★1963年マルサン商店 ブルドックトイ 日野ルノー ~ 玩具・模型カタログ棚から 011 | ポルシェ356Aカレラ

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★金属玩具(ブリキ)の自動車では最も市場価値が高いと言われる1956年フォード・フェアレーン(箱付ミント品の相場価格US $23000≒日本円250万円前後)や独ガマ製コピーまで生まれ不朽の名作として有名な1951年キャデラックを世に出したマルサン商店の歴史は古く、石田直吉氏(1878-1940)が1923年(大正12年)に浅草・田原町に石田製作所を創設したことに始まる。
創業から10年を経た1933年(昭和8年)に直吉氏の長男・石田晴康氏が石田製作所の業務を引き継ぎ「マルサン」に社名変更した。石田製作所の創設から戦後初期にかけては子供向け双眼鏡や幻灯機といった光学玩具を主に製造するメーカーであった。戦後、1947年(昭和22年)に「マルサン商店」として一面の焼野原の中でゼロから再スタートし、1950年代には金属玩具(ブリキ)を中心として幅広い分野の玩具製造・販売を手掛けた。


1950年代後半(1957~1958年)には、本物の自動車と同レベルの0.8ミリ鉄板を使用した頑丈な「ブルドックトイ」の生産を開始、あまりにも丈夫で壊れないため買い替え需要が生れないというメーカーにとってはデメリットのある商品であったが、1960年代前半には浩宮様(現皇太子殿下)がブルドックトイの自動車で遊ぶ姿が報道されたことにより皇室御用達玩具として人気に火が付いた(浩宮様の玩具としては米澤製1960年キャデラック等も知られている)。

1958年(昭和33年) には米レベル製品のデッドコピーながら日本初のプラスチック製組立模型として原子力潜水艦ノーチラス号を発売。発売に際して「プラモデル」の名称を商標登録し、「プラモデルと呼べるのはマルサンだけ」という有名なコピーも生み出した。

1966年(昭和41年) には折からの怪獣ブームに乗りウルトラQ・ウルトラマンの登場キャラのプラモデルおよびソフトビニール人形が大ヒット、翌1967年(昭和42年)には社名を「マルザン」に改めると共にウルトラセブン登場キャラ(ウルトラホーク1号他)のプラモデル等がヒット。しかし、1968年(昭和43年)12月に惜しくも倒産した。その後、1969年(昭和44年)4月にはマルサンとして再々出発し、かつてのような業界をリードする華々しさは失いつつも玩具業界における業務を継続し現在に至る。


※今回は手元に数冊ある1960年代のマルサン商店のカタログの中から1963年版をピックアップします。例によって全頁の紹介は困難なため個人的な視点から抜粋してご紹介します。




●1963年 (昭和38年) マルサン商店 総合カタログ (縦24.5×横26cm・20頁)
表紙には大きなブルドッグの絵と共に「ブルドックトイ」の印字があるが、自動車・鉄道・飛行機・船といった乗物玩具を中心に石田製作所時代からの光学製品「双眼鏡」を始め、マルサンのヒット作だった「貯金箱(金庫)シリーズ」、ピストル、女の子向けのミニチュア・ガスレンジ、ローラースケートといったものまで非常に幅広い商品が掲載されている。しかし、プラモデルについては玩具とは別業務と位置付けカタログが別に発行されていたためか全く掲載されていない。なお、カタログに記載されている売価は全国売価で都内売価は何れも若干安かった。
表紙


【中頁から】

ブルドックトイ・・・・萬代屋(現バンダイ)の実車を忠実に縮小したモデル玩具を謳った赤函シリーズあたりとは対極にあるようなシリーズで、その実車とはかけ離れた玩具然とした造りから半世紀を経た現在でもアンティーク玩具市場での人気は低い。しかし、厚い鉄板を使用したため当時の定価は同サイズの他社製品より遥かに高価だった。ブルドックトイの名称はブルドッグのように強く頑健という意味と当時のマルサン社長・石田實氏の愛犬がブルドッグだったことに因むと言われる。ブルドックは正式にはブルドッグ(Bulldog)で最後の一文字は濁点が付くがマルサンのブルドックトイには濁点が付かない。ブルドッグというと個人的に一番に連想するのは、ちびまる子ちゃんのクラスメイト「みぎわさん」の飼い犬アマリリスでどうにもブルドッグのイメージは良くない。

・全長61cmの子供が乗って遊ぶチルドレントラック。カタログ発行時点では未発売だったようで価格が印字されていない。
(1)チルドレントラック

(2)解説


・品番023 救急車 20cm (300円)
・品番022 郵便車 20cm (300円)
・品番020 ステークトラック 20cm (300円)
・品番021 ピックアップトラック 20cm (300円)
・品番019 動物バス(490円)
(3)救急車~動物バス

ピックアップトラックと動物バスのアップ。動物バスは2階へ上るロンドンバス風の湾曲した階段が魅力的。
(4)動物バスアップ


・品番007 38cm ダンプカー (1200円)
・品番004 45cm ダンプカー (1650円)
・品番003 47cm クレーンカー (2600円)・・・現在の貨幣価値では2万円以上と思われる大型高額商品
(5)ダンプ2台クレーン1台


・品番010 30cm 郵便車 (710円)
・品番013 愛知機械工業ヂャイアントダンプ (550円)
・品番011 30cm 救急車 (710円)
(6)ヂヤイアント他3台


品番013 愛知機械工業ヂャイアントダンプのアップ・・・砂場遊び用のシャベルと1輪車「猫車」が付属。後にウサギヤ ブランドでも売られた(自動車カタログ棚シリーズ第187回記事参照)
(7)ヂヤイアントアップ


・品番008 30cm ステークトラック (660円)
・品番009 30cm ピックアップトラック (660円)
・品番005 41cm 郵便車 (1400円)
・品番024 41cm 日通トラック (1400円)
(8)ステーキ~日通トラック


・品番014 アトラスダンプ
・品番017 112cm 汽車セット (1800円)
・品番002 60cm マンモスタンカー (2200円)
(9)アトラスダンプ~マンモスタンカー


車重580kgのパブリカバンの実車が載っても壊れないブルドックトイ。200kgの加重に耐えられる品番005の郵便車4台でパブリカの四輪を支えられると無類に丈夫であることをアピールした頁。
(10)パブリカ

(11)子供と郵便車


品番300 特大日航機、品番018 カーゴマスター50cm(1650円)他
(12)日航機他


・品番137 22cm サンビームサイドカー (380円)
(13)サンビームサイドカー


・品番179 テープレコーダージープ (270円)
・品番124 動力ルノー[1956年日野ルノー4CV] (220円)
(14)ジープ&ルノー


・品番125 愛知機械工業ヂャイアントコニー360ライトバン (140円)
・品番125 愛知機械工業ヂャイアントコニー360トラック (130円)・・・このコニー2種は木製ソリッドキットを除けば唯一の立体造形モデルだがジャンクでさえ殆ど現存しないレア品。
(15)コニー2台


魅力的なバス各種
(16)バス各種

(17)バス各種2


・品番174 28cm 日産エコー幼稚園バス (260円)・・・天窓までくり抜かれて室内のシートも造りこまれた魅力的なバスモデルだが殆ど現存していない。側面には三匹の子豚「ブーフーウー」がプリントされている。後に室内を省略して「はとバス」仕様としても販売された(自動車カタログ棚シリーズ第80回記事参照)。
(18)日産エコー


・品番104 34cm 東京都営 大トロリーバス(420円)・・・マルサンからはこの大サイズの他に小サイズの都営トロリーバスが2種類の合計3種類もの都営トロリーバスが発売されていた (自動車カタログ棚シリーズ第105回記事参照)。製品のバックに配された101系統の都営トロリーバスと観音クラウンの実車写真が泣かせる。
(19)大トロリー他2種


非ブルドックシリーズのマルサントラック製品各種
ブルドックシリーズ以外の通常の薄いブリキ素材で造られ当時安価で売られた大量のマルサン製トラック製品群は実に魅力的で明治牛乳、森永ホモ牛乳等の所謂牛乳モノが多く企業物コレクターにも人気が高い。
(20)トラック1

(21)トラック2

(22)トラック3

(23)トラック4

・品番119 35cm 日産680型トラック (270円)
(24)日産680トラック

・品番181 25cm 森永ホモ牛乳タンカー (190円)
(25)森永ホモタンカー

・品番無記載 25cm 明治牛乳タンカー (190円)
(26)明治タンカー

・品番サイズ価格 無記載 イーグル森永ホモ牛乳トラック
(27)イーグル森永トラック

・品番151 28cm 森永トラック (200円)
(28)森永トラック28cm

・品番150 33cm 明治牛乳トラック (330円)
(29)明治牛乳トラック33cm

・品番175 25cm 森永ドライミルク・ボックスカー (240円)
(30)森永ボックスカー

・品番118 25cm 郵便トラック (240円)・・・貯金箱にも利用できる鍵付き
(31)郵便トラック

・品番無記載 22cm コカコーラ トラック (150円)
(32)コカコーラトラック

・品番153 25cm 日通ボックスカー (240円)
(33)日通ボックスカー

・品番182 38cm ワールド日通トラック (430円)・・・札幌、東京、大阪、福岡と地名のプリントが魅力的。
(34)ワールド日通トラック


汽車・電車 鉄道物各種・・・・・地下鉄丸ノ内線、101系中央線、湘南電車「東海号」ほか
(35)丸ノ内線他

東海道夢の超特急ほか・・・東海道新幹線開業前のため実車写真も試作編成
(36)超特急他


ヒット作「金庫シリーズ」・・・水車小屋、お城、五重塔、お倉、ポストなど
(37)金庫1
(38)金庫2


商品一覧表・・・品番、商品名、都内売価、全国売価が記載されており資料価値は高い。
(39)商品一覧1
(40)商品一覧2
(41)商品一覧3

裏表紙
(42)裏表紙

台東区浅草寿町1の12の住所、電話番号が記載されている。内地部 内地課と印字があり、玩具の大半が輸出されていた時代でもあり輸出向け部署が他にあったことが判る。
(43)マルサン住所アップ






★オマケ(その1): マルサン 1/19スケール 1956年 日野ルノー4CV (PA56)
全長19.5cm。マルサン品番124。日野ルノーは1957年には国内オリジナルのグリル左右が繋がったデザインに変ったにもかかわらずフロントグリルが3本髭の1956年式のまま1960年代半ばまで連綿と売られたロングセラー製品。販売期間が長かった割には現存する個体が少ない。全長を伸ばすため前後バンパーが延長されていることで日野ルノーをモデルとしていることが判る。今回の1963年版カタログに掲載されている定価は都内200円・全国220円。カラーバリエーションは濃青・赤・草色等。ルノーの当時物モデルは米澤玩具や増田屋にもあるがマルサン製はプラ製のドライバーのフィギュアが乗っているのが特徴 (日野ルノーの当時物モデルについては自動車カタログ棚シリーズ第153回記事のオマケ参照)。
ルノー(1)
ルノー(2)
ルノー(3)
ルノー(4)
ルノー(5)



★オマケ(その2): 大和ハウス工業 広報誌「プレハブ」1964年 秋号より
大和ハウスが季刊で発行していた広報誌をたまたまパラパラと見ていて見つけた、文化住宅の応接間でマルサンのブルドックトイの救急車で遊ぶ男の子と家族の写真。当時、お父さんが30歳、やけに綺麗なお母さんが25歳だったとしても丸50年が経っているので現在は80歳と75歳位にはなっているだろう。子供は私と同年代位のはず。
大和ハウス



★オマケ(その3): 書籍 「マルサン物語」
神永英司 著。2009年3月、朝日新聞出版発行。税抜定価1800円。マルサンに興味がある人必読の一冊。モノクロ印刷なのが惜しいですがマルサン1964年版カタログ等の掲載頁もあります。今回の記事をアップするに当たってもこの本を参考にいたしました。
マルサン物語



★オマケ(その4): ビートルズ 「ヘイ・ブルドッグ」(Hey Bulldog)  
動画がないのは寂しいということで、ブルドッグ繋がりでこの1曲を最後に。1968年2月11日録音。ジョンのボーカルが魅力的な隠れた名曲。


【lyrics】
Sheep dog standing in the rain  Bullfrog doing it again  Some kind of happiness is measured out in miles  What makes you think you're something special when you smile

Childlike no one understands  Jackknife in your sweaty hands  Some kind of innocence is measured out in years  You don't know what it's like to listen to your fears

You can talk to me, you can talk to me  You can talk to me  If you're lonely you can talk to me

Big man walking in the park  Wigwam frightened of the dark  Some kind of solitude is measured out in you  You think you know me but you haven't got a clue

You can talk to me, you can talk to me  You can talk to me  If you're lonely you can talk to me

Hey, bulldog, hey, bulldog  Hey, bulldog, hey, bulldog