★1951年 トヨタボンネットトラック 戦後型トヨタトラック ~ 自動車カタログ棚から 202 | ポルシェ356Aカレラ

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★トヨタの最初のクルマと言うと初めての乗用車であるトヨダAA型(本シリーズ第94回参照)を思い浮かべる。しかし、実はトヨタが初めに発売したのは乗用車ではなくトラックであった。

乗用車に比べてボディの製作が容易だったことが先にトラックが世に出た理由だと言われる。トヨタ最初の市販車となったトヨダG1型トラックは1934年型フォードトラックを参考に設計され、AA型乗用車より1年近く早い1935年(昭和10年)11月18日に東京の芝浦ガレージで発表会が行われた。
G1型トラックは379台を生産した後、翌1936年(昭和11年)9月14日のAA型発表の際にGA型トラックに切り替えられた。その後、1939年(昭和14年)1月にGB型トラック、1942年(昭和17年)3月に戦時型のKB型トラック、終戦前年の1944年(昭和19年)6月にKC型トラックへと変遷した。戦後は終戦前のKC型が暫くそのまま生産された後、1947年(昭和22年)3月にKC型を大きく改良したBM型トラックとなり、このBM型は朝鮮戦争特需もあり1951年(昭和26年)7月までの4年強の期間に実に26347台が生産された。

★そして、終戦後の混乱期を漸く抜け出た同1951年(昭和26年)7月21日、それまで基本的に戦前の設計のままであったトヨタ製トラックが全面的に刷新されたBX型トラックにフルモデルチェンジした(BXというといすゞのバスの型式名称として有名だが、トヨタのBはB型3386ccエンジン搭載を示し、いすゞのBはBus=バスを示す)。
それまで独立していたフェンダーは近代的なフラッシュサイドとなり、全体に丸味を帯びてスマートなボディとなった。ヘッドライトを独立させずにフロントグリル内にビルトインさせたデザインは1948年にデビューしたフォードの初代Fシリーズ・トラックともよく似ていた。BX型の開発に当ってトヨタが目指したのは次の点であった。

(1) ボディ及びフレームの一新
(2) エンジン及びサスペンションの改良
(3) オールスチール製運転台の製作
(4) 輸出向け左ハンドル車の製造し易い設計

当時は裸シャシーのままで陸送されボディメーカーでキャブを架装するのが一般的であったのをトヨタ車体で全鋼製運転台を架装して販売する形を採ったのが上記(3)であったが、このスタイルは後に他メーカーへも波及した。輸出を視野に入れダッシュパネルを左右対称のデザインとしたのが上記(4)であった。
このトヨタ初の戦後型大型トラックはエンジンや積載量の変更に伴い型式名を変えフロントグリルの意匠も変えながら1964年(昭和39年)8月までの実に13年間に亘り製造・販売され、東京オリンピック前の日本の高度経済成長前半期を支えたトラックの名車の1台となった。なお、同時期のトヨタ製バスについてもトラックに概ね準じた変遷をしている(別項でご紹介予定)。現在、トヨタは大型トラック(及び大型バス)の生産はグループ企業である日野に譲り、トヨタ製の大型車はラインナップから消滅している。

【戦後型トヨタボンネットトラックの主な変遷】
・1951年8月 BX型発売(B型3386ccエンジン搭載)
・1951年9月 FX型発売(F型3870cc95psエンジン搭載)
・1952年2月 BXG型・FXG型(4.5トン積車)発売
・1954年2月 BA型・FA型(4.5トン積105ps)発売
・1954年3月 BC型(ショートホイールベース車)発売
・1954年6月 FC型(ショートホイールベース車)発売
・1954年9月 FA5型(5トン積車)発売
・1956年2月 FA60型(国産大型車初のシンクロ変速機)発売
・1957年3月 DA60型(トヨタ初のディーゼルエンジン搭載車)発売
・1958年4月 FA70型(110ps)発売
・1958年10月 DA70型発売
・1959年3月 FA71/DA71型(2速リヤアクスル付)発売
・1959年10月 FA80型・6トン積FA95型(125psガソリン車)発売
・1959年10月 DA80型・6トン積DA90型/DA95型(130psディーゼル車)発売
・1961年10月 2分割だったフロントウインドを1枚ガラスに改良
・1964年9月 100系にフルモデルチェンジ


【主要スペック】 1951年トヨタトラックBX型 標準ボディ
全長6621㎜・全幅2190㎜・全高2145㎜・ホイールベース4000㎜・車両重量2835kg・FR・B型直列6気筒OHV3386cc・最高出力82ps/3000rpm・最大トルク21.6kgm/1600rpm・乗車定員3名・最大積載量4000kg・最小回転半径8m・電装系6V・最高速72km/h・販売価格:不明(調査中)

※最初の戦後型トヨタボンネットトラックは13年間のモデルライフ中に発行されたカタログの種類が多いため、資料性の観点からカタログの顔である表紙画像を中心に駆け足でご紹介いたします(勿論全ては網羅出来ていません)。


●1951年8月 トヨタトラックBX型 本カタログ (縦18.5×横27cm・20頁)
トヨタカタログNo.101
51表紙
中頁から
51中(1)全体
51中(2)各部
B型82psエンジン
51中(3)エンジン
一新されたフレーム
51中(4)フレーム
二面図
51中(5)二面図
裏面スペック
51中(6)スペック


●1952年 トヨタトラック総合カタログ「トヨタトラックは如何に改良されたか」 (B5判・20頁)
トヨタカタログNo.199。型式BXG及びFXGとニッサン480型トラックのスペック比較表など興味深い内容の販促用冊子。
52冊子


●1952年2月 トヨタトラックBXG型 本カタログ (縦26×横24.5cm・6つ折12面)
トヨタカタログNo.194。1950年代のトヨタのカタログは表紙を始め魅力的なイラストで構成されたものが多い。
52BX工場青


●1952年2月 トヨタトラックFXG型 本カタログ (縦26×横24.5cm・6つ折12面)
トヨタカタログNo.196
52FX黄森


●1954年2月 トヨタトラックFA型 簡易カタログ (B5判・2つ折4面)
トヨタカタログNo.240。マイナーチェンジ。最初のフェイスリフト。
54簡易緑


●1954年2月 トヨタトラックFA型 本カタログ (縦26×横25cm・6つ折12面)
トヨタカタログNo.230。ガソリンスタンドのFA型のナンバーは西暦を示す1954。バックにはトヨペットSG型トラック。
54FA本ガソリンスタンド


●1954年2月 トヨタトラックBA型 本カタログ (縦26.5×横18cm・8つ折16面)
トヨタカタログNo.248
54BA縦林青


●1954年9月 トヨタトラックFA5型 簡易カタログ (縦21.5×横21.5cm・3つ折6面)
トヨタカタログNo.284
549簡易現場・赤


●1954年9月 トヨタトラックFA5型 本カタログ (縦20.5×横26.5cm・9つ折18面)
トヨタカタログNo.285
549本パワーシャベル赤


●1956年2月 トヨタトラックFA63AA型 本カタログ (縦17.5×横36.5cm・12頁)
トヨタカタログNo.380。マイナーチェンジ。2度目のフェイスリフト。横長大判カタログ。同時期のクラウンデラックス(RSD)のカタログも横長大判だった。
56横長
中頁から: 2回目のフェイスリフト
56中3つ目の顔


●1957年3月 トヨタディーゼルトラックDA60AA型 簡易カタログ (A4判・2つ折4面)
トヨタカタログNo.390
57簡易


●1957年3月 トヨタディーゼルトラックDA60AA型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.389
57本青い顔


●1958年10月 トヨタディーゼルトラックDA70型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.407
58黄コンビナート


●1959年1月? トヨタディーゼルトラックDA70型 簡易カタログ (A4判・2つ折4面)
トヨタカタログNo.522。1951年のデビュー以来、外側にRの付いていたフロント左右のスモールライトの形状が四角に変更された。
59簡易


●1959年1月? トヨタディーゼルトラックDA70型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.511
591本青山の中


●1959年3月 トヨタトラックFA70/FA71型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.548。2速リヤアクスル付のFA71型追加。
593灰縦


●1959年3月 トヨタディーゼルトラックDA70/DA71型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.575。ガソリン車同様に2速リヤアクスル付のDA71型追加。
593緑・材木


●1959年10月 トヨタトラックFA80/FA95型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.608。マイナーチェンジ。3度目のフェイスリフト。フォグランプがグリルに埋め込まれた最後の顔となった。6トン積み追加。
5910ブルドーザー


●1959年10月 トヨタディーゼルトラックDA80/DA90/DA95型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.610。ガソリン車同様のフェイスリフトと6トン積み追加。
5910ツートンディーゼル


●1960年? トヨタトラックFA80/FA90/FA95型 本カタログ (A4判・12頁)
トヨタカタログNo.646。130psにパワーアップ。
60年青空


●1961年10月 トヨタトラックFA80/FA90/FA95型 本カタログ (A4判・16頁)
トヨタカタログNo.695。フロントウインドが1枚の曲面ガラスとなった。
61年帽子


●1962年? トヨタディーゼルトラックDA80/DA90/DA95型 本カタログ (A4判・16頁)
トヨタカタログNo.C-28。長く続いた発行順と思われる3桁のカタログナンバーが使われなくなった。向こうに佇む運転手とライトグレイのDA型をクルマの下から覗いた妙に凝ったアングルの表紙。
62年表紙(下から)
中頁から: 60年代に入るとイラストは少なくなりカラー写真が多用されるようになった。
62年1中全体
1951年のデビューから基本的に変わらなかった、左ハンドル車の製作を考慮した左右対称デザインのダッシュボード
62年2中室内変わらず




★オマケ(その1): 青島文化教材社 1/42スケール程度 1960年トヨタディーゼル ダンプカー プラモデル
当時定価:不明。日本のプラモデル黎明期のキット。当時プラモデルはマルサン商店の登録商標だったため、箱には「プラスチックカラーモデル」と謳われている。1959年10月にマイナーチェンジしたフロントウインド2分割の最終モデルをモチーフにしている。
青島プラモデル


★オマケ(その2): トッキーモービル 102番 1/43 1956年トヨタトラックFA型「日本通運」
2001年発売製品。当時定価:税抜15500円。アンチモニー製。トッキーモービルは日本を代表するミニカーコレクターズクラブJMACのK氏が興したミニカーブランド。2回目のフェイスリフトを受けた1956年FA型を再現した出来の良いモデル。ドアに印字された日通隅田川支店の文字が泣かせる。グレイ1色の通常仕様も発売されている。
トッキー(1)
トッキー(2)
トッキー(3)


★オマケ(その3): トッパンの愛児えほん「はたらくじどうしゃ」 (B5判・12頁)
株式会社フレーベル館発行。当時定価60円。絵:中島章作 画伯。表紙の絵はオマケ1と同じ1960年型トヨタダンプカー。
絵本


★オマケ(その4): 1951年3月21日公開 松竹映画「カルメン故郷に帰る」より 
トヨタBX型/FX型トラックのデビューした年、1951年(昭和26年)公開の日本初の総天然色映画。撮影時26歳の高峰秀子(1924年3月27日-2010年12月28日)演じるリリィ・カルメンが美しい。浅間山麓を走った軽便鉄道「草軽電鉄」が登場する鉄道ファンには感涙モノの映画でもある。


主題歌【カルメン故郷に帰る】 歌詞
(黛敏郎作曲・木下忠司作詞)
・劇中の唄は歌詞のバリエーションが下記以外に何種類かある。
・歌: 高峰秀子 伴奏: 日本ビクター管弦楽団

1)私しゃモダンな下町娘
ちょいと散歩にニュールック
いきな殿御と手を組んで
ララ、歌う唄 甘いラブソング
恋のベニスのゴンドラの唄
濡れます瞳が唇が
ララ、むせび泣くよなセレナーデ

2)花のパリはシャンゼリゼ
帽子パラソル アラモード
ダミア ボアイエ シュバリエの
ララ、歌う唄 甘いラブソング
パリよいとこ マロニエの花
散ります 散ります白い花
ララ、恋の駆け引きはブローニュ

3)モンテカルロのひと夜さは
乙なシャンペンかたむけて
浮気まなこのルーレット
ララ、玉が飛ぶ 甘い夢が飛ぶ
お金なんかはなくても平気
行きましょ 砂漠の果てまでも
ララ、手に手をとってラブソング