-P型)
608(8)10人乗バス図面

図面: 11人乗りバス(PB10-B型)
608(9)11人乗バス図面



●1960年12月 日野コンマース 輸出向け本カタログ (A4判・英文16頁)
日野カタログNo.31-E。上掲の国内版本カタログと一見同じながら別ショットが使われており、国内版カタログでは前方を見ている男女がこのカタログでは向かい合っている。中頁は国内版カタログの単なる言語替えではなく全く構成も写真も異なり、コンマースのカタログの中では恐らく最も豪華なもの。輸出先仕向け地は不明。
英文表紙

【中頁から】
英文(1)中
英文(2)中

みんなで楽しいピクニック・・・・上掲の日本語版とは別ショット
英文(3)ピクニック別ショット

透視図
英文(4)透視図

室内&特徴の解説
英文(5)室内・各部解説

日東紅茶をバックにした何とも魅力的な写真
英文(6)日東紅茶

スタンダードバン
英文(7)スタンダードバン

5人乗り貨客兼用バン
英文(8)5人乗バン

マイクロバス「ワゴネット」
英文(9)マイクロバスワゴネット

スペアタイヤは左右フロントシートの間に置かれている
英文(10)スペア前席の間

シートアレンジメント5種類
英文(11)シートアレンジ5種類

裏表紙
英文(12)裏表紙



●1961年3月 日野コンマース 本カタログ (A4判・10頁)
日野カタログNo.R106。上掲の1960年8月版とカタログナンバーも表紙も同じながら、中頁のクルマのナンバーなど細部が変更されている。
61表紙

中頁から: 上掲の1960年8月版カタログでは1960だったナンバープレートが「4ひ0441」に差し替えられている。
61中違う頁ナンバー



●1962年1月 日野コンマース 商用 専用カタログ (A4判・8頁)
日野カタログNo.T116。エンジンをコンテッサ900用の893cc35psに換装。車両型式はPB10からPB11となり、積載量は2人乗り600kg、5人乗り400kgに増えた。カタログは商用バンとマイクロバスとが別々となった。昭和30年代を象徴するような団地をバックにした表紙。
62団地表紙

【中頁から】
高台からこのように東京タワーが見える場所はどこでしょうか。
62団地(1)東京タワー運転席

横を走るのは310ブルーバードと2代目コロナライン、後ろに観音開き初代クラウンの黄ナンバーのタクシー
62団地(2)310ブル・コロナライン観音

2人乗り600kg積み標準バン
62団地(3)600kg積バン

5人乗り400kg積みバン
62団地(4)400kg積5人乗バン

35psエンジン
62団地(5)35psエンジン

日航機とJAL系のエアポート・グランド・サービス(AGS; Airport Ground Service)のコンマース
62団地(6)日航機とAGS

スキーを積んで・・・・。
62団地(7)スキーを積んで

洋品店「キャプテン・シャツ88」
62団地(8)キャプテンシャツ88

洋菓子屋さん
62団地(9)洋菓子屋さん

カタログ表紙写真のメンバーでの別ショット
62団地(10)表紙別ショット



●1962年1月 日野コンマース ミニバス 専用カタログ (A4判・8頁)
日野カタログNo.R110。PB11-P型(10人乗)とPB11-B型(11人乗)を掲載。表紙の湖はどこでしょうか。
62バス表紙

【中頁から】
62バス(1)中

周りには初代キャブライト、ダイハツミゼットMP、観音開き初代クラウンの黄ナンバーのタクシーなどが写っています。
62バス(2)キャブライト他アップ

幼稚園バス
62バス(3)幼稚園バス

病院車: 担架に人が乗っているのが妙にリアルです。
62バス(4)病院車担架に人

病院車レイアウト
62バス(5)病院車レイアウト図

シート配置: 上から10人乗り、11人乗り、園児バス
62バス(6)シート配置3種10人11人幼児





★オマケ: 広報誌「日野ニュース」1962年1月号 表紙 (B5判)
現在に至るまで日野コンマースには模型、玩具の市販製品は存在しないので今回のオマケはなし。とするつもりだったのですが、この表紙の右下には日野自動車がオリジナルで製作(あるいは銀座・天賞堂模型部あたりに製作依頼)した白赤ツートンのコンマースのスペシャルモデルが写っています。写っている5台のモデル(コンテッサ900、ブリスカ、ZGダンプ等)のスケールはマチマチで子供(恐らく私と同年代位でしょう)の大きさからするとコンマースの模型は全長30cm程度はありそうに見えます。
広報誌表紙