★1950年トヨペットBDR型 無線警ら車 黎明期の国産パトカー~ 自動車カタログ棚から 235 | ポルシェ356Aカレラ

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夏、真っ盛りですね。毎年夏が来ると夏ってこんなに暑かったかなと思います。
2014年夏、巷では妖怪ウォッチなるものが大ブレイクして、かつての仮面ライダーカード、ビックリマンシール等を思わせる社会現象になっているようです。今回のオマケでご紹介するメーカー「バンダイ」の妖怪ウォッチ関連商品は生産が追いつかない状況だとかで、しかし、たまごっちがブレイクした時に作り過ぎて過剰在庫を抱えてしまった苦い経験から現在生産量はセーブしているそうです。
今回の自動車カタログ棚シリーズは、昔から子供に人気が高くミニカー等の玩具も夥しい種類が造られ続けてきた働くクルマの代表格とも言えるパトカーです。



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★日本国内の消防自動車の導入は1911年(明治44年)、大阪におけるベンツ製のポンプ消防車が始まりとされるが (自動車カタログ棚シリーズ第123回記事参照)、同じ緊急自動車でも一番馴染み深いパトカーの導入は意外なことに戦後になってからのことであった。

★パトカーは消防車の導入より40年近くも遅く、警察庁のホームページによれば、1950年(昭和25年)6月に警視庁が警察無線を搭載してパトロールを行なう無線警ら車3台を導入したのが日本のパトカーの始まりであったという。

★当初の警視庁の車両は白塗装であったが一般車両との区別がつきにくいという理由から、1955年(昭和30年)前後には現在一般的な白黒塗装(上部:白、下部:黒)のパトカーが全国都道府県の各警察にも普及した。ボディ下部を黒としたのは泥はね等での汚れを目立ちにくくしたためとも言われる。
当初の車両は日産180トラックシャシーベース、今回ご紹介するカタログのトヨペットSDセダンベースのトヨタBDRの他、米軍払下げのシボレー、フォードと言ったアメ車も多く使用されたようだ。


(註)パトカーのカタログは一般には入手が難しく、特に2000年代以降は入手の難易度が従来以上にアップしたようです。本ブログでは過去に1度だけ古いスカイラインGTパトカーのカタログ(自動車カタログ棚シリーズ第4回記事参照)をピックアップしていますので御参照ください。




【初代クラウンベースのパトカー絵本
本来、オマケに載せるべきところですが、今回まずは半世紀前のパトカーの絵本から。

●ひかりのくに声のえほん 「パトカー」 (B5判・14頁) 
1960年代前半。当時定価200円。ソノシート付。ひかりのくに昭和出版の地元・大阪府警の大8ナンバーの初代後期型クラウンベース「トヨタパトロール」が全篇に亘り活躍する絵本。絵:安井敬造 画伯。
絵本

中頁から: 荷物満載で転倒したダイハツ3輪トラックの元にトヨタパトロールとトヨタ大型救出車が駆けつけた場面。
絵本ソノシート中ダイハツ転倒



●ひかりのくに絵本 「パトロール」 (B5判・12頁) 
1960年代前半。当時定価60円。上掲の絵本と同じ安井敬造 画伯による絵で全篇に亘り大8ナンバーの「トヨタパトロール」が登場するが、使われている絵は全て異なる。
絵本パトロール表紙良い

中頁から: 初代310ブルーバードとダイハツ3輪トレーラーが衝突した事故現場にトヨタパトロールと消防署の2代目コロナライン救急車が駆けつけている場面。
絵本パトロール中310ブル衝突



●ひかりのくにプレゼント絵本 「パトロール」 (B5判・16頁) 
1960年代前半。当時定価100円。これも上掲2冊の絵本と同じ安井敬造 画伯による絵だが大8ナンバーの「トヨタパトロール」が登場するのは一部で白バイや初代ニッサンパトロール、警察艇、警察ヘリ等も描かれている。
絵本プレゼント表紙

中頁から: 警官に止められたミゼットMP4、日野ルノー、2代目コロナタクシー、初代クラウン前期型等の前をトヨタパトロールが駆け抜ける場面。トヨタパトロールが表紙の大阪府警でなく警視庁なのは御愛嬌。
絵本プレゼント中信号待ち




●1950年8月 トヨペット無線車 BDR型 専用カタログ (縦30×横22.5cm・8頁)
表紙

トヨタカタログNo.65。トヨペットSDシャシーにB型82psエンジンを搭載したトヨタ最初期のパトカー等無線搭載車専用カタログ。カタログに車両型式の記載はないが、BDRと思われる。トヨタ20年史によれば、BDRの最初の1台は1950年(昭和25年)8月に警視庁に納入され、1950年12月から1952年4月にかけて計65台が生産された。トヨタのパトカーはこのBDRの後、トヨペットSFK/SFNベースのBFR、トヨペットスーパーRHK/RHNベースのBHRを経て1955年(昭和30年)には初代クラウンRSベースのBH26(F型110psエンジン搭載車はFH26)へと進化した。国産初期のパトカーは白黒ツートンではなく、このカタログ写真のように白一色だった。このカタログの大半は無線装置に関る解説となっている。
現在でもクラウン等のパトカー専用カタログは発行されている模様だが、中古カタログ市場に稀に出てくるのは1980年代から1990年代のものが多く、1970年代以前のトヨタのパトカー専用カタログは目にすることがない。しかし、1955年の初代観音クラウンベースのBH26/FH26に始まり連綿と各都道府県警察に納入されてきた歴代クウランベースのパトカーは極秘裏に全て専用カタログが発行・配布されているのかもしれない。警察の機密資料として厳重に保管され、規定年数経過後は破棄処分されているために一般の市場には出てこないのではないだろうか。もしトヨタ博物館が歴代クラウンベースのパトカーカタログを保管しているのであれば、一定の年数を経過したカタログは時効として公開してほしいところだ。

【主要スペック】 1950年 トヨペット無線車(トヨタBDR型)
全長4515mm・全幅1570mm・全高1715mm・ホイールベース2413mm・車両重量1581kg・FR・B型水冷6気筒OHV3386cc・最高出力82ps/3000rpm・最大トルク21.6kgm/1600rpm・変速機3速MT・電装系6V・乗車定員5名・登坂能力45%・最高速度96km/h

●カタログ記載文より
無線自動車は文化国家の警察、消防、電気通信、新聞、放送関係のパトロール、重要連絡、ニュース情報の集蒐、報道等には無くてはならない重要な地位を占めて参りました。此の自動車は緊急な用務の為スピードと、如何なる地形をも疾駆する機動力とを備え、無線の精密機械を安全に装備し、取扱いが容易でなければなりませんが、これらの条件を完全に満足する如く設計、製作したのがトヨペット無線車であります。即ちエンジンは協力経済で取扱容易な82馬力、シャシーは堅牢で乗心地の良い乗用車シャシー、ボデーはスマートな5人乗りで、エンジンによりVベルトで駆動されている300ワットのダイナモから常に定電圧の電源を供給し、エンジン、ボデーには夫々完全な雑音防止対策を施してあり、無線自動車として完璧なものであります。

中頁から: B型82psエンジンとシャシー
中(1)エンジン・シャシー

シャシー・アップ
中(2)シャシーアップ

無線機装備
中(3)無線機装備

無線機図面
中(4)無線図面

トランク収納の無線機
中(5)トランク収納の無線機

点火装置の雑音防止について
中(6)点火装置の雑音防止

充電装置ほか
中(7)充電装置ほか

雑音防止のボンデング要図
中(8)雑音防止のボンテング要図

電気電圧調整器とバッテリー
中(9)電気電圧調整器バッテリー

裏面: スペック
中(10)裏面スペック

裏面: 図面
中(11)裏面図面






★オマケ(その1): 1963年短編フィルム「これは迷惑」 
50年前の愚連隊の他、3:10あたりから初代観音クラウンベースのパトカーが登場する映像。昭和30年代の映像5編が引き続き見られます。熱海の温泉街等が登場するので、静岡県警が協力して制作された映像のようだ。1962年秋に2代目クラウンがデビューするまで造られたこの観音パトカーは、1966年放送のウルトラQや初代ウルトラマン、ビートルズ来日時の映像などにも登場するので、恐らく1968年位までは全国の警察に現役車両が残っていたのではないでしょうか。




★オマケ(その2)1962年12月19日 首都高速1号線開通ニュース映像
警視庁の観音パトカーの鮮明な映像が見られる動画。スピード違反の初代スバルサンバー等も登場。




★オマケ(その3): 萬代屋(現バンダイ) 1/20スケール 1956年トヨタパトロール(BH26/FH26型)
全長21cm。萬代屋品番543。当時定価:不明(調査中)。フリクション駆動。実在する国産パトカーの恐らく最初のモデル玩具。ボンネットサイドのビュイックのような3連楕円のスリットやノーマルとは異なるフロントグリルも忠実にモデル化された萬代屋の傑作。旧字体の警視「庁」の文字にそそられます。本体は実車同様のノーマルのクラウンとは異なるグリルが付いていますが、箱絵のフロントグリルはノーマルのものが描かれています。姉妹モデルとして赤十字マークの付いた白一色の救急車仕様も同時期に販売されています。
バンダイ56(1)

バンダイ56(2)

バンダイ56(3)

トヨタ20年史に掲載されているBH26の公式写真。萬代屋製のフロントグリルが忠実に造られていることが判る。
バンダイ56(4)実車写真



★オマケ(その4): 萬代屋(現バンダイ) 1/19スケール 1959年トヨタパトロール
全長23cm。当時定価:都内200円・地方最低小売価格220円。フリクション駆動。1959年式クラウンデラックス(RS21型)のモデルをパトカーに仕立て上げた製品でスタンダードベースの実車とはサイドモールが異なる。萬代屋のあかばこ「世界の自動車を集めましょう」シリーズの展開で1960年に上箱にモデルとなった自動車の生産国の国旗が付いた。この所謂国旗箱は2ndでこのモデルの初版の箱は絵柄が全く異なる。
バンダイ59(1)

バンダイ59(2)

バンダイ59(3)



★オマケ(その5): 萬代屋(現バンダイ) 1/19スケール 1961年トヨタパトロール
全長23cm。萬代屋品番845。当時定価:都内200円・地方最低小売価格220円。フリクション駆動。1961年式クラウン1900デラックス(RS31型)のモデルをパトカーに仕立て上げた製品でこれもデラックスのままのサイドモールは実車とは異なる。オマケ4ではブリキだったヘッドライトがプラ素材に変わった。これは2ndモデルで、この1961年型パトカーも1stモデルはオマケ4と同様にルーフ中央にアンテナが付き赤色灯は付かない。
バンダイ61(1)

バンダイ61(2)

バンダイ61(3)



★オマケ(その6): バンダイ1/19スケール 1961年トヨペット クラウン パトロールカー
全長23cm。当時定価:都内220円、地方最低小売価格240円。フリクションと連動してルーフ前部2個のサイレンが左右に首を振るアクション付。上掲のオマケ4の1961年式クラウンベースのパトカーはバンダイのヒット商品ハンドルリモコン・シリーズの1台として実車が2代目40系にフルモデルチェンジした後も連綿と売られるヒット商品となったが、これは萬代屋の社名がバンダイとなった後の1964年(昭和39年)に極く短期間売られたと言われる幻の最終フリクション仕様。白黒の塗り分けが全く異なる他、バンパー等のメッキ類が金メッキとなりリモコン仕様と同様にドアノブは省略、テールライトがプラ・パーツからブリキのプリントになるなど変更箇所が多い。金メッキ・パーツが奢られたのは東京オリンピック開催を記念しての特別仕様だったとも言われるが真相は不明。ハンドルリモコン仕様とこのモデルでは商品名がトヨタパトロールでなくトヨペット クラウン パトロールカーに変更されている。
バンダイ64(1)

バンダイ64(2)

バンダイ64(3)

バンダイ製のオマケ3~6を並べたところ
バンダイ64(4)オマケ2~5

現在市場によく出てくるバンダイ製1961年クラウン パトカー・リモコン仕様の箱。ロングセラー商品だったため、このリモコンの箱は図柄違いが数種類ある。
バンダイ64(5)リモコン箱



★オマケ(その7): 旭玩具製作所 1/18スケール 1961年トヨペット クラウン警視庁パトカー
旭玩具製作所1961年発売。品番3577。全長24cm。当時定価:全国240円。アサヒ製1961年クラウン1900デラックス(RS31型)をベースにパトカー仕様として売られた製品。バンダイ製の同時期の観音パトカーに比べてこのアサヒ製は何故か現存しているものが少ない。
アサヒ(1)

アサヒ(2)

アサヒ(3)



★オマケ(その8): モデルペット12SP 1/42スケール 1961年クラウン警視庁パトカー
旭玩具製作所1963年7月発売。全長約10cm。ダイキャスト製。当時定価250円。実車のクラウンが2代目に移行した後に発売されたミニカー。初代クラウンパトカーの当時物としては現在最も入手しやすいモデル。
モデルペット(1)
モデルペット(2)
モデルペット(3)



★オマケ(その9): 日本模型(ニチモ) 1/22スケール 1959年トヨタ警視庁パトカー プラモデル
当時定価350円。全長19cm。プラスチックとブリキの混合組立キット。バンパー、窓枠、サイドモール等のクロームメッキされたブリキパーツをツメを折ってボディに組み付けるというブリキ製品と同じ組立方法が採られている。このキットは1990年(平成2年)の初夏に大量のデットストックが発見されて都内および神奈川県内の模型店(恵比寿ミスタークラフト、吉祥寺ウェーブBe-J、海老名ホビーボックス等)に1個3000円で山積みされていたもの。発見された数は10ダース以上と聞いた。当時の絶版価格の10分の1程度のプライスで店頭に山積みされているのを見た時はたまげたものだった。1人で10個位買った人も多かったようで、その年の夏の終わりには店頭から綺麗に消えていた。箱絵は小松崎茂氏(1915年2月14日-2001年12月7日)による夜の銀座を描いた魅力的なもの。大量のデットが発見されたのは、この再版箱の方のみで初版の箱はパトカーが右向きで絵柄も異なる。
ニチモ(1)

1990年に大量発掘されたモノは箱に焼けや傷みが全く見られず、未組立であっても個人保管であれば通常は望めないレベルのタイムマシーン・コンディションだった。
ニチモ(2)