★1960年代イチコー 自動車ブリキ玩具の一宏工業 ~ 玩具・模型カタログ棚から 007 | ポルシェ356Aカレラ

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台風11号の影響で西日本は大雨となっていますが、東京では昨日までの暑さが嘘のように現在23度台まで気温が下がり風もあって窓を開けると久々にエアコンなしでも過ごせるような陽気になっています。まだ雨は降っていません。でも明日の日曜日は東京も1日雨の予報です。明日8月10日はバンドの練習日なのでスタジオへの行き帰りにあまり大雨にならないよう願っています。

最近は自動車カタログと玩具・模型カタログとを交互に記事にしていますが今回は玩具・模型カタログです。ブリキの自動車の世界では有名なイチコーの1960年代のカタログをピックアップします。カタログ自体が稀少なので恐らくこれまでどこにも公開されていないものだと思いますが、興味がない方には全くつまらない記事だと思いますのでスルーしちゃってください。
 




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★これは玩具小売店を主な購読者層として発行されていた月刊誌「東京玩具商報」(現トイジャーナル)の1963年(昭和38年)5月号。表紙はブリキ玩具黄金時代のイチコー製の赤い1963年横目のセドリック(H31)と緑の1962年マツダ・キャロル。どちらも当時最新の国産乗用車をモデル化した何とも魅力的な玩具。「明るい家庭にイチコーのおもちゃ」のコピーと共に下部にはイチコーのロゴマークと一宏工業株式会社の印字もされている。

・東京玩具商報1963年5月号 表紙 (B5判)
東京玩具商報

東京玩具商報(現トイジャーナル)は日露戦争勃発前年の1903年(明治36年)4月22日に創刊された1世紀を超える長い歴史を持つ玩具業界誌。玩具小売店を主な購読層とした雑誌で書店売りはされていないため古いバックナンバーの入手は非常に困難な雑誌だが、1951年(昭和26年)以降の号に限っては国立国会図書館に納本されており誰でも閲覧やコピーをとることが可能だ。私は以前、半年くらい通いつめて、1970年代前半までの自動車・鉄道等の玩具・模型に関する記事・広告をチェックして資料として必要な頁はコピーしてきた。そのコピーしたファイルだけでも10冊以上手元にある。原本も稀にヤフオクに出ることがあるけれど、主に1960年代から1970年代前半あたりのキャラクター商品が掲載されている号はかなりの高額で取引されている。




★イチコーの企業名称は、設立当初は一宏製作所、1960年代には一宏工業(株)、1970年代には(株)一宏となったようだ。プラスチック等の新素材に移行せず最後までブリキ玩具の製造を続け、2000年(平成12年)春に2回目の不渡りを出して惜しくも倒産した。正に20世紀の終わりと共にイチコーは終焉を迎えた。
イチコーの創業年は情報が得られず不明なのだが、1950年代に入ってから増田屋齋藤貿易(マスダヤ)や旭玩具製作所(アサヒ玩具)等のブランドで発売されたブリキ自動車の製造下請けメーカーとして業界に参入し、恐らく1960年代に入る頃に製造のみでなく販売も一貫して行う玩具メーカーになったものと思われる。1950年代のブリキ自動車の箱にはイチコーと増田屋あるいはイチコーと旭玩具といった2社のロゴが印刷されたものが見られるが、イチコー単独ロゴの製品が登場するのは1960年代を迎えてからだったようだ。昭和30年代、大卒初任給1万円程度だった時代に30~40万円はかかったと言われる金型代を製造メーカーは負担せず商品企画および販売ブランド側が負担するのが通例であったようなので、イチコーは下請け製造メーカーとして自動車玩具製造の技術を十分に身に付けてから自社ブランドでの製品の企画開発・製造・販売を始めたものと思われる。製品の殆どが自動車玩具であったのはイチコー社内の重要なポストに相当な自動車好きの方がいたためではないだろうか。



●1965年 イチコーの企業情報(1965年10月「第4回日本玩具国際見本市」総合パンフレット、イチコーブースの紹介頁より)
以下のような記載がされている。
ブースNO.506。一宏工業株式会社(英文表記:ICHIKO TRADING CO.,LTD.)
住所:東京都江戸川区平井2-853・取締役社長:松岡一夫・営業品目:金属製・取引販路:国内(問屋)海外(米国・カナダ・中南米・東南アジア・豪州・欧州・中近東・アフリカ)・取引銀行:第一銀行(後の第一勧業銀行、現在のみずほ銀行)
企業情報



★玩具メーカーの年次製品カタログは通常一般には配布されず、玩具見本市で業者向けに配布されるか直接メーカーから玩具問屋や玩具店に配布されるかといった形が採られてきたと思われるので、なかなか入手することは難しい。
私の手元にある1960年代のイチコーのカタログは2冊のみ。何れのカタログも発行年を示す印字が全くないのだが、製品のラインナップから推察して一つは1963年(昭和38年)、もう一つは1965年(昭和40年)あたりと思われる。何れのカタログの表紙にも「すばらしいイチコーの自動車」の印字がある。夢の超特急(いわゆる0系新幹線の試作車両)を除いて全ての掲載製品が自動車のブリキ玩具で1960年代のイチコーが自動車玩具中心のメーカーであったことが判る。古いクルマの玩具好きには涙もののカタログでもある。今回も全てを掲載することは困難なので個人的な視点から抜粋して掲載いたします。


●1963年? イチコー カタログ (縦27×横19.5cm・8つ折16面)
各製品に品番・品名・大きさ・値段・摘要が掲載されており資料価値は非常に高い。製品写真に統一せず実車写真が織り交ざっているのが惜しい。表紙に写っているのは製品番号4862・全長45cmの1960年ビュイック・ハイウェイパトロール(商品名:マンモスポリスレーダーカー)と製品番号5062・全長19cmのメルセデス・ベンツ220Sタクシー。
63表紙

【中面から】
キャデラック、プリムス、シボレーコルベア、フェラーリ、etc・・・・・
63(1)キャディ他

ルノーフロリード、国産車各種
63(2)フロリード国産車他

2161縦目セドリック(都内250円)と6362日野コンテッサ900(都内230円)
63(3)縦目とコンテッサ

0563いすゞベレル(都内240円)と5762プリンス スカイラインスポーツ(都内300円)
63(4)ベレルとスカラインスポーツ

4262番1962年オールズモビル(都内290円)と2361番1961年プリムス(都内350円)
63(5)オールズ&プリムス

3759番1959年オールズモビル(都内380円)と1661番1960年ビュイック・インビクタ4ドアHT(都内800円)
63(6)オールズ&ビュイック

3562番1959年オールズモビル・ポリスと4862番1960年ビュイック・ポリス(都内1000円)
63(7)ポリス2台

5062番メルセデスベンツ220Sタクシー(都内130円)と1961-D番シボレーコルベア警視庁パトカー(都内200円)
63(8)ベンツタクシー&コルベアパト

6162番プリムス・ファイアーチーフ(都内380円)と6262番1961年プリムスワゴン救急車(都内390円)
63(9)プリムス2台

4762-T 日野コンテッサ900構内タクシー。ルーフの行燈が回転式の行先表示になっており、東京駅・新宿駅・渋谷駅・池袋駅等と変わるギミック付。試作品は現存しているが一般販売はされなかった幻のモデル。同様の幻のモデルとしては縦目セドリックタクシー等もある。
63(10)コンテッサタクシー

0163夢の超特急(全長45cm・都内300円)。試作型新幹線の写真が使われている。
63(11)超特急試作


【裏面】
製造会社「一宏工業」と販売会社「一宏商事」の2社の名義。全工場面積3114坪・工場建物1000坪・社員10名・工員400名と記載。本社併設の第1工場の他に本社と同じ江戸川区平井2丁目の別住所に第2工場、第3工場、そして千葉県旭市鎌数の旭工場の住所が記載されている。千葉の旭工場からは21世紀に入ってからも横目のセドリック等の半世紀前のデットストックが発掘されている。
63(12)裏表紙




●1965年? イチコー カタログ (A4判・20頁)
このカタログも各製品に品番・品名・大きさ・値段・摘要が掲載されており資料価値は高いが、製品写真に統一せず実車写真が織り交ざっているのが惜しい。表紙は21cmサイズ・シボレー2ドアHTハイウェイパトロールと試作型新幹線。
65表紙

【中頁から】
2265いすゞリアエンジン観光バス(全長70cm・都内1000円、地方最低小売1100円)他
65(1)いすゞバス他

2365ニッサンシルビア(都内260円)他
65(2)シルビア他

0665独フォードタウナス(都内180円)、3464ブルーバード410(都内300円)、3664プリンス スカイライン1500(都内350円)他
65(3)410ブル&スカイライン他

1265トヨペットコロナRT40(都内300円)他
65(4)コロナ他

2161横目セドリックH31(都内300円)
65(5)横目セドリック

2563名作の誉れ高い1963年プリンスグロリアデラックス(都内390円) ※自動車カタログ棚シリーズ第57回記事オマケ参照 
65(6)名作グロリア

2465日野コンテッサ1300(都内260円)他
65(7)コンテッサ1300他

2565いすゞベレット1500デラックス(価格の記載が欠落しているが300円で市販されている)他
65(8)ベレット他

2564トヨペットクラウン警視庁パトカー(都内450円)
65(9)クラウンパトカー

2264番1962年キャデラック ハイウェイパトロール、3064番1964年ビュイック ハイウェイパトロール(都内550円)、2261番1960年ビュイックポリス。1964年ビュイックハイウェイパトは1970年代後半まで連綿と売られた製品。
65(10)ポリス2台

0865番VWカルマンギア・タイプⅢポリツァイ(リモコン)、0765番同(フリクション)、1965番フィアット2300S教習車(リモコン)、1965-A同アンビュランス(リモコン)等、輸出用製品各種。
65(11)フィアット2台他

特大超特急ひかり(80cm・都内1100円)、0163ひかり小(都内280円)、2664番キャデラック コンバーチブル他
65(12)ひかり2種類キャデイ

【裏面】
このカタログも製造会社「一宏工業」と販売会社「一宏商事」の2社の名義。全工場面積3728坪・工場建物1200坪と上掲の1963年?より敷地面積は増えているが、従業員数は350名と若干減っている。この時期がイチコーの最盛期だったのかもしれない。
65(13)裏表紙





★オマケ(その1): イチコー 1/18 スケール 1963年ニッサン・セドリック・カスタム
全長25cm。当時定価:都内300円・地方最低小売330円。自動車カタログ棚シリーズ第60回(2012年9月26日)のオマケでアップしていますが画像を替えて再録します。カラーバリエーションはモノカラーとツートンカラー併せて7色程度確認しています。
63セド(1)

63セド(2)

63セド(3)



★オマケ(その2): イチコー 1/18スケール 1964年ニッサン・セドリック・カスタム
全長25cm。当時定価:都内300円・地方最低小売330円。これも自動車カタログ棚シリーズ第60回のオマケでアップしていますが画像を替えて再録します。これもカラーバリエーションは7色程度。
64セド(1)

64セド(2)

64セド(3)

オマケ1とのフロントグリルの比較(左1964年・右1963年)
64セド(4)63との比較



★オマケ(その3): イチコー 1/18スケール 1964年ニッサン・セドリック・カスタム警視庁パトカー
全長25cm。当時定価:都内320円・地方最低小売350円。オマケ2のバリエーション。大盛屋チェリカフェニックス43番のセドリック・パトカーと同年式のモデル。ミニカーと異なり当時大人のコレクターが殆ど手を出していないイチコー製は現存する個体は少ないようです。これは(株)一宏が倒産前に自社保存品を放出した中の1台です。
セドパト(1)

セドパト(2)

セドパト(3)



★オマケ(その4): イチコー 1/18スケール 1964年ニッサン・セドリック・カスタム・アンビュランス
全長25cm。当時定価:都内320円・地方最低小売350円。これもオマケ2のバリエーションでオマケ1の1963年式はノーマルのみの発売。他に消防指令車もリリースされています。
セド救急(1)

セド救急(2)

セド救急(3)



★オマケ(その5): イチコー 1/15スケール 1963年+1965年トヨペット・クラウン・警視庁パトカー
全長33cm。当時定価:都内450円・地方最低小売490円。2代目40系クラウンは上掲の横目のセドリックと同様に実車に即した良心的な年式違いが出されている他、警視庁パトカー、アンビュランス、消防指令車が発売されています(警視庁パトカー以外のバリエーションは1965年式2ndモデルのみ)。当時2代目クラウンは人気が高く玩具・模型等の立体造形物が各社から発売された中でイチコー製は現存するものが少ないようです。左が1stの1963年式、右が丸テールから横長テールに変った2ndの1965年式。3枚目の写真は2nd。
クラパト(1)

クラパト(2)

クラパト(3)