★1959年 日野ルノー4CV 昭和30年代 神風タクシー ~ 自動車カタログ棚から 153 | ポルシェ356Aカレラ

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ルノー 4CV(Renault 4CV)は、フランスのルノー公団により1947年(昭和22年)から1961年(昭和36年)まで生産販売された先進的な小型乗用車。累計110万5547台を生産し、長いフランス車の歴史上で初のミリオンセラー車となった。ベルギー、イギリス、オーストラリア、スペイン、南アフリカ、そして日本でも組立ないし国産化が行われた。
日本では日野自動車が1953年(昭和28年)3月15日から1963年(昭和38年)8月まで計3万5100台のルノー4CVを生産した。日野ルノーといえば、昭和30年代の風物詩的なクルマ。四輪独立懸架、軽量モノコックボディ、ラック&ピニオンのステアリングといった進歩的な設計は同時代の日本車に比べて総じて優れていたが、昭和30年代はマイカー時代以前であったので、その多くはタクシーとして日本全国で活躍した。昭和30年代、歩合給を稼ぐため荒っぽい運転のタクシーが蔓延して「神風タクシー」と言われた時代の代表的な1台でもあった。

★ルノー4CVはフォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)と同様にRRレイアウトの経済的な国民車を目標として設計された。フル・モノコック構造の軽量な4ドア4座セダンボディにサスペンションは前後ともコイルスプリング支持の四輪独立懸架。車体後部に水冷直列4気筒OHVエンジンを縦置きし、後輪を駆動するリアエンジン・リアドライブ。ステアリング機構は操縦性の優れたラック&ピニオン式。当初は760cc・17馬力だったが、国際レースのクラス分けが750ccを境としていたため間もなく12cc減の748ccに縮小された。このエンジンに3速マニュアルミッションを組み合わせ、600kg弱のボディを最高速度100km/hまで引っ張った。軽く俊敏なルノー4CVはル・マン、モンテカルロ等のモータースポーツに参戦し幾多のクラス優勝を獲得している。

★ルノー4CVは1940年(昭和15年)9月に開発が始められ1942年(昭和17年)2月には試作エンジンが完成した。第二次世界大戦中のフランスでは乗用車の開発および生産が厳しく制限された中で内密に開発は行われた。フェルディナント・ポルシェがフランス抑留中に設計に関してのサジェスションを与えたとされる。試作車を見たポルシェは「良い設計の優れた自動車」と評価し、更にサスペンションとステアリングの改良に関してアドバイスを与えた。当時のルノーは小型車4CVと並行してFR2リッター級中型セダンの設計も進めていたが、戦後の窮乏期に当ってまずは4CVを先に市場投入し、中型セダンは4CVより4年遅れの1950年(昭和25年)に「ルノー・フレガード」として発表された。

★1946年(昭和21年)10月の戦後間もないパリサロンでルノー4CVはデビューした。パリサロンの展示車はアフリカ戦線向け軍用車両用の黄色いペイントのストックでボディが塗られたために、「黄金虫」とか「バターのかたまり(La motte de beurre)」などと揶揄され当初市場の反応は芳しくなかった。しかし、安さにつられて注文した人々に納車が始まると、小柄ながら俊敏な走りで評価は一変した。4CVの生産は軌道に乗り、戦後の国営化で再発足したルノー公団の経営を支えた。1949年(昭和24年)には3万7千台が売れて、フランスで最もシェアの高いクルマとなり生産は丸15年に亘って続けられた。1956年(昭和31年)には4CVの後継車として850ccRRのルノー ドーフィンが発表されたが、ドーフィンは4CVよりも一回り大きく高価であり、結局4CVは廉価版として、ドーフィンの生産終了前年の1961年まで並行生産された。これはVWのタイプ3がデビュー後も根強い人気のビートルが長く生産されたことと事情は似ていた。4CVの仏本国生産終了後は4CVと同じエンジンを搭載した前輪駆動車ルノー4が1961年(昭和36年)に入れ替わりにデビューし4CVと同価格帯で販売された。

日野ルノー
日本においては、戦中戦後の自動車技術の立ち遅れを取り戻すべく日野自動車が1953年(昭和28年)2月11日にルノー公団と契約を結び1953年(昭和28年)3月15日に組立第一号車が完成、翌4月から市販が開始され、1963年(昭和38年)8月までの11年以上の長期に亘り生産を行った。日野では順次国産部品の調達率を高め、1957年(昭和32年)10月に完全国産化を達成、フランス本国での生産が終了した1961年以降も契約を更新して1963年まで生産を継続した。日野版4CVは、日本の極悪な道路事情に対処するため、足回りの強化やエンジンを改良した他、1954年(昭和29年)には当時の全長3.8mを境として制限速度が10km異なるという法規に適合させるため、ボディ側から伸びたステーを延長して前後バンパーを取り付け車体長を伸ばすという苦肉の措置が取られた(1960年以降は道交法改正により元の全長に戻された)。
外観上は、1953年(昭和28年)の初期車両はフロントグリルが仏本国の1947年~1953年型と同じ6本(6本ヒゲ)、1954年(昭和29年)から1956年(昭和31年)は仏本国の1954年~1961年型と同じ3本(3本ヒゲ)、1956年(昭和31年)10月発表の1957年型(PA57型)以降は両側サイドが繋がった仏本国版には存在しない日野独自のグリルが装着された(現存する日野製ルノー4CVの大半はこの日本オリジナル・グリルの車両とみられる)。
日野ルノーは昭和30年代に全国でタクシーとして非常に多く使用されたため、同時代の松本清張氏を始めとする小説等に「ルノーのタクシー」という記述がみられる他、当時の日本映画でも多数日野ルノーが活躍する姿を見ることが出来る。

違法な白タク営業中の3本ヒゲの日野ルノー (1954年頃)
後席に乗り込む女性のファッションは60年前とは思えない位に洒落ている
$1959PORSCHE356Aのブログ-白タク日野ルノー

【主要スペック】 1959年 日野ルノー4CV デラックス(PA59型)
全長3845 ㎜・全幅1435㎜・全高1440㎜・ホイールベース2100㎜・車重640㎏・RR・KGH20型水冷直列4気筒OHV748cc・最高出力21ps/4000rpm・最大トルク5.0kgm/1800rpm・変速機3速MT・電装系6V・乗車定員4名・燃費16km/L・最高速100km/h・販売価格67万円


●1953年 日野ルノー  簡易カタログ (縦21×横15cm・2つ折)
最初期の通称6本ヒゲ。日野ルノーのカタログ類は実車が基本的に毎年型式が変わり小変更を繰り返したため11年以上に亘る販売期間中に夥しい種類が発行されており、ここでは資料性を考慮し原則としてカタログの顔である表紙の画像をご紹介します。また、仏本国版には良いカタログが多くありますが、それは項を改めてご紹介したいと思います。
$1959PORSCHE356Aのブログ-53簡易

●1953年 日野ルノー  本カタログ (縦24×横31cm・4つ折)
最初の本カタログ。仏本国版カタログの言語替えで中頁には日野では生産されなかったコンバーチブルやサンルーフ仕様も掲載されている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-53本表紙
裏面はモンテカルロラリーで活躍する写真
$1959PORSCHE356Aのブログ-53本裏モンテカルロラリー

●1954年 日野ルノー 簡易カタログ(縦18×横25cm・3つ折)
6本ヒゲから3本に変更。この時から前後バンパーも延長された。日本国内で撮られた写真で構成された日野独自のカラーカタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-54簡易(1)カラー

●1954年 日野ルノー 簡易カタログ(縦16×横21cm・2つ折)
日野独自に作成されたカタログ。表紙写真は上のカラーカタログと同じ場所のようだ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-54簡易(2)白黒

●1954年 日野ルノー 簡易カタログ(縦10×横21cm・2つ折)
日野独自に作成されたカタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-54簡易(3)横長

●1954年 日野ルノー 本カタログ(縦17.5×横26.5cm・4つ折)
仏本国版の言語替えカタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-54本表紙・外人女性

●1955年 日野ルノー 本カタログ(縦21×横27cm・4つ折)
仏本国版の言語替えカタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-55本表紙・枠付き

●1956年 日野ルノー 本カタログ(縦30×横21cm・3つ折)
表紙は仏本国版のイラストを流用しているが中は国内で撮られた写真を使った日野オリジナルのフルカラーカタログ。
$1959PORSCHE356Aのブログ-56本表紙・羊飼い

●1957年 日野ルノー 簡易カタログ(縦9×横26cm・4つ折)
このモデルからフロントグリルが仏本国にはない左右が上下に繋がった日野独自のものとなった。カタログもこの年以降のものは全て日野オリジナル。
$1959PORSCHE356Aのブログ-57簡易(1)横長カラー

●1957年 日野ルノー 簡易カタログ(縦20×横15cm・2つ折)
$1959PORSCHE356Aのブログ-57簡易(2)手振る白黒

●1957年 日野ルノー 本カタログ(A4判・16頁)
数ある日野ルノーのセールスカタログの中の白眉と言える素晴らしいカタログ。ボディカラーは仏本国の6色を凌ぎ9色も選べた。
$1959PORSCHE356Aのブログ-57本表紙
中頁から
グレードはスタンダードとデラックスの2種類
$1959PORSCHE356Aのブログ-57本1中
$1959PORSCHE356Aのブログ-57本2中
$1959PORSCHE356Aのブログ-57本3中

●1958年 日野ルノー 簡易カタログ(縦17.5×横18cm・2つ折)
室内高を高くし、リアウインドを拡大した。同様の改良は日産オースチンA50でも申し合わせたかのように同時期に行なわれている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-58簡易(1)赤イラスト

●1958年 日野ルノー 簡易カタログ(縦17×横26cm・3つ折)
コップ一1杯のガソリンで4キロメートルのコピー
$1959PORSCHE356Aのブログ-58簡易(2)水辺横長カラー

●1958年 日野ルノー 簡易カタログ(縦24×横24cm・4つ折)
上の簡易カタログと同じ場所で撮影された表紙。フルカラー。
$1959PORSCHE356Aのブログ-58簡易(3)水辺大判正方形

●1958年 日野ルノー 本カタログ(縦21×横21cm・16頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-58本表紙

●1959年 日野ルノー リーフレット(B5判・両面1枚)
$1959PORSCHE356Aのブログ-59リーフレット山の中

●1959年 日野ルノー 簡易カタログ(縦17×横18cm・2つ折)
表紙には「日野ルノーはお金のかからない車です」のコピー
$1959PORSCHE356Aのブログ-59簡易(1)緑正面

●1959年 日野ルノー 簡易カタログ(縦18×横26cm・2つ折)
表紙に「1日の維持費226円」のコピー。中はルノーがどれだけ低廉な維持費で済むかの説明でカタログというより販促用パンフレット。
$1959PORSCHE356Aのブログ-59簡易(2)1日226円赤ルノー

●1959年 日野ルノー 本カタログ(縦21×横21cm・20頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-59本表紙

●1959年10月 日野ルノー リーフレット(B5判・両面1枚)
1960年型では熱線吸収ガラスを採用(デラックスのみ)
$1959PORSCHE356Aのブログ-5910リーフレット60年型

●1959年10月 日野ルノー 簡易カタログ(縦17×横24cm・3つ折)
本カタログの中頁の写真を使った魅力的な表紙
$1959PORSCHE356Aのブログ-5910簡易パーキングメーター

●1959年? 日野ルノー「ドクターカー」チラシ(B5判・片面印刷)
助手席側を平らなベッドとして患者輸送にも使えるとの説明だが、ドアからでは担架も入らず、元々ルノーは室内長も短いので患者輸送に使うには少々厳しい。
$1959PORSCHE356Aのブログ-59ドクターカーちらし

●1960年 日野ルノー 簡易カタログ(縦17×横18cm・8頁)
法改正によりバンパーをステーで延長して全長を伸ばしていたものが元の全長に戻された。
$1959PORSCHE356Aのブログ-60簡易お花畑

●1960年 日野ルノー 本カタログ(縦21×横21cm・26頁)
$1959PORSCHE356Aのブログ-60本文字のみ表紙

●1961年 日野ルノー リーフレット(B5判・両面1枚)
スタンダード49万8000円、デラックス57万円。価格はノックダウン当初の82万5000円から年々下げられた。
$1959PORSCHE356Aのブログ-61リーフレット価格入り

●1962年 日野ルノー リーフレット(B5判・両面1枚)
フロントグリル中央の菱形エンブレムの色が赤から金色に変わった。
$1959PORSCHE356Aのブログ-62年リーフレット林の中

●1962年 日野ルノー 本カタログ(縦21×横21cm・12頁)
日野ルノー最後のカタログ。既にコンテッサ900がデビューし販売の主力ではなくなったことからカタログの頁数も大幅に減っている。
$1959PORSCHE356Aのブログ-62本表紙3台

●1955年 日野ルノー 取扱説明書(縦18×横12.5cm・78頁)
カタログと同じメーカー発行の印刷物としては実車を買った時に付いてくる取説があり、詳細な内容は実車が手元になくともオーナー気分を味わえる。
$1959PORSCHE356Aのブログ-55年取説

●1962年 日野ルノー 取扱説明書(縦18×横12.5cm・82頁+配線図等折込2枚)
$1959PORSCHE356Aのブログ-62年取説



★オマケ(その1): フランス本国でのルノー4CV テレビCM



★オマケ(その2): 米澤玩具 1/19スケール 1960年 日野ルノー4CV
1959年発売。当時定価200円。全長19.5cm。ルノー4CVのモデルは仏本国の実車をモデルにした欧州製の当時物ミニカー等も多数出されているが、今回のオマケでは日野ルノーをモデルとした当時物のみをご紹介します。この米澤製日野ルノーは欧州製を含めた中でも白眉と言える傑作モデル。前後バンパーが延長されていた最後の1960年型をモデルにしている。米澤では輸出向けにはこの日野オリジナルグリルのまま左ハンドルとした製品を船積みしていた。
$1959PORSCHE356Aのブログ-米澤(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-米澤(2)


★オマケ(その3): マルサン 1/19スケール 1956年 日野ルノー4CV
当時定価160円。全長19.5m。運転席に青または白のプラスチック製ドライバー人形が乗っているのが特徴。モデルとなった実車は1956年までの3本ヒゲだが、日野オリジナルグリルに改めないままで実車生産終了後も1965年頃までマルサンのカタログに載っていた。前後バンパーが延長されていることで日野ルノーと判る。
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン(1)
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサン(2)


★オマケ(その4): 増田屋 1/21スケール 1954年&1957年 日野ルノー4CV
当時定価140円。全長18cm。増田屋斎藤貿易からは3本ヒゲモデルと後期製品として日野オリジナルグリルのモデルの2種類が発売された。1954年に日野ルノーを模した玩具として初めて市場に出たモデル。初期は電動、後にフリクション仕様となった。これも前後バンパーが延長された日野仕様。赤が3本ヒゲの初版、青と緑が日野グリルの2ndモデル。
$1959PORSCHE356Aのブログ-増田屋(1)
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★オマケ(その5): マルサン 1/25スケール 1959年日野ルノー プラモデル
当時定価330円。マルサン品番7031。日本のプラモデル黎明期の傑作モデル。初版はマルサンではなく和工樹脂。
$1959PORSCHE356Aのブログ-マルサンプラモ


★オマケ(その6): 緑商会 1/60スケール1959年日野ルノー プラモデル
当時定価30円。トミカサイズのプラモデル。駄菓子屋等でも売られたチープキットだが箱絵が味わい深い。
$1959PORSCHE356Aのブログ-緑商会プラモ